この詩は「如月」ファンの
四季歩さんへ。

映画『英雄(HERO)』より


                              
月華哀憐

〜 如月 〜
                                     

わたしが剣を振るうのは
ただ貴方のためにだけ


貴方が
教えて下さった剣だから


貴方ゆえに
育んできた想いだから


貴方を傷つける者があれば
誰が相手だとて
わたしは向かって行く


何度払われても
斬りかかり
何度倒されても
起き上がって


いっそ
貴方のために
散ってしまえるなら


いいえ
わかっている


たとえ
この命を投げ出そうとも


貴方がわたしを
受け止めて下さることなど
ありはしない


貴方のこころから
あの方が消えることなど
決して


貴方の
大きな慈しみと
澄んだ哀しみを
湛えたまなざしは


いつも
あの方に注がれていたから


わたしはただ従順に
貴方に仕えるだけ


それでも
構わないと思っていた


たったひとり
乱世に放り出され
何もわからずにいた
わたしにとって


貴方だけが師であり
生きる支えだった


わたしは
貴方と言う光があって
初めて仄かに輝く月


貴方が求め続けた
剣の極意も


その胸に根ざした
曲げられない信念も


わたしには
とても知り得ないほど深い


けれど
貴方が信じた道を
阻む誰かがいるのなら


それが
貴方を苦しめるなら


わたしは
この二振りの剣に
すべてを賭けて


貴方のために戦おう
力の限り


それだけが
わたしの想いの捌け口


どれほど願っても
その度ごとに
思い知らされる


貴方とあの方の絆


ふたりは
いかなる時も一緒なのだと
こころも剣も


離れることは
ないのだと


虚しさに
苦しさに
痛いほどの哀しさに
泣きながら


わたしは
がむしゃらに剣を振るう


息がきれても
目がかすんでも
何度でも


手負いの小さな獣になり
向かって行く


消えるな
胸焦がす焔よ


打ち倒されるほどに
燃え盛れ


この剣は
わたしの決意


凍える空に浮かぶ
三日月の煌き


断ち切りたいのは
くじけてしまいそうになる
弱いこころ


断ち切れないのは


いいえ
いのちと引き換えにしても


報われるものが何もなくても
貫き通したいのは


ただひとつの愛


(BGM 映画『英雄』より)



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