慟    哭

                ― 郭嘉に捧ぐ ―


人の命運を操る神は
時として
子供のごとく気まぐれに
残酷な道を指し示す


いや
おまえのきらびやかな才が
神の好奇の目を惹き


こんなにも早く
天へと
手繰り寄せられてしまったのだろうか


おまえの生き様こそが
まさに
怖れを知らぬ子供そのものであったのに


秩序と言う柵などやすやす飛び越え
無頼なほど自由にふるまい


大胆な笑みで人をかわしたかと思うと
無礼なほどの視線で
まっすぐみつめ返してくる


打ち出す策は
常に明確にて我が意を得たり


おまえができると言えば
どんなことでも成し得る気がした


おまえが勝つと言えば
どんな戦さも負ける気がしなかった


ひんやりと鋭い手刀を
そっと懐に忍ばせているような


そんな密かな安心感が
いつもわたしを
知らず微笑ませていた


わたしが
軍師としておまえを選んだこと


そしておまえが
主君としてのわたしを称えたこと


幸いなる巡り会わせを
誇りにすら思っていたのだ


何もかもが
これからと言う時に


いったい
誰が思い及んだであろう


冷徹なほど冴えたおまえの才知が
これほど早く
病魔に摘み取られてしまうなどと


天は
おまえの若さを際立たせながら
その黒曜石の輝きを
奪い去ろうと言うのか


この先成し遂げるべきことを
山と残したまま


なぜ
おまえが逝かなければならない?
                                         
北斗の星よ
南斗の星よ
                             
生と死とを司るあなた方を
どんなふうに奉り
どんな言葉を捧げたら
わたしの願いを叶えてくれるのだ


たとえ冥府からでも
かの者を呼び戻すことができるなら
わたしはどれほどの祈りをも
惜しまぬだろうに


もはやなすすべなく
涙振り絞り
おまえを見送るだけなのか


ああ
若き命


共に生きた日々は
あまりにも短く
夢の残像は
まばゆく目を射る


痛ましきかな
哀しきかな
                                  
今 遥かなる空を仰ぎて
胸ふさがるほど
おまえの死を悼まん


わが股肱の綺羅星よ