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もうずいぶん長いこと、美術館へ行ってないなあ、とふと思いました。
以前、と言ってもかなり前ではありますが、お休みの日にふらりと美術館へ行くのが好きだった時期がありました。

子供の頃から、絵を描くのが苦手でした(笑)
四苦八苦でスケッチして、絵の具を塗る段階でたいていめちゃくちゃになる(^^;
絵の才能が皆無なことを、いやと言うほど自覚したものです(笑)
なので、自分は絵には興味がないと思いこんでいたのでしょうね。


何がきっかけだったのか、ある日ふいに美術館へ行ってみたくなり、足を運びました。
確か、上野の国立西洋美術館だったと思います。
あまり混んでなく、ゆっくりと回ることができました。
見たのは常設展示でしたが、ある絵の前で動けなくなりました。
クロード・モネの「黄色いアイリス」。
縦長の大きな絵でした。

沈んだ青や緑で表わされた葉の部分が、まるで青く燃え盛る炎のようで、その先に咲く黄色の花が、はっとするほど鮮やかな、乱舞する蝶をも思わせました。
その迫力、色彩のコントラストや、花の命の躍動感のようなものに、しばし圧倒され、見入ってしまいました。
この絵の前を離れたくない、そんなことすら思いました。

そして、その少し先に展示されていたのが、同じくモネの「睡蓮」。
水面に浮かぶ睡蓮の花。ひんやりとした水の気と静けさに包まれるような感覚。
これまた見ているのが心地よくて、この絵の前からも動けませんでした。
立ち去るのが惜しくて、ふたつの絵の間を何度も行ったり来たりして、眺めていました。
どうやら、私はモネの絵が好きらしい(笑)

絵と言うものの不思議さ、魅力に取りつかれたのは、間違いなくあの瞬間だったのでしょう。
その後も、モネの絵に出会った時の感覚をまた体験してみたくて、いろいろな絵画展を覗いてみました。
絵に関しては、造詣が深いとはとても言えない。知らないことばかりでしたから(^^;
ただ、自分の中でぴんとくるもの、ずっと見ていたいと思わせてくれる作品に会いたい一心でした。
たくさんの作品の中で、ひとつでも「あ、これがすごく好きだ」と思える絵に会えると、それが嬉しくて、そこから動かず眺めたものでした。


いつから、遠ざかってしまったのだろう、そんな楽しみから。
仕事などの環境が変わったと言うこともありますし、それよりもしかしたらPCと言う、家での楽しみをみつけたことも関係しているかもしれません。
美術館の雰囲気はとても好きだけれど、ちょっと有名な作品展などだと、とんでもなく混んでいることも、いささか出向くのか億劫になった原因かな。
昔ほど体力もなくなりましたし(笑)

今にして思えば、美術館への憧れは、同時に都会への憧れでもあったように思います。
静かな建物の中で、洗練された芸術に触れる、ささやかだけど贅沢な時間。
でも反面、あの頃は自分の住む田舎に溢れる自然の良さには気付かなかった。
だからこそ、お休みのたびに都会へ行き、美術館やら博物館を廻ったのでしょう。
いつしか都会へ遠出するゆとりが減り、家でPCに向かい詩を書き始めた。
そのことが逆に、田舎だからこそ在る、様々な自然の美しさに気づくきっかけになったのは、考えてみれば嬉しい誤算とも言えるかな。
人の興味の対象は、外へ外へと向かう時期と、内へ向かう時期、うまく巡ってくるものなのかもしれませんね。

そして、そんな今だからこそ、久しぶりに絵画に出会ってみたくもあります。
なかなか時間が取れなそうではあるのですが(^^;
でも、できるならもう一度、モネの「黄色いアイリス」と「睡蓮」の前に立ってみたいなあ。
今でも、あのころのように感動できるかしら。できたら嬉しい。


季節は秋へと向かいます。
芸術に触れるのもいいですね、きっと。
みなさんは、どんな絵がお好きですか?



平成21年9月1日

                                                          
涼       
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