今月の「いにしえ人」 ―明石の君― |
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霜月、 11月と言うのは、晩秋とも初冬ともつかぬ少し微妙な月・・・と言うのは私が勝手に思うイメージなのだけど。 今月取り上げたのは『源氏物語』の中から、紫の上の最大のライバルと目される(笑)明石の君。 ちょうど4月に春のイメージと言うことで紫の上を選んだので、冬の最初の月として明石の君がいいかな、と。 物語の中で、六条院に自分と係わりのあった女人たちを集めた源氏の君が、紫の上は春の趣向を凝らした館に、そして明石の君を冬の館に住まわせたのは、なんとも納得!と思ってしまう。 明石の君・・・父親は明石の入道と呼ばれ、もとは大臣の息子でありながら、中央から離れ播磨の国守を経て、明石に都風の邸宅を構えている風流人。 自分はすでに出家しているけれど、娘にはなんとか高貴な人と縁を結ばせたいと思い、都の姫たちにも劣らぬほどの教養を身につけさせている。 となれば、娘もその意のままに育ち、気品もあり聡明で、しかも誇り高い(もっとも「特に美人ではないけれど」と書かれているんですねえ) それでいて、明石の君は自分の身分の低さは、しっかりと認識していたらしい。 気にそまない結婚をするくらいなら、尼になるか、海に身を投げてしまおうと考えていた、と言うところは、明石の君の気丈さと同時に、父親の望むような縁が簡単には得られないだろう、と言う覚悟も見えるような気がする。 散々源氏の君の気を持たせる明石の君だが、結局は源氏の君との恋に抗うことはできなかった。 たとえ恋が叶ったとしても、いずれは都に帰る人。自分は源氏の君がここにいる間の慰みでしかない、それでも仕方ないのだと、明石の君はひたすら哀しみながらも、源氏の君が訪ねて来た時にはそんな感情は見せず、つつましく上品に振舞う。その様がいじらしく、なおさら源氏の君は惹かれて行く。 やはり自らの身分の低さから、とことん源氏の君を拒んだ空蝉。 恋人になることで修羅を味わうよりはと、友達のままでいることを貫き通した朝顔の斎院。 そして誇り高さから最後まで素直になりきれず、秘めた嫉妬のため苦しみ続けた六条御息所。 彼女らと似ている点を持ちながらも、明石の君には一旦受け入れてしまった自分の運命を認め、流されてしまえるだけのしなやかさがあったのではないかと思う。その辺りが、私が明石の君が好きな理由かもしれない。 誇り高くありながらも、頑なになりすぎない。気に染まぬことは拒みながらも、最後にはふっと力を抜いて従う素直さも持っている。 あきらめとも達観とも違う、苦しみながらも受け入れる懐の深さ、みたいな・・・ 強さと弱さのバランス感覚がいいのかな(笑) 明石の君の印象的なシーンはいくつかあるけれど・・・ 源氏の君が都に戻ることを許され、いよいよ別れが迫った夜、それまで源氏の君が聞きたく思っていても弾かなかった琴を、明石の君が初めて弾いて聞かせる。 そのシーンは想像するだに美しい。 最初に源氏の君が「後であなたに思い出 |