2003年05月20日(火) アルウェンの恋 本当なら、エオウィンより先にアルウェンだなあ、と思いつつ・・・ ひとつには、アルウェンの恋について書こうとすると、とんでもなくネタばれになると言うこともあって(^^; しかも、そのネタばれたるや、本編だけでなく追補編にまで及んでしまう。 そんなわけで、アラゴルンとアルウェンの出会いや、恋の行方には、触れずに書くことにしようと思う。 アルウェンについては、原作よりも先に映画のイメージを見てしまったので、今になって思うと、原作のアルウェンと多少違うイメージで見ていたのかもしれない。 アルウェンは、原作ではあまり登場しない。アラゴルンとの恋についても、それほどおおっぴらに書かれているわけではない。 むしろ、さりげないところで、「あ、この二人は恋人同士だったのか」と気づかせるような書き方。 映画では、風見が丘で幽鬼に襲われたフロドを裂け谷に運ぶため、敵を蹴散らしてさっそうと馬を走らせると言う、なんとも勇ましい登場をする。 まさに見せてくれる、と思わせる演出でかっこいいけれど、その後のあくまでも優雅なアルウェンを思うと、ちょっと違和感があるかなあ、と・・・ アラゴルンに向かって「野伏せともあろう者が油断するとは」と短剣を突きつけたりする様子は、まるでエルフの女戦士のようで、ちょっと勇ましすぎるかも、と思ってしまう。 アルウェンのイメージが変わるのは、たぶん映画製作者が途中で意向を変えたからかもしれない。当初は、もっと戦う王女にするはずだったのが、話が進むにつれ、より感情豊かで、物思いに沈むような役柄に変わって行ったとのことだから。 原作で初めてアルウェンが登場するのは、確か裂け谷での食事の席。なんとか裂け谷にたどり着いたフロドやガンダルフ、エルフやドワーフと言った異なる種族が一つのテーブルについて食事をする。 その席で、フロドはこの上なく美しいエルフの女性を目にし、エルロンドの娘アルウェンであることを知る。 食事の後で、ビルボがアラゴルンに向かって「なぜ食事にこなかった? アルウェン姫も来ていたのに」と言うようなことを言い、そこで「あれ?」と思わされる。 さらにフロドはエルロンドとアルウェンが一緒にいるすぐ側に、アラゴルンもいるのを見る。この辺りでまた、ああ、これはと思われるのだろう。 「旅の仲間たち」の原作も、ちょっとうろ覚えになってはいるのだけど(^^; おそらく、次に二人の関係を思わせるところは、ロスロリアン。 一行がロスロリアンを去る際に、ガラドリエルがアラゴルンに、アルウェンから預かっていたペンダントを渡す。 映画では、裂け谷で直接アルウェンが手渡すのだけれど。 原作では、いつかアラゴルンがここを通りかかったら渡してほしいと、アルウェンがガラドリエルに預けてある。 エルフとしての予知能力がアルウェンにもあるとすれば・・・ アラゴルンがロスロリアンを通ることがあるなら、それは危険な旅の途中だと察していたのか。 希望のない旅の途中で、ペンダントを渡してもらうことで伝えたかったのかもしれない。 「夕星の光は常に消えることがない」と。「希望をなくしてはいけない」と。 アラゴルンたちが、ローハンからゴンドールへ向かおうとする時に、野伏せ時代のアラゴルンの部下たちが加勢に現れる。 その時に、アルウェンから部下たちが預かってきたのが、ゴンドールの皇旗。これは、アルウェン手ずから作ったものだと言う。 ここでも、遠く離れた場所から、アラゴルンへの励ましと希望を与えているように思える。アラゴルンがくじけそうになるのを、必死に支えようとする気持ちの現れかもしれない。 こういうところは、とても素敵。控えめでありながら、しっかりと自分の愛の証しを示している。 私の中でのアルウェンの恋のイメージは、無償の愛。 自分のことより、愛する人のことを思いやる、大きく包み込むような愛。 たとえ自分の永遠の命を捨てることになろうとも、決してそのことで相手に重荷を押し付けるのではなく、ただ自分の心のままに従っただけだと彼女は言うのではないだろうか。 だからこそ、たとえアラゴルンが自分のためを思ってゆえのことであっても、「ふたりの愛は思い出にすべきだ」などと言うと、本当に哀しそうな表情をする。 映画で、愛の証しのペンダントをアラゴルンが「やはり受け取れない」と返そうとすると「差し上げたのよ」とそっともう一度手に握らせる。 それは、決して相手を責める態度ではない。少々の失望はあったにしても・・・ 哀しくも静かな決意が見える。「私の心はもう決まりました。後はあなたのお心のままに・・・」と言っているように思える。 愛する人にすべてを差し出し、後は静かに自分の心をみつめている感じ。 ありえないことだけれど、もしも、万が一、アラゴルンが心変わりしたとしたら・・・ アルウェンは哀しみに打ちのめされながらも、アラゴルンが幸せなら、とひっそり姿を消してしまうのではないか、などと思ったりしてしまう。 もちろん、そんな事態はありえない、と信じる。 アラゴルンにとっても、アルウェンこそが運命の人であり、これほど自分を愛してくれているアルウェンと共に生きることが、どれほどの幸せかはわかっているはずだから。 私の勝手なイメージだと、エオウィンは「閉じ込められたジャンヌ・ダルク」 自らの生き方を求めるために剣を振るおうとしながらも、それを許されず城の中で苦悩する。 アルウェンは「一途な聖母(マドンナ)」 すべてを賭けていながらも、相手を包みこむ愛だけを胸に、そっと待っている。 一生に一度くらい、いや一度でいいから、こういう愛し方をしてみたい、こういう相手に出会ってみたい・・・などとおこがましくも思ってしまったりする(^^; |
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