寂 光



  険しき道を
切り開く先人たちがいて


その道を
引き継ぐ者たちがいる


与えられた座を
  じっと守るだけならたやすい


  だが
  これはただの道ではなく
  先人たちの熱き夢なのだ


なんという誇らしい重責


  新しき地へと
  さらに突き進むべきか
  それとも
  内なる力を補強するべきか


一歩ごとの選択に
  持てる知恵を出し切って
  わたしは戦わなくてはならない


  なによりもまず
  迷い慄く(おののく)自分自身と


  せめぎ合う力に臆することなく
  昂然と対抗しうるべく


黙考の末
たどり着いた信念を
貫き通すべく


時に応じて
剛と柔とを使い分けるのだ


進むことも守ることも
あるいは退くことすらも
明日への布石なのだと


頑是無い(がんぜない)
もうひとりの自分に
言い聞かせるのだ


激することなく
根気強く


指揮官の動揺は
軍の乱れを生むと言う


ならばわたしは
常に鏡の面(おもて)のごとく
端然とした明瞭さを示そう


燃えさかる炎の
華やかさは持たずとも


熾火のように
目に見えぬ熱を
この胸ひとつに秘めて
 
 
  惜しまれつつ逝きし人たちの
夢の軌跡を
さらに輝かしくするために


そして
自らの夢をも羽ばたかせるために


わたしは
誰にも負けない
わたしの戦いをするのだ
    
    


※寂光(じゃっこう)・・・「寂」は煩悩を離れる意、 「光」は
                   真の智の光が照らす意。