秋の雨



まるで
待ちかねていたように
秋の雨が降り始める


わずかに残っていた
名残の微熱を
静かに大地へと流して


季節のうつろいを
迷わず塗り替えて


秋の雨は
淡々と降り続く


とらえどころなく
けれど
とめどない物思いが


こころの淵から
次々あふれ出てきて


ころんと
膝を抱えたまま


絶え間ない雨音の
ささやきに包まれる


泣かないで
泣かないで



いいえ
泣いてなんかいない


熱くなりそうな
まぶたの裏に
ぎゅっと力をこめれば


今度は


泣いてもいいよ
泣いてもいいんだよ
、と


秋の雨は
しんなり冷たいのに


わたしの涙を
許してくれるほど
さわさわと優しい


雨音のせいにして


抱えた腕に
そっと顔を埋めてみた


あっけないくらい


涙が
心地いい