花菖蒲



すっくと


天に向かってのびた
細い茎の先に


きりっと


空に映えるような
紫紺のほほえみ


透き通る風と
しめやかな雨が
交互に訪れる
水無月


うつろう空模様も
まるで意に介さないかのように


ひたすら天を目指し
清澄な空気を漂わせ


その花は開く


ぴんと背を張った立ち姿の
なんとあでやかなこと
なんと潔いこと


たわんで咲くくらいなら
いっそ
折れてもいいと言わんばかりに
まっすぐに


誇り高くそして深く
くっきりと染め抜かれた
紫紺の花びらよ


色褪せる事などおそれず
ひたむきに咲いておくれ


風も 雨も 空も
きっと心から讃えているだろう


その凛々しいほほえみを