《さざなみさんへ》





黒曜石



その瞳


ひんやりした漆黒に
時折 きらっと
艶やかな 虹のゆらめき


まばたきの間の魔術


惹き寄せられ
とまどう まなざしをよそに


しなやかな変幻
一瞬のちの
冷然たる 傍若無人


投げかけられる視線を
さらりとかわして


飄々たる ゆとり
肩先に匂わせる


誰からも
自由なのだと


誰にも
酔えはしないのだと
言わんばかりに


鮮やかに
向ける背中


けれど


あなたは
まだ 気づいていないだけ


醒めた微笑を
ひそやかに裏切って
その瞳が
待ち焦がれるもの


それは
囚われることへの蠱惑


抗えない 強い磁力


桃源郷の
かぐわしい罠は
すぐ足元に


あなたが望むまま
幻を綾なす


そう
わたしは 見てみたい


創られた端正を壊して


かきあげた前髪の奥
とめどなく煌く
ふたつの闇を


解き放たれた虹が
陽炎のように燃えるさまを


その瞳


ああ
なんて見事な
黒曜石