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紫蘭さんへ感謝をこめて


諸   刃



かつて我が父は
一人の帝に仕えた


そう
貴女様の父君であられた
偉大なる天智帝に


かの御方の夢と
自らの夢


二つの夢が重なった時
君臣を超えた強い絆が
生まれたのであろうと


私は少しだけ
父をうらやましく思ったものだ


けれど今
そのような甘い期待は
私にはない


心の繋がりも
感傷じみた夢も必要ない


私が欲するのは
確かな力のみ


我が才を
あますことなく傾け


我らが一族の
揺るがぬ地盤を
この国に打ち建てる


そのための力なら
私はいくらでも
この手に掴みたい


だが
これだけは
申し上げておきましょう


私は
貴女様の血筋に仇なそうなどと
思っておりませぬ


それどころか


貴女様の望みを
誰よりもわかっているのは
おそらく私であろう


帝の血は
一番純粋な形のまま
受け継がれるのがよい


骨肉の無益な争いほど
虚しいものはございますまい


人心が乱れる前に
敢えて禍根を断つと言う
貴女様のお考え
誠に理にかなっております


私が貴女様の立場でも
そう致したでありましょう


情に流されず
厳しき現実を直視するこそ
肝要と心得ます


そして貴女様は
私のそのような考えを
誰よりも頼もしく
思されておいでなのでは?


だからこそ
こうして私を引きたてて下されたのだと
そう確信しておるのですが


さて
いかがでしょう


私たちはお互い
なかなか良き協力者と
なれるとは思いませぬか


生ぬるい信頼よりも
きっぱりとした利害の一致をこそ
貴女様と共に抱けると思うのは


私の思いあがりと
笑われますでしょうか


貴女様は
おそらくどなたよりも
お父上の血を濃く受け継がれたと


私は信じてやみませぬ


冷徹なほどのご英断を
清々しいほどのご覚悟を
お持ちの御方


貴女様のご栄光を
この国の輝かしい明日を
私は心より願っております


そして
それには私の力が
きっとお役に立つはずだと


どうか
貴女様もお信じ願いたい


尊き我が帝


私は貴女様に
身命を捧げることを
誓うものであります


敵に回すよりも
懐に取り込む得を
賢明なる貴女様なら
お選びになるはず


まなざしを
ひたと据えられて


決然とお告げになる
貴女様のお声が


今こそ
聞きとうございます


そう
頼れるは力のみ、と