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冬から春にかけては、香りのよい花にふと目を(鼻を?)引かれます。
2月と言うと、梅のイメージなのですが、今回は年末から咲き続けている水仙に注目してみました。

水仙、いかにも 日本的な風情のこの花。
なのに、考えたら万葉集を始め、いにしえの文学や和歌集の中に、まったく見かけないことに気づきました。
それもそのはず、水仙の原産地は地中海沿岸地域やアフリカ北部。
中国を経由して、日本に渡ってきたのは、どうやら室町時代あたりらしい。
和歌集に詠われないはずですねヽ(´ー`)ノ

そこで、思い出しました。
そうだ、水仙て確かギリシャ神話に関係してなかったっけ(^^;
で、あらためて調べてみたところ、学名であるNarcissus(ナルキッソス)は、ギリシャ神話に登場する美少年の名前なのだそうです。
そうそう、この少年のお話から、確かナルシストと言う言葉が派生したはずだったわ。

森の精霊の一人エコーは、自分では口を聞けず、相手の言葉を繰り返すしかできなかった。そのエコーはナルキッソスに恋したものの、ナルキッソスの言葉を繰り返すだけだったので、飽きられ、捨てられてしまった。
嘆いたエコーは、姿を失い、木霊になったのだそうです。
それを見た神ネメシスは、ナルキッソスが自分だけを愛するようにしました。
ある日、水面を見たナルキッソスは、そこに映っていた美少年(自分ですねえ)に恋してしまい、そこから離れることができなくなって、死んでしまった。
ナルキッソスの死んだ跡に咲いた花が、水仙なのだそうです。
だから水仙は、水辺で自分を覗きこように、うつむいて咲くのだと・・・

でも、ナルシストの語源となったにしては、水仙の姿はとても控え目ですね。
ナルシストと言うと、なんだか自分に酔っている自信過剰なイメージがありますが(笑)
でもナルキッソスはきっと、自惚れとかではなく、呪いによって、どうにも報われない恋に落ちてしまったのでしょう。
その哀しみが、あのひっそりとした姿になり、透き通るような香りをも生み出しているのかもしれません。

もっとも、ナルキッソスの生まれ変わりと言われる水仙は、クチベニスイセンと言う種類だそうです。
私は実物を見たことがないのですが、画像を調べたところ、ラッパ水仙に似た感じの花の形の白い水仙で、真ん中の黄色い部分の縁だけが赤いのです。
本当に口紅を塗ったようで、ちょっと艶っぽいですね(^^;
香りはどうなのかな。

日本で一番よく見かける白い清楚な水仙は、ニホンズイセン。
中国から渡ってきたものが野生化したのではないかと言われています。
水仙の中でも、見るからにつつましい姿、それでいて香りは強い。
水仙の名所と言うと、海を見下ろす斜面に群生しているところが多いように思います。
海風が吹きつける中、たくさんの水仙が風に向かって咲く。
なんとも健気で、意外なほどたくましくも感じてしまいます。
これって、けっこう日本人好み?(笑)
もしかしたら花も、根付いた地に似合うような形態に変わるのかもしれませんね。

あ、ちなみに、水仙は有毒植物だそうですよ(^^;
球根はもちろん、葉なども、間違って口にしないよう、気をつけましょう。
茎も葉もやわらかそうな水仙。球根なので、根付いた場所から増えて行くしかない。
毒を持つのは、種の存続のため、動物に食べられてしまわないように、と言う防御策なのでしょうか。

寒さに負けず咲く、冬の貴重な花である水仙。
その姿も、凛とした香りも、ささやかな誇りや秘めた意志を感じさせてくれます。
水仙の花言葉は、「自己愛」と書かれているものが多いです。
おそらく、ナルキッソスの逸話から来ているのでしょうが、悪い意味ではなく、自分自身をきちんと愛してあげるところから、周りの人への思いも育まれるのだろうと・・・

春の気配と冬の名残が、行ったり来たりする季節。
風邪をひいたりしないよう気をつけて、春の訪れを待ちましょう。


平成22年2月1日

                                                          
涼       
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