化生(けしょう)



ふつふつと
この身に蠢く 魔性の闇


いつからか ここに目覚め
ここに息づき


我は 何者?


ゆるゆると
雲間から吹く風に
いざなわれ 迷い出で


立ち止まる 足音
追いかける 花の香


フリムイテハ
ダメ


息をのむ まなざし
もう この手の中に


たおやかなる
乙女子(おとめご)の姿をかりて
ひるがえす 錦のたもと
紅のくちびる


月華に舞えども
月華に舞えども


影は 隠せず
地を這うは
黒々たる あやしの身


ワタシノ カゲヲ
ミナイデ



近付けば 艶なるほほえみ
差しのべたる 白き指先


さあ ともに
愛しき 生け贄よ


見ることかなわぬ 心の頬を
血の涙がつたうとも
ただ あでやかに
舞うばかり


命 おしくば


イマスグ
オニゲナサイ


あやなす幻惑(まぼろし)
見事にふりきり


細き光の その剣で
魔を断ちきると言うのなら


見るがよい


おぞましき 真(まこと)の姿
あさましき 闇の化身を
今こそ 晒さん


ワタシヲ
トキハナシテ


ワタシヲ
シズメテ


一刀のもとに
一瞬のうちに


さもなくば


僅かな覚醒すらも
滅びの美酒に呑み込まれ
容赦なく


アア
ユビサキガ
アカク ソマル


我とわが身を 救えぬ化生(けしょう)
調伏せし者を 待ちわびつつ
その血を流さんと欲する
哀しき宿世(すくせ)


深き罪を


どうか


憐れみたまえ
憐れみたまえ


許したまえ