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毎年、次々と作り出される映画は数知れず。
その中で、当然原作があるものも多いことでしょう。
最近つくづく思うのは、原作から映画化と言うパターンを成功させるのは、相当難しいのだろうなあと言うこと。
小説や、最近では漫画が原作と言うものも増えていますが、いずれにしても原作となる作品のボリュームは、かなりなものと思えます。
映画は、時間が限られている。長くても2時間半。3時間となると、これは見る方もかなりつらい(^^;
私が今までに映画館で見た映画の中で、一番長いと感じたのは、「ラスト・エンペラー」だっように記憶していますが。
暗い中で、集中して見続けることのできる時間には、限度がある。
原作を映画にする場合、この時間枠がまず一番の、そして最大の壁かもしれませんね。

一冊の小説に書き表すことのできる量は、けっこうあると思います。
それが長編だったり、何巻かあるものだったら、これは大変(^^;
漫画にしても、映画やドラマになるほど人気のあるのは、これも大抵連載ものでしょう。
様々な登場人物、本筋となる展開の合間に、事細かなエピソードが含まれ、それらが複雑に絡み合って終結する。
その全てを、映画で表すことはほぼ不可能。となると、どこを残し、どこを削るのか、あるいは何を付け加えるのかと言うところが重要。
削った部分があって尚、話の帳尻が合わなくてはならないのですから。

これは、実際とても難しいことなのだろうと推測します。
なにしろ、原作を読んでいる人も、まったく知らない人も、どちらもその映画を見る可能性があり、どちらをも納得させなくてはならない。
おそらく、映画を作られる監督さんは、まずじっくり原作を読むのではないかと思うのですが。
そうすると、原作を通しての知識が定着する。まったくの白紙の状態で映画を見ると言う感覚は失われます。
私も、時々すでに原作を読んでいる映画を見に行って「この映画って、原作を知らない人でも、すべて筋がわかるんだろうか」と思うことがあります。
そう思ってしまった時点で、その映画は、少なからず説明不足の部分があると言うことなのかもしれません。

もちろん、映画化の成功の要因のひとつに、配役の妙もあると思います。
私が今までに見た原作のある映画で、「これは大成功でしょ」と思った映画は、まさに原作から抜け出たような登場人物たちに、まずは目を奪われたものでした。
古くは「風と共に去りぬ」、スカーレット・オハラ役のヴィヴィアン・リーは、他にはいないだろうと思うほどに、スカーレットそのものでした。
そしてレット・バトラー役のクラーク・ゲーブルも。
紳士的なアシュレー役も、純真なメラニー役も、それぞれぴったりで、この配役だけでも、映画の成功が窺えるほど。
ストーリー自体も、長い放映時間を飽きさせず、ぐいぐい引っ張って行くドラマチックな展開がすばらしい。
時を経ても、私の中では色あせることのない名作です。

その後に感心したのは「羊たちの沈黙」。トマス・ハリスの原作を読んだ時、まだ映画自体は見ていなかったものの、ヒロインのFBI訓練生クラリス役がジョディ・フォスターだと知っていたので、そのせいもあるかとは思うのですが。それにしても、これぞぴったりの配役!
意志が強く、知的で冷静、でも心の中に、幼い頃の悲しい出来事の傷を隠している、勇ましさと繊細さを併せ持ったクラリスに、ジョディ・フォスターほど似合う女優さんはいないだろうと思ったものでした。

さらに、連続猟奇的殺人事件のヒントをもらおうと、クラリスが会いに行く、元は有名な精神科医でありながら異常人格的な殺人犯として投獄されていたレクター博士役に、アンソニー・ホプキンス。
これがまた、怖いほどの適役(^^;
この二人だけでも、原作の雰囲気が見事に再現されるであろうことがわかるくらい。
話の展開も、とてもよくできた映画だと思います。
映像で見るには、気持ち悪いシーン続出でしたけど(^^; それはまあ、原作がそうですから仕方ないのかと(笑)

他にも、ストーリーのまとめ方、配役ともに、原作を裏切らない出来だと思ったのは、「ピンポン」、そして「ロード・オブ・ザ・リング」。
「ピンポン」は、タイトル通り、卓球にかける高校生たちを描いた邦画で、これは松本大洋さんの漫画が原作。
かなり原作を削っているはずですが、主人公二人の友情にポイントを絞ったストーリーは、まさに青春!、楽しくて切なくて、じわっと温かい。
配役は、むしろ大胆かも(^^; 窪塚洋介くんをはじめ、ARATAさん、中村獅童さんなど、そのままじゃ誰も高校生に見えないぞ、と言う感じなのですが(笑)。
それでも納得しちゃうんですね、青春ものに見えるんです。
もっと高校生に近い年の人を使うこともできたでしょうが、監督さんは、あえてあの配役にしたとか。それぞれの個性が際立ち、いい感じでした。
かなり好きな映画です(^^)

「ロード・オブ・ザ・リング」は、とにかくはまりました。
映画一作目を見て、原作を読み始めたのですが、古くからのファンタジーなので、文体も独特ですし、とにかく長い、説明も多い、寄り道も多い(笑)。
三部作と言う、思い切った制作方法にしたことで、時間的な枠は少しゆとりが持てたのでしょうか。
それでも、削るところはばっさり削り、わかりやすく迫力のあるストーリーにまとめられていました。
もちろん、配役もお見事! 大作にありがちな、有名スターばかりを集めたりすることなく、一見地味そうでありながら、それぞれの種族(?)に実にぴったりのキャスティングだったと思います。

同じくファンタジーの「ハリー・ポッター」シリーズも、配役はすばらしい。
主役3人は、すっかり大人っぽくなったけれど、すでに他の俳優さんは考えられないほどの適役だし、周りの先生たちの配役も、絶妙ですね。
ただ、このシリーズは原作自体が、どんどん話がシリアスになり、今や「楽しい魔法の世界」などと言えないほど、ダークな内容になっています。
しかも、とっても複雑に様々な要素が絡み合っていて、映画の時間枠で見せるのは苦労があるだろうなあと思いますが、それでも魔法を駆使したり、架空の生物が登場したりするシーンの映像は見事で、わくわくします。
原作通りの内容、と言うには、ちょっと消化不良の感があるけれど、私には見逃したくないと思ってしまう映画なのです。

いまだに私が、あちこちで話題にしては騒いでいる(笑)「デスノート」も、個人的贔屓を抜きにしても、とても上手にまとめられた映画ではないかと思います(^^;
長い原作の後半部分をすべてカットし、きりのいい前半だけで完結させた。
そのために、原作にない人物や、設定を変えた人物を作り、「デスノート」の世界観や主人公の人物像を明確にし、ストーリーの流れが繋がるようにしてあります。
あまくでも、主役二人の対決に焦点を当てた作り。
ラスト近くのどんでん返しは、ほとんど「これって禁じ手じゃないの?」と思うほど(笑)。原作にはない展開です。
それでも、おそらく原作ファンの多くが、原作の中でいささか不満に思っていたであろう重要な部分を、見事にくつがえしてしまったことで、逆に原作ファンに「こういう結末もいいかも」と思わせた監督に拍手。
すみません、ネタばれになるので説明が曖昧ですm(__)m 映画をご覧になった方は、「ああ、あそこね」とわかるかと・・・(^^;
ちょっと、きれいにまとめすぎのラストかもしれませんが、主役二人をどちらも引き立たせた作りだったと思います。

えーと・・・、なんだか結局、好きな映画を並べただけみたいにになってしまいましたが(^^;
正直なところ、原作を先に読んでいる映画は、どうしても原作に比べ物足りなさを感じてしまうことが多い。原作と映画は別物、と思えばいいのでしょうけれど、なかなかそう割り切れない・・・
そんなふうに見えてしまう映画は、もしかしたらどこかストーリーの構成が、練りきれていなかったのかも、などと素人の私が言うのは、非常におこがましいのですがm(__)m
本当によく出来た映画は、原作のあちこち削ってあるのがわかっていて、それでも尚、十分見応えがある、面白い!と素直に言えるものなのだと思うのです。

限られた時間の中で、どこまで見せられるのか。どこをどう繋げたら、ポイントを押さえつつわかりやすいストーリーになるのか。どんな配役にしたら、魅力的な人物像になるのか。
まさに監督さんの手腕にかかっているのですね。
なにやら、気の遠くなりそうな難しさに思えてしまいますが(^^;
それでも、原作を知っている話が映画になると聞くと、「いったいどんな映画になるんだろう」と、わくわくする自分がいます。
願わくば、原作の世界を壊すことなく、原作を超えてほしい、となんともわがままなことを考えてしまうのです(笑)

さて、みなさんお薦めの「原作のある映画」は何でしょう?



平成19年11月1日
                                                          
涼   
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