好敵手

                           ― 諸葛亮に捧ぐ ―


私の前に
立ちはだかるものは何だ?


時に
激しい瀑布のごとく
攻撃をたたきつけ


または
しのびやかな逃げ水のごとく
罠をすり抜ける


驚くほど整然と


その変貌ぶりは
鋭い才知より むしろ
頑固なまでの真摯さで
私に迫ってくるのだ


国を護るため
持ちうるすべての手駒を
打ち続ける


それが君の生き方なのか


ならば私は
堅固な岩になり
君の前に
この身を晒していよう


君の放つ清流が
はたして
私の砦を穿つことができるか


君が挑む限り
私は決して逃げない


そして
君に煽られもしない


ただじっと
私を押しつぶそうとする
もろもろの重圧に耐え
沈黙の座に徹しよう


今は
動かないことこそが
最大の攻撃となるのだ


私は知っている


君の星が夜毎
その光を弱めつつあることを


君は強靭な意志のみで
刹那の輝きを保っている


なんて見事な姿だ


それでも
私は君の思い通りに
動かされるわけにはいかない


私にも
護らねばならぬ国があり
譲れない誇りがある


君の最期の瞬間まで
全身全霊で対峙する


それが私の示す
君への最高の敬意だ


澄み渡る空に
君の陣の旗が
粛々となびく


張り詰めた風が
大地を渡って来る


互いの心を
曲げることなく


さあ
存分に戦おうではないか