オニギリ



「はい」
 差し出されたのは、オニギリ。大きな盆に取り残された2つだけのそれは、既に他の者には配り終えたことを示している。
「へえ。オレにもくれるワケ?」
「余ったから」
 ぷいと、顔を背け、そっけなく応える。
「さんきゅ」
 その態度に何の反応も示さず、あっさりと礼を述べる。
「なんで?」
「ハァ?何が?」
「なんでもない」
「変な奴」
「あんたに言われなくないんだけど」
「ハイハイ。申し訳ありませんね」
 褐色の腕は、オニギリに手を伸ばす。親日家でもある彼の、好きなものだ。
「うまいなあ」
 皮肉屋も、このときばかりは素直に感嘆した。
 その様子をじっと見つめる視線に気づき、顔を上げる。そして、ふと気づいたように口を開いた。
「おまえさあ。なんでオレにこうかまってくれるわけ?」
「アンタ。なんでアークエンジェルを助けてくれたの?」
 同時だった。
 皮肉屋は、吹き出して笑う。
「何よ。笑うことないでしょ」
「いや、わりぃわりぃ」

 そして、手にしているオニギリをたいらげると、指についた米粒をひとつひとつ丁寧に舐め取り、ひとつ息をついた。
「この前言ったとおりだよ」
「え?」
「そっちは?どうしてオレを避けないワケ?
これでも、苦労してんだぜ?解け込むのにサ。まあ、みんな平和な奴らだから、あんまりにも対応が良くて、こっちがびっくりだけどな」
「そんなの、分かんない」
「ま。いいけど?」
 そして、ひとつ残ったオニギリを手に取る。
「これが最後の食事にならなけりゃいいけどな」
 ぼそり。
「え?何?」
「いーや、なんでも。うまいってな、そう言ったんだよ」
「ふーん」
「さて、と。続きをやるか。うまいメシも食ったし?ごちそーさん」
「ありがとう」
「は?」
「アークエンジェルを助けてくれてありがとう。そう言ったのよ」
 再度、彼は笑う。
「何がおかしいのよ!?」
「いや。そうじゃねえって。おまえも、アークエンジェルのクルーだなあ、って思ってさ」
「どういう意味?」
「そういう意味。ドウイタシマシテ。また、ソレ食いたいから、よろしくな」
 納得できない表情のままの彼女を残し、彼は立ち上がった。


END



・・・とうとう書き始めちゃいました・・・。
SEEDのSS・・・。
ハマってんなあ、自分。
相変わらずのヘタレですが、挿絵なんぞラクガキの延長上で入れてみたり・・・。

これは、宇宙行く前に、ミリちゃんがオニギリの盆を持っていたワンカットからのものです。
親日家っていうのは、裏の裏の設定の、ディアッカが日舞を趣味にしてるってところから。(笑)

ディアッカの言っている「この前」は、そのうちマンガで描きたいなあ、と思っているのです・・・。
しかも、言わなそうな「最後の食事」と、思われる方がいると思います。
私は、結構ディアッカって、兵士ってもんは死ぬもんだって思っていると思うんです。ただ、それをふざけて、悲観的に見せない。って気が。
夢見てるって、自分でも思ってますが。(笑)


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