飛鳥杏華の気まぐれモノローグ

<1998年>

12月8日(火)

 ついに入稿の日を迎えた飛鳥…。しかし、まだ原稿は仕上がらない…。再録中心なので甘く見ていたせいだろうか? 残り3日で9ページの漫画を下描き残り半分から仕上げるというのは、やはり不可能だったのか? 飛鳥、究極(?)の大ピンチ!

 2日、「犬夜叉」だが、前半手こずったニセ水神との戦いも、あまごいの鉾奪取を機に見事な連携プレーで一気に終結した。名主の息子・太郎丸の依頼を受けて颯爽と水神退治に向かったときに、役者が揃ったなという印象を受けたが、今回の戦いぶりはまさにそれを確信されるものであった。

 不思議な力を持つかごめの矢、妖怪退治の知識と飛び道具・飛来骨を操る珊瑚、接近戦向きで鉄砕牙を持つ犬夜叉、冷静で参謀的な役割を果たすとともに、厄介な奴をまるごと吸い込む風穴の弥勒、戦力としても乗り物としても使える雲母、ときどき役に立つ七宝(汗)、危険度探知機の冥加…。(笑)

 ただ、ニセ水神を退治したあとの展開がちょっとあっさりしすぎていて、ページ数が足りなかったのかなという印象だ。弥勒がいまだに恐喝などをして稼いでいることがわかったあたりは、なかなかいいが…。(珊瑚が弥勒の行状について尋ねているのは、少しは弥勒のことを気にとめているからなのだろうか? そこまで好意的には読めないかもしれないが…。笑)

 前にも書いたが、このパターンでしばらく活躍が続くと、非常にアニメ向きの作品になってくる。「犬夜叉」のアニメ化については賛否両論あるだろうが、私としては静観したい。今は原作の行方が楽しみだ。

 さて、この日は下描きの続きをやった。前日は頭痛のために描けなかったので、前々日につっかえたコマからのスタートだった。しかし、仕事中に構図を考えたにもかかわらず、いざ原稿用紙に向かうと思ったように描けない。結局何とかなったものの、ここでのロスは痛く、4ページ目の途中までしか描けなかった。(汗)

 3日、1日付けで人事異動があった関係で歓送迎会の日程が詰まっている。この時期はつらいところだが、職場の交流を無視するわけにはいかない。この日はその1日目だった。結局、帰宅したのは23時過ぎになり、原稿にも向かったが、酔っていてまともな絵が描けない状態だったため2コマで断念した。

 土曜日の大阪行きを前にして、このあたりのロスはつらい…。大阪行きをあきらめるというのも1つの手だが、オフ会の際に同人誌の販売を頼まれ、すでにOKしているという理由もあって、できるかぎり行かなければならないという事情もある。ほんとにつらいところだ…。(汗)

 4日、歓送迎会の2日目だ。この日は比較的早く帰宅できたが、翌日の準備もある。オフ会の格闘カルタ大会のための賞品を選別してバッグに詰め込まねばならない。頼まれていた同人誌も忘れてはいけない…。

 原稿にも向かったが結局、5ページ目(2作目の1ページ目)の途中までしか描けなかった。翌日の出発時刻を考えると、無理できなかったのだ。その代わり、ノートパソコンを持参して、行き帰りの新幹線の中で文章原稿を打つことにした。再録する各作品の執筆当時のエピソードや編集後記の原文だ。少しでも進めておかないとかなりやばい。本音を言えば、大阪行きをやめても苦しいのだが…。(汗)

 5日、10時前の新幹線で大阪に出かけた。オフ会の中心メンバーとはすでに顔見知りなので、そんなに迷うこともなかった。会場そのものも、かつて一刻会の集会で使った場所なので、余裕だった。

 例によって、妖しい集団の待ち合わせという雰囲気だったが、吹田駅での2次待ち合わせで状況が少し変わった。今回の最年少とおほしき参加者が保護者(?)に連れられてやってきたのだ。中1の女の子である。中学生も3年になるとかなり大人びてくるのだが、中1ではまだまだ子供の面影がはっきりと残っている。初々しくてかわいい。(妙な意味ではない。ほんとに「かわいいなー。」と感じるのだ。笑)

 カルタはまず、練習を1回やって強さのレベル分けをした。私は「格闘歌カルタ」のCDは持っているが、当時のカルタつきを買っていないので、カルタ自体を見たのはこの日が初めてだった。それでも中級になり、そこでは結構取ることができた。1回だけ、上級に昇格したが、レベルが違いすぎる。上級では1枚しか取れなかった。(汗)

 合計、4回のラウンドが終了し、表彰式だ。レベルごとに倍率をかけたりしてないので、それぞれのクラスでいかに枚数を取ったかが成績になる。そういう意味では、上級に入ってしまった人は力があっても枚数が取れないのでかわいそうだった。上級では1枚しか取れなかった私が、第3位になってしまったのだから…。(申し訳ない。汗)

 さて賞品だが、困ってしまった。アニメ絵のものにはほとんど興味がないのだが、原作絵のものは自分が持ってきたものしかない。まさか、自分で持ってきた「らんま」のタペストリーを持って帰りますと言うわけにもいくまい。(笑) 結局、ブルマー姿の女らんまと八宝斉の描かれたセル画(大判)をもらうことにした。(いずれ、別のイベントの賞品等に使えるだろう。)

 カルタ大会のあとは梅田に移動した。梅田での2次会までの時間つぶしに大阪のまんだらけに寄った。私は2次会に参加する予定はなかったが、せっかく大阪に来たのだから、のぞいてみたいという気持ちがあって同行した。賞品の大判セル画がバッグに収まらないので、紙袋が欲しかったという事情もあった。

 しかし、大阪の店舗はやはり勝手が違った。いつもなら、掘り出し物をすばやく見つけられるのに、この日は他のメンバーに先を越されてばかりだった。だが、小学館コミックフェアの紙袋やしおり、カードカレンダーなどがガラスケースの中に大量に置かれているのを発見したのは私だった。

 大量にあった紙袋はすでに持っているものだったが、その下に1枚だけチラっとのぞいている黄色い紙袋が気になったのだ。案の定、まだ持っていない紙袋(めぞん)だった。それと、東京の店舗では見たことがない「らんま」のテレカがどうしても心に引っかかり、普段なら買わない値段だったが、これを最後に買った。帰ってから調べると、案の定珍しく、特集を組んだ一刻会の「そると」11号にも載っていないテレカだった。この2つが大阪での大きな収穫と言えるだろう。このあと、20時前の新幹線で帰京した。

 6日、帰り着いてからが勝負だ。まずは下描きの続きだ。漫画が終わったら、表紙、裏表紙、中表紙の下描きにかからねばならない。むしろ、こちらの方が落とせない原稿だ。描き下ろし漫画は、無理なら減らしても何とかなる。しかし、表紙、裏表紙は描かないわけにはいかない。

 それでも、予告で描き下ろしを加えると言った以上、妥協もしたくなかった。最初は16〜20ページクラス1編を予定していたのが、ショートギャグになってしまったこと自体、負い目を感じているのだ。これ以上は減らしたくなかった。

 そういう意味では、少しでも作業を続けたいところだったが、最後まで体力が持つかどうかを考えると、この日から貫徹というのは無謀だと思った。大阪日帰りで疲れてもいる。結局、午前5時まで作業を続けて一旦睡眠をとり、午前10時から再開することにした。この5時間がどう後になって影響するか気がかりではあったが…。

 さて、再開した下描きだが、思った以上に時間がかかった。漫画の下描きを終えたのが15時過ぎ…。表紙、裏表紙の下描きは17過ぎだった。さらに中表紙だが、ここで最初の妥協をすることになる。中表紙には、HPの一刻会ホームページ−飛鳥サテライト−でも画像を展示している「友菱57号」の表紙に使用した雲竜あかりのイラストを転用することにした。

 このイラストは、自分でもすごく気に入っていて、いつか再録に使おうと返却してもらった原稿の第1号だった。そういう意味では、収まるべきところに収まったとも言える。さらに、ページ繰りの関係で描き下ろし漫画の直前に1ページが必要となることから、同じく「友菱71号」の表紙に使用した犬夜叉とかごめのイラストを転用することにした。

 続いて、17時半からペン入れとベタに入った。今度は表紙からだ。インクが乾くのを待たないと先が描けないところまでくると、乾くのを待つ間に次のページを並行してペン入れする。3ページを並行して回すというシステムで作業を進めた。

 ペン入れは、比較的スムーズに進んだ。それでも、これまでの遅れは取り戻せない。予定では、この日(正確には7日明け方まで)の作業でペン入れとベタを終えなければ、残るトーン貼りとネーム(台詞)貼りが間に合わない。ネームは最悪の場合、手書きも可能だが、トーンを貼らないわけにはいかない。

 ところが、午前6時までかかってもペン入れを終えることはできなかった。(汗) 猛烈な睡魔に襲われ、右手中指のペンダコにもかなり痛みが走った。予定では貫徹することになっていたのだが、もうダメだった。翌日は絶対貫徹だ。そのためにも3時間だけ睡眠をとることにした。

 7日、もう執筆はこの1日しかない。ちなみに、7日と8日はすでに休暇を取得済みだ。入稿は8日の20時までは可能だが、8日には各再録作品の初出掲載誌の紹介や当時のエピソードの文章ページを作らねばならない。ただ再録するだけでは芸がないから、精一杯やれることはやっておきたいのだ。これが12ページ分(1作品について2ページずつ)となる。もっとも、最後の最後には落とす切り札となる原稿ではあったが…。

 さて、ペン入れとベタ(修正も含む)だが、後半に来て疲れからかペースが落ちてきてしまった。20時過ぎにようやくトーン貼りに入ったが、漫画の最後の数ページはまだペン入れとベタが残っていた。

 表紙と裏表紙のトーン貼りははすぐに終わるだろうが、漫画は貼る箇所が多い。とても一筋縄ではいかない。いつもなら、地道に1ページずつ仕上げていくのだが、それではトーンを出したりしまったりする時間がもったいない。ロスを最小限にするために、あらかじめ同じとわかっているトーンを一気に貼っていくことにした。いつもなら、コテコテとトーンを貼るところも極力抑えてみた。それでも、あまり時間の短縮はできなかった。(汗)

 作業が深夜に及んだところで、まず、再録作品の初出掲載誌の紹介とエピソードの文章12ページ分を落とすことにした。ギリギリまで漫画を描いて、あとは目次と編集後記と奥付を作るというかたちだ。ネーム貼りも断念して、今回は手書きにすることにした。それで間に合うかどうか…? いよいよ、最後の勝負だ!

 8日、朝になってもトーンはまだ漫画9ページ中2ページ程度だった。ペン入れとベタは一応終わったが、最後の1編の4コマ2ページの修正は終わっていなかった。ここまできたところで、ちょっと弱気になったのだ。この4コマは落とすか…と。だから、修正に時間をかけるのをやめて他の2編(計7ページ)の完成を急ごうと…。

 だが、さらに状況は悪化する。1作目の4ページはほぼ完成していたが、2作目の3ページは結構細かい。刻々と入稿締め切り時刻が迫る。17時を過ぎたところで、ついに2作目も落とすことを決意せざるをえなかった。目次等の作成時間を考えるとやむをえないと…。

 さて、そう決意すると早速ノンブル(ページ番号)貼り作業に入ったのだが、これにも予想外の時間がかかってしまった。というか、完全に自分の読み違いだ。再録作品の122ページ分は前のノンブルをはがして貼り直さないとならない。これが結構時間がかかったのだ。中にはしっかりと貼り付いていて容易にはがれないものもあって、これだけで締め切り時刻が迫ってきてしまった。

 これはとても20時までに残りを仕上げるのは無理だ。いよいよ覚悟を決める…。こうなったら潔く…印刷所に頭を下げて待ってもらおうと…。(どこが潔くじゃ!? 笑) だが、相談はしてみるものだ。20時前に連絡を入れると、とりあえず翌朝1番(9時)まで待ってくれるということになった。

 これで道が開けた。あと12時間以上ある。ここでそのまま作業を続けていれば、それほど苦労することもなく入稿できたに違いない。ところが、この12時間の誘惑が飛鳥を地獄へと導くことになる。それだけあるなら、落とす決意をした2編の漫画を復活させようと…。さらには、その前に落とす決意をした文章12ページも…。

 こうして、作業は9日へと突入して行く。が、今回の区切りはここまでだ。この先、さらに一波乱あるのだが、それは次回のお楽しみということにしておこう。更新が2日遅れた理由も含めて…。

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