朝顔の斎院

― 清らかなる夢 ―


折りに触れ
源氏の君が親しう文を交したる
高貴な姫君あり


美しく教養高く
心ざま深きご様子を慕い


朝顔の花に寄せ
幾度も想い綴るも


気づかぬふりにて
さらりとかわしたるは
いかなるゆえか


光る君の
数ある恋のうちのひとつとして
憂き目に流さるることなど
望みはしない


それよりも
おだやかに四季を愛で
風情ある歌や文にて
こころ慰め合うことをこそ
ささやかな絆となさんと


騒ぎたる胸鎮めて
涼やかに微笑める姫君の清々しさよ


年経て
加茂の斎院に立たれし後は
すでに神に仕える身


いかなる恋の手も
届くこと叶わず


頼りなき朝顔の茎


なれど
けして靡かぬ
しなやかな強さ


差し伸べられたる腕に
つと絡まりて
歓びに哀しみに揺れまどい
現世の色に染まり行くを拒み


ただ誇り高き真の愛を
胸の奥にひっそり育まんと


それこそを夢として
凛と生きて行かんと


その切なる想いの深さ
源氏の君は察したもうか


神の御前に手を合わす
冴え冴えたる横顔


まなざしも気高き
朝顔の姫君