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卯月4月・・・ 最近本を読む時間が取れなくなったなあ、と時々ふと妙な焦りと共に思うことがあります。 本を読む、文字を読むことは、映像として見るよりも想像力を駆使するわけで、それだけ得るものが多い気がします。 とは言うものの、今年に入ってから、今まで以上に時間的ゆとりがなくなってきて、「自分の時間」「好きなことに没頭できる時間」として確保できる時間が少なくなっています。 で、削られたのが本を読む時間・・・と言うのは言い訳かな(^^; 読みたいと思う本が目につくと、とりあえずは買ってしまうのはあいかわらず。その結果、未読本ばかりが増えてしまいます。 時折、子供の頃に読んだ本がしきりに思い出されて、もう一度読んでみたいと言う気持ちになることがあります。 おおまかなストーリーくらいしか覚えていない、でもとても好きな話だったと言う記憶のある本・・・ 今読んだら、どんな感想を持つのだろう? あの頃の感動を思い出せるのかな。 そんな思いから、最近探して買ってしまった本は、バーネットの書いた「秘密の花園」でした。 インドで生まれたイギリス人の少女メリー(昔読んだ時はメアリーだったような気もするのですが) 身体が弱く、気難しく、かんしゃくもちの小さな女の子は、両親にほとんどかまってもらえず、インド人の召使たちに我が侭放題に育てられます。 ある時、コレラが流行り、メリーの知らないうちに両親とも死んでしまいました。取り残されたメリーは、イギリスに住むおじさんに引き取られることになります。 そこは荒野(ムーア)の果てに建っている大きなお屋敷。鍵のかかったたくさんの部屋と、たくさんの庭園。メリーには会おうとしないおじさん。 やせっぽちで無愛想で気難しいメリーは、ここでも一人でひっそり暮らすことになるのかと思われました。 でも、若く素朴な女中マーサや、無愛想な庭師のベン老人たちに少しずつ心を開き始め、外に出て遊ぶことを覚えたことで、生き生きとしてきます。 そして、何よりもメリーの興味をひいたもの、それは10年間閉ざされたままだと言う秘密の庭でした。 その庭を閉めきってしまったのは、おじさんであるクレーブン氏。愛する奥さんがその庭で死んでしまったことを嘆き悲しんで、鍵をかけてしまったのです。 秘密の庭を探そうとするメリー。ベン老人のかわいがっているコマドリと遊んでいるうちに、ついにメリーは庭の鍵を、そして扉をみつけてしまいます。 そこはたくさんのバラの木におおわれた庭。もし枯れていなければ、どれほどの素晴らしいバラたちが咲くことでしょう。 閉ざされていた庭を蘇らせようと決意したメリーは、マーサの弟ディッコンと一緒に、こっそりと庭の手入れを始めます。 お屋敷には、他にも不思議なことがありました。時折聞こえてくる泣き声。それについて聞いても、誰も教えてくれません。 雨風の吹き荒れるある夜、メリーはお屋敷の中を捜し歩き、その泣き声の主に出会います。 それはクレーブン氏の息子コリン。病弱で、自分はせむしなのだと思いこみ、メリーに負けないくらい気難しい男の子でした。 コリンはいきなり現れたメリーにびっくりしながらも、興味を持ち、いろいろとメリーの話しを聞きたがりました。 メリーは、自分がそうであったように、コリンも外に出られるようになれば、きっと元気になるのではと考えます。 そして、ディッコンを連れて来てコリンに会わせ、三人だけの楽しい計画を立て始めます。 本の中で表現されるイギリスの自然のすばらしさ。荒野(ムーア)の荒々しさや庭の美しさを想像するのは、なんとも言えず楽しくて、心が踊るようです。 ぶっきらぼうでかわいげのないメリーが、少しずつ見せる変化。 動物や植物と同化してしまいそうなほど素朴で暖かい少年ディッコン。 ひ弱ながら、「若い王さま」のように振舞うコリン。 コリンとメリーが壮絶な喧嘩をするシーンは、ものすごい迫力ながら、どこかほほえましい。 負けず嫌いなメリーが、コリンの我が侭をビシバシとやりこめる様が、なんとも痛快。 大人でさえ手を焼き、どうしようもできないほどのかんしゃくを起こしたコリンに向かって、「黙りなさい!」とどなりつけ、せむしになることを怯えるコリンに「コブなんてひとつもないじゃない」と言い聞かせるメリーのかっこいいこと(笑) 小さい頃から「自分は長く生きられない」と思いこまされてきたコリンの恐怖も孤独も、ここですっと流されて行きます。 ふたりの間に芽生える友情、そこにディッコンも加わり、やがて大きな奇跡と感動を呼び起こすことになるのですが・・・ 以前テレビで「子供に読ませたい日本の名作」と言う特集をやっていました。たしか「坊ちゃん」が1位だったように思います。 日本のではないけれど、私は迷わずこの「秘密の花園」を推したいなあ。 この本には、とても素敵なこと、子供が成長するに当たり大切なことがたくさん詰め込まれているように思えます。 もちろん現在の日本の状況に合うかと言われれば、かなり無理なのかもしれないけれど。 自然の中で、のびのびと遊ぶことが、どれほど子供たちをたくましく元気にすることか。 自分のことしか考えなかったメリーが、どんな風に自分以外の人を思いやるようになるか。 大人になった今読んでも、ハッとするようなことがさらりと書かれています。 たとえば、女中マーサの母親が、「地球はオレンジみたいな形」と教わったことから、「オレンジはだれのものでもない」「オレンジをひとり占めしてはいけない」と言う、これはすべてのことに当てはまるのではないか、などと。 そして、物語全体を通して語られる自然のすばらしさ・・・光や風に彩られた庭の様子、たくさんの緑や花が春に向かって息づく様子、マーサやディッコンが語る果てしなく美しい荒野(ムーア)の様子・・・ 読んでいると気持ちが広々として、空の彼方へ舞いあがって行きそう。 メリーたちと一緒に、目の覚めるような美しい庭に踏み入り、その空気に浸っている気持ちになります。 こんなわくわく感、ずっと忘れていたような気がするなあ、とあらためて感動しました。 「秘密の花園」、間違いなく私の大好きな本です。 平成16年4月1日 |
涼 |
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