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毎年、新年早々の箱根駅伝を見るのは、楽しみのひとつです。 って、いきなり鬼が笑うような話題で、すみませんm(__)m 実は、今読んでいる本が、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」でして、これが箱根駅伝を目指す青年たちのお話なのです。 この間、映画も見てきたばかりなのですが。 かなり好きな映画だったので、例によって原作を読み始めたわけです。 通称「アオタケ」と呼ばれる竹青荘は、賄い付きで家賃3万円と言う、破格の条件の寛政大学の寮。 そこに誘われて入居することになった1年の走(カケル)。 誘ったのは、寮長をも務める4年生の灰二(ハイジ)。 ランニングをしていたカケルを見かけ、声をかけたのでした。 アオタケの住人は、カケルを入れて10人。 カケルと同じく1年の陽気な双子、ジョータとジョージ。 浪人と留年で一番年上なのに3年生、ヘビースモーカーのニコチャン。 すでに司法試験に合格している知的な4年生、ユキ。 クイズ番組大好きな雑学王、4年生のキング。 田舎の山村で育ち、故郷で有名な優等生だった穏やかな3年生、神童。 留学生ながら、丁寧な日本語を話す黒人の2年生、ムサ。 部屋に山と積まれた漫画に埋もれて暮らす漫画オタクの2年生、王子。 個性溢れるアオタケのみんなは、カケルの歓迎会の日、ハイジのとんでもない宣言に仰天します。 それは、この10人で箱根駅伝に挑戦すると言うこと。 実は、アオタケは寛政大学陸上部の寮だったのです。ここに入居した時点で、本人は知らないまま、陸上部に登録されていた、つまり箱根駅伝に参加する資格あり、と言うことになります。 驚きはしたものの、いささか呑気な反応のみんなの中で、カケルだけが「絶対に無理だ」と憤ります。 カケルは高校時代に天才ランナーの評判を持ちながら、ある事件を起こし、退部になった身の上。 そして、ハイジも才能あるランナーながら、膝の故障で一時は走ることをあきらめた過去がありました。 その二人以外は、走ることに関しては、まったくの素人。カケルの反対も無理はない。 けれど、ハイジには彼なりの勝算がありました。 それぞれが、スポーツの経験者だったり、体力値の高い者だったり、集中力に優れていたり。 しかも、アオタケに住む条件として、毎朝5キロ走ると言うものがあったのです。 皆、それとは知らずに、条件を呑んで走ってはいたのでした。 そして、炊事を一手に受け持っていたハイジは、ひそかに全員の栄養面の管理もしていたと言うしっかり者。 皆、ハイジへの日頃の感謝や好意もあり、なんとなく乗り気になっていくのでした。 ごねていた数人も、ハイジのソフトな脅し(俗に言う、恩を着せるというやつです)の前に、あえなく屈服(笑) ただ一人、納得しきれないカケルも、走りたい気持ちは誰より大きい。 もしかしたら、と言う期待は、ひそかに生まれていました。 無謀この上ない、アオタケの住人たちの箱根駅伝への挑戦が始まります。 このお話は、ある意味、夢物語のようなものかもしれません。 映画も、あくまでも爽やかな作りで、気持ちよく見られるものでした。 10人のランナーたち、それぞれが個性的でありながら、好感が持てる。どこか可愛げがあって、つい応援したくなります(笑) 配役もよかったと思います。 特別派手な役者さんはいなかったものの、いい持ち味の若手たち。 あ、ちなみに黒人の留学生ムサの役を演じていたのは、ソフトバンクのCMでの「お兄ちゃん」でした。とても似合っていました(笑) 実は、もともとこういう群像ものがけっこう好きな私(^^; でこぼこメンバーがつまずいたり、ぶつかり合ったりしながらも、ひとつの目標に向かい、絆を深めて行く。 同じ夢を目指す仲間と言うものに対する憧れもあるのかもしれません。 そして、もっと憧れるのが、損得ではなく、ただ好きで、その思いだけで打ち込める、情熱を賭けられる、そんなものを持てること。 とは言え、それはもしかしたら、とてつもなく真摯でなくては為し得ないのかも。 それほどのものを持ってしまったら、他のことはしているひまがなくなるのでしょうし(^^; 呑気な自分には無理だなあと思いつつ、それでもどこかで憧れ続けているようです。 カケルは、高校の陸上部を退部し、輝かしい将来を棒に振ったことに気づいた。 あのまま、陸上部で活躍していたら、推薦で陸上で有名な大学へも行けたかもしれない。もっと速く走れるようになったかもしれない。 けれど、そんな夢は破れ、孤独に陥りながら、それでもカケルは走ることをやめられなかった。 毎日一人で走ることを続けていたのです。 なぜ走るのか、自分の中で答えもないまま・・・ もっと速く走ることで見えてくる世界が知りたいと願う。 カケルは、まさに走るため、その力をどこまでも伸ばすため、生まれてきたような青年だったのでしょう。 ハイジは、どうなのだろう。 ただ速く走ることだけではない何かが、その目には映っているのかもしれない。 速さだけを競い、そのために故障してしまったハイジは、挫折感の中で何を学んだのでしょう。 なぜ、素人がほとんどのアオタケの住人たちを、箱根駅伝の仲間に選んだのか。 いずれにしても、ハイジがアオタケの仲間たちを信頼し、その底力を見込んでいたことは確かなようです。 一人一人の力量や結果に合わせ、練習のスケジュールを立て、たとえタイムがとんでもなく遅い者がいたとしても、決して怒ったり、無理をさせたりしない。 忍耐強く、でもしたたかに、目標を目指そうとするハイジ。 彼は、むしろ監督にふさわしいのかもしれません。 カケルは、ハイジから問い掛けられます。 「長距離選手に対する、一番の褒め言葉は何だと思う?」 カケルの答えは「速い」。 けれど、ハイジは「強い」ことだと言うのです。 「速い」ではなく「強い」とは、いったいどういうことだろうと、考え始めるカケル。 今まで、周りの者が自分に求めたのは「速さ」だけだった。 けれど、それだけではない何かがあるのかもしれないと気付くのです。 夢には、いろいろな形があって、一人きりで突きつめることもあれば、共に歩む仲間と目指すものもある。 どんな形でも、それが好きで、時間を忘れてでも打ちこめたり、つらい思いをしてもあきらめなかったり・・・そんな思いを持てたとしたら、それは幸せなのでしょう。 このお話で、カケルは素晴らしい仲間と出会えますが、でもきっと彼のまなざしは、今後さらに高みを目指すのだろうと予感させます。 それは、たぶん孤高の境地。誰よりも「強い」走りを求めて。 私はこの「風が強く吹いている」と言う小説を読む時間を、とても幸せだと感じます。 この本を開いた瞬間、心が和む。 意外と厚い本だし、時間があまり取れないので、なかなか進まないのですが(^^; 早く読み進めたいと思うと同時に、読み終えてしまうのが寂しい。 ゆっくりじっくり、できるだけ長く楽しみたいと思ってしまうのです。 アオタケの愛すべき仲間たち、楽しいやりとりやばか騒ぎ、皆が共に目指す道の頼もしさ、カケルが一人走る時の凛とした孤独感、ハイジの器の大きさ、ただ純粋に夢を追うことの切ないような輝き・・・ 自分とはほど遠い世界ながら、その世界に入り込むことが、とても心地いい。 疲れがたまったり、気分が沈んだりすることが多かった先月。この映画と小説に救われていました。 きっと今頃、実際に来月の箱根を目指し、必死で練習を積む、たくさんのカケルやハイジがいるのでしょう。 選手の数分のドラマが、見えないところで生まれているのでしょう。 そう思うと、どきどきします。頑張れとエールを送りたくなる。 毎年、新年の箱根駅伝の中継を見るたび、まさに栄光の舞台だと思え、そこに集う選手たちの高揚感が伝わって来る気がしていました。 この舞台に立つまで、どれほどの練習の日々があったのだろう。 その努力が実らなかった人たちも、どれほど多いことか。 光と影、どちらにも様々なドラマが隠されているのでしょう。 来年の箱根駅伝は、さらに感動が大きくなりそうです(*^^*) そして、形は違えども、いつか自分も夢を追ってみたいものです。 夢に年齢制限は・・・ないといいのでが(笑) どんな夢であっても、それに対する思いが「強く」あることができたら・・・ さて、それはいつ? どんなものなのか(^^; まだまだ見えてこないようです。 とりあえず、来年に期待してみましょうか(笑) 平成21年12月1日 |
涼 |
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