紅 椿
ほろほろと
こぼれ落つるや
紅の花
風が枝を
揺らしもせぬに
ひとつ
また ひとつ
夢の合間の
命を終えて
舞ういとますら
持たぬまま
ぽとり、とな
それでもなお
しめやかな地に
燃えのこる焔(ほむら)の色
いとしい御名を
綴るように
声なき文字のきわやかさ
ほろほろと
こぼれ落つるも
紅の花
一途に咲いて
一途に散りて
雨に晒せど
まだ褪せず
ひたぶるに
尽きせぬ想いと
化する花