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師走です。 早いものですね。一年、あっと言う間に思えます。 一年中で、最も慌しく、落ち着かない一方で、どこかわくわくする気分にもなるのは、やはりクリスマスがあるからでしょうか。 クリスマスと言うと、みなさん、どんなお話を思い出すでしょう。 童話では、「マッチ売りの少女」、そして「フランダースの犬」の最後もクリスマスだったでしょうか。 華やかなイベントとは反対に、どちらも哀しいお話です。 そう言えば、定番のクリスマスソングも、意外と寂しい歌が多かったりしますよね。 山下達郎さんの「クリスマス・イブ」とか、ワムの「ラスト・クリスマス」、B'zの「いつかのメリー・クリスマス」なども、寂しさを感じます。 周りがうきうきとする時だからこそ、孤独もことさらしみる。そんな切なさも、またクリスマスならではの感覚なのかもしれません。 クリスマスのお話・・・私がいまだに思い出すのは、ディケンズの「クリスマス・キャロル」です。 おそらく子供の頃に読んだのでしょうけれど、なぜかとても印象に残っています。 この後は、物語のあらすじについてです。ネタバレになりますので、すみません、知りたくない方は、読まないで下さいねm(__)m 主人公は、守銭奴で無慈悲な、初老の商人スクルージ。 家族もなく、誰も愛さず、周りからも嫌われ、でもそんなことを気にするどころか、ますます頑固で冷酷になるばかり。 クリスマスなど、まったく祝う気もなく、いつも通りの仕事を終えて、家に帰ったイブの夜のこと。 なんと、かつて一緒に仕事をしていて、すでに亡くなっているマーレイが、亡霊となって訪ねてきます。ジャラジャラと重い鎖に繋がれた姿で。 彼が言うには、スクルージのもとに、これから3人の幽霊が訪れる、と。 迷惑がるスクルージに、マーレイは、自分のようになりたくなければ、3人に会わなくてはならないと言って消えます。 最初に現れた幽霊は、スクルージを過去の世界に連れて行きます。 まだ若く、夢もあり、貧しいけれど純粋だった頃のスクルージ。ほがらかな幽霊に連れられ、スクルージは昔の思い出に浸ります。 次に現れた幽霊は、現在のスクルージの周りの人々の様子を見せます。 スクルージの事務所に雇われている青年ボブの、貧しいけれど愛情に溢れた家庭の様子、そしてボブの末っ子のティムが病気で、長くは生きられないことを、スクルージは知るのです。 現在を見せる幽霊と、あちこちを飛び回り、疲れきって眠ってしまったスクルージ。 目覚めた時に現れた幽霊は、真っ黒なマントにすっぽり覆われ、その隙間から一本の手だけが出ている、なんとも不気味な姿です。 過去、現在とくれば、この不気味な幽霊は、スクルージに未来を見せてくれるはず。 ところが、その未来にスクルージは、自分の姿を探すことができません。 どうやら、とても評判の悪い人物が死んだらしく、誰も哀しむ者はなく、それどころか、死者の部屋に集まった男女は、そこから少しでもお金になりそうなものを剥ぎ取り、浅ましい相談をしている。 おぞましい予感に震えるスクルージを、黒マントの幽霊は、荒れ果てた墓場へ連れて行きます。 その墓石に刻まれていた名前は・・・ 怖ろしい衝撃から、目覚めたスクルージ。 部屋はいつも通り、朝の光も、自分自身も変わらない。 今まで見ていたものは夢だったのか、いや、今ならまだ、あのような未来にならずにすむのか、とスクルージは気づくのです。 今日はクリスマス。すべてが明るく美しく見え、スクルージは感謝を覚え、まるで人が変わったように、周りの人に親切にして、驚かれます。 クリスマスの朝の清々しさ、スクルージの笑顔。 こうして、めでたくハッピーエンドとなるのです。 最後に救いがあり、ほっとした気持ちで読み終えられるものの、そこまでの過程は、なんともリアルです。 その本には挿絵もあり、鎖に繋がれたマーレイの幽霊や、すっぽりと黒いマント姿の幽霊、そして見捨てられたような墓石など、いささかぞっとする想像力をかきたてるのでした。 強欲で冷たく、意地の悪いスクルージは、子供心にもとことん嫌な奴と映りました。 それでも、3人の幽霊に導かれ、過去、現在、未来とスクルージと共に自分も旅したような気分になり、あまりにも惨めな未来に恐れをなし・・・ そして、最後のスクルージの変貌に、心の底からほっとしたものです。 あまりに強烈な印象だったためか、クリスマスと言うと、このお話をつい思い出してしまいます。 改心したスクルージは、やはり孤独な身の上には違いありませんが、それまで邪険にしていたボブ一家にクリスマスプレゼントをして喜ばれ、自分も幸せを感じます。 幸せとは、環境ではなく、自分の心から湧き出るもの。感謝の気持ちは、人の間を巡り、また自分自身にも帰ってくるもの。 クリスマスは、そんなことを思い出すための日なのかもしれない・・・ 毎年、なんとなく過ぎてしまうだけの、味気ないクリスマスとなる私ですが(笑)、でもささやかな感謝だけは忘れずにいたいと、あらためて思ったりします。 みなさんも、どうぞ穏やかな幸福に満ちたクリスマスを! 平成19年12月1日 |
涼 |
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