綺   羅

                              ― 郭嘉に捧ぐ ―



人の才とは
なんと不思議なのだろう


国を広げる才
民を安んじる才
敵を打ち倒す才


そのどれもが
天下を動かす歯車となる


わたしの目の前の
若き横顔


怜悧なまなざしが放つ
精緻なる閃き


誰もが人知れず
感嘆の声を呑み込む


君の才は
どこまで飛翔するのだろう


切れ味のよい剣を振るう如く
策を打ち立てて行く
君の姿を
わたしは誇らしくみつめている


その才ひとつで
果てない高みを目指す君


不敵な笑みも
傍若無人な言動も
まるで
君の自由を
象徴しているようだ


ならば
わたしは今


何を目指しているのだろう


負けることのない戦いを?
過ちのないまつりごとを?
民のためのやすらぎを?


ふと立ち止まり
自らの夢を振り返る


信じることを叶えるために
どれだけの力が
蓄えられているのか


力を使い果たすまで
生き長らえるのか


行方は見えない


こんな不安
君は抱かないのだろう
たぶん


君は輝き始めたばかりの
朝日のように
どこまでも登って行くといい


迷いの影など
君の黒曜石の瞳には
似合わないから


その美しさを
潔い自我を称えつつ


わたしも
わたしの路を行こう


力尽き
倒れる最後の瞬間まで


この信念の導くままに