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今年も猛暑のようです。
暑い夏を少しでも涼しくする方法のひとつ、背筋も凍る怪談、と言うのがありますね(笑)
学生時代の夏の合宿やキャンプなどでは、肝試し、そして布団に入ってからの怪談話などを経験された方も多いと思います。
でも・・・何を隠そう、そういう類が大の苦手の私(^^;
肝試しなら、まずは途中で逃げ帰るか、はたまた隣の人にしがみついて、目をつぶったまま、ぎゃあぎゃあ騒ぐと言う醜態をさらしてしまいます。
まあ、たいていはその前に辞退させて頂きますが。なにせ恥かくのが見えてますからねえ(笑)
もちろん怖い小説も苦手でありますし、テレビや映画など、ホラー系の映像もまずはパスと言うことになります。

でも、これほど怖がりな私でも、どこかに怖いもの見たさと言う感情も多少はあるようです。
まともに見られないくせに、ちらっとは見てみたいと言う・・・(笑)
そうは言っても映像系は、最近のはかなり凝っていて激烈に怖そうで、とても無理。
以前、映画にもなった「パラサイト・イブ」の原作を買ってみたことがありましたが、よせばいいのに夜寝る前に布団の中で読み始めて、あまりの気味悪さに最初のいくつかのエピソードだけで挫折しました(^^;
文字から、おぞましい物体が現れてきそうで・・・

結局、もろホラー小説はだめ。
かろうじて読めるのは、ちょっぴりホラー仕立てになっているかなと言う推理小説。私の好きなアガサ・クリスティにも、そんな感じのちょっと怖いお話はあります。
一番ぞっとしたのは、やはり「そして誰もいなくなった」かな。

孤島に集まった10人が、不気味な歌になぞらえて次々と殺されて行くと言うお話。
島に招待してくれたはずの主人は姿を見せず、船は帰ってしまい・・・
孤島に閉じ込められた形の10人は、招待された屋敷の中で、どこからともなく聞こえてくる声によって、それぞれが過去に犯した殺人の罪状を読み上げられます。
そして起こる最初の死・・・ それは単なる事故かと思われました。
ところが一人、また一人と死に、それが各人の部屋に飾ってある額のインディアンの歌に似せての殺人であることに気づきます。
しかもご丁寧に、この屋敷の一室には10個の陶器のインディアン人形が飾ってあり、一人殺されるたびに、その人形も減って行く。

自分たちの他に、姿なき殺人者がこの島に隠れているのか、はたまた残された人たちの中の誰かが犯人なのか・・・
疑心暗鬼と恐怖に、人々は追い詰められて行きます。
もちろん、これはホラーではなくあくまでも推理小説なので、最後には解決編もあるのですが。
物語全体をおおう不気味な雰囲気、追い詰められて行く人間の心理など、とにかく読んでいてぞくぞくしました。
最初は美しく想像できた島の風景や屋敷の様子まで、暗く禍々しいものに塗り替えられて行くよう。
クリスティの文章力のすごさを思い知らされる一作です。

さて、そして最近凝って読んでいるのが恩田陸さん。
ついこの間、「夜のピクニック」と言う小説で本屋大賞を受賞されたとのことで、その受賞作はノスタルジーにあふれたお話だそうですが、まだ読んでいません。
本来は推理小説を書かれる女性作家さんです。
なんて言うのでしょう、独特の不思議な雰囲気のある推理小説なんです。
ホラーっぽいものもあり、SFっぽいものもあり、学園ものあり。
そしてどの小説にも共通するのが、どことなく懐かしい、せつなくなるようなノスタルジックな香り・・・

デビュー作は「6番目の小夜子」と言う、高校を舞台にしたもの。テレビドラマにもなったらしいですが、残念ながら見そびれました。
これもホラーがかっていました。つかみどころのない不気味さが流れており、でも不思議ななつかしさも誘う。
その高校には、ひそかに語り継がれる「サヨコ」伝説があります。「サヨコ」と呼ばれる存在が代々選ばれると言う・・・
それは前の代の「サヨコ」が卒業する時に、次の「サヨコ」と決めた相手にこっそり鍵を渡すと言うやり方で引き継がれているのです。その後、前の「サヨコ」から手紙が届き、その年になすべきことが伝えられる。
3年ごとに、「サヨコ」としての特別な務めがあるのですが・・・

鍵を渡された者は「サヨコ」を引き受けた証しに、新学期の最初の日、その鍵で開けた棚に入っている花瓶に赤い花を活けて、自分の教室に飾る。
誰にも自分が「サヨコ」に選ばれたことを話してはならない。
ところが、この6番目のサヨコの年、選ばれた「サヨコ」とは別に、小夜子と言う名の転校生が現れ、不気味なことが起こり始める・・・
「サヨコ」とは、いったいどんな存在なのか。突然現れた第二の小夜子は何者なのか。
物語は、高校の様々な行事の楽しげな様子と、不気味な事件とを交えながら展開して行きます。

学校と言うのは、よく生徒たちに引き継がれて行く言い伝えみたいなものがあったりしますよね。
学校の怪談なんて言うのも、その一種かな。
誰が言い出したかもわからず、どの程度信じられているのかもわからないけれど、耳にしたことのある言い伝えなど・・・
そんな雰囲気を、学校と言うのは持っているのでしょうね。
恩田さんの作品には、学校を舞台にした作品が結構あります。
それぞれ不思議の影がちらつき、自分の学生時代とは違う点も多いけれど、なぜかなつかしさも感じたりして。
でも・・・はて、うちの高校には怪談話あったかなあ(笑)

どっぷりとホラーに浸かるだけの勇気はない私・・・(^^;
うっすらと背筋が涼しくなるくらいの、しかも雰囲気のいいミステリーに出会えたら、それはかなりラッキーなことなのです。
さて、みなさんは怖いお話、お好きですか?(笑)


平成17年8月1日
                                                        
涼