飛鳥杏華の気まぐれモノローグ

<1998年>

8月18日(火)

 コミックマーケット54も無事終了! いや、かならずしも無事とは言えないが、何とか今回は危機を乗り越えた。るーみっく系は全体的に売り上げが増加したような感じ…。「犬夜叉」の人気が徐々に盛り上がってきているという確かな手応えが感じられた。

 12日、久々に「犬夜叉」のない水曜日…。週刊少年サンデーはお盆進行でお休みなのでしかたがない。そこで、鬼畜な企画、先着30名様限定特別付録の作成にとりかかった。

 まずは、描きかけのかすみおねーさんのイラストを完成させなければならない。一旦しまったトーン袋を引っぱり出してきて、トーン貼り作業をはじめる…。とりあえずこの日は、3割程度のトーンを貼って終わりにした。

 というのも、翌日、「REAL LOVE」Vol.3の受け取りとため、休暇をとったからだ。受け取り時刻までにたっぷり作業はできる。せっかく、修羅場から解放されたのに、無理することもないだろうと思ったのだ。(ちょっと不安だけど…。汗)

 13日、休暇をとって朝寝坊…。だが、8時半には目覚めてしまう。午前中はイラストのトーン貼りに専念した。本の受け取りは、時刻指定されたわけではないが、入稿があれだけ遅かったのだから、15時過ぎあたりに行くのが常識だろうと考えていた。あまり遅くなると、印刷所の職員やアルバイトはコミケ会場に前日搬入に行ってしまうから、遅すぎてもよくないし…。

 ところが、15時前になるといきなり強い雨が降り出してしまった。車を持っていない飛鳥は、徒歩で買い物用カートを転がして行く予定にしていたから、こいつはたまらない。本が濡れたら一大事だ! 急な雨だから、印刷所の方でビニールに包んだりはしてくれてないだろう。

 おろおろしながら、いろいろと自衛策を考える…。とりあえず、印刷所に電話を入れ、何時まで大丈夫かを聞き、少し待ってみることにした。それでも天候回復の見込みがなさそうなら、ビニール製のテーブルクロスを持っていって、印刷所の軒下で包もうと考えた。

 しかし、雨はそれほど長くは降らなかった。16時過ぎには上がり、西日がさしてきた。この機を逃すまいと受け取りに飛び出し、無事新刊本が自宅の敷居をまたいだ。まずは、返却された原稿のチェック。全部あることを確かめると、中味の確認だ…。

 表紙の色は、表紙入稿直後からちょっと懸念していたのだが、懸念したとおり色が濃く出てしまった。もともと、桔梗というキャラは影のあるキャラだから、顔の肌色の影の部分のコントラストを意識的にきつめにしたのは確かなのだが、ベース色そのものが濃かったようだ。

 それと、表紙入稿の際、蛍光ピンクを使うかどうか尋ねられたのだが、袴の赤をくっきり出したいから使わないということを伝えた。これの影響で背景も含めて全体的に赤が強くなっているようにも思える。その代わり、確かに袴の赤は見事なまでの深紅に出してくれた。

 さて、本誌ができたからには、付録の方もがんばらなくてはならない。とりあえず、かすみおねーさんのイラストをこの夜までに完成させた。翌日、職場のコピー機を昼休みに借りて、縮小コピーだけとらせてもらって、その夜から15日の朝までに前フリの簡単な漫画1ページを描き、15日の夕方、宿にチェックインしてから近所のコンビニでコピーをとるという計画を立てた。

 14日、いつもの起床時刻の6時より前に目が覚めた。屋根に当たる雨音のせいだった。飛鳥は出勤だから参加しないが、コミックマーケット54の第1日目だ。が、この雨音を聞いたとたん、飛鳥は不謹慎にもガッツポーズをとってしまう。ざまぁみろ、徹夜組め!

 コミックマーケットでは、徹夜の行列は禁止されている。行列をはじめていいのは、当日の午前6時からだ。にもかかわらず、徹夜する連中があとをたたない。テントを張ってる奴もいるし、中には徹夜そのものが目的で、入場せずに帰る輩もいるという。治安上の問題から、集まった連中を追い払うわけにもいかない。その場所を追い出しても、別ののところに集まって、近隣の迷惑になりかねないからだ。

 それが、突然の雨…。コミケ当日は晴れるという伝説もあったから、テントまで用意している周到な連中はともかく、多くの徹夜組が雨に濡れるにちがいない。もっとも、これで懲りるような連中ではないと思う。次回以降、テントが増えなければいいのだが…。(汗)

 さて、予定どおりに職場で縮小コピーをとって帰宅し、1ページ漫画に着手した。並行作業として、表紙と裏表紙の作成も行う。が、午前3時までかかって、完全には作業を終えることはできなかった。あとは、翌日回しだ。うーむ、また修羅場が戻ってきてしまったぞ。(汗)

 しかし、それはまあ私事だからいいとして、この日の朝、ちょっと看過できない情報が入ってきた。13日のコミックマーケット54の前日設営の際、発火装置を使用した放火騒ぎが会場の東京ビッグサイトで起こったのだ。明らかにコミケ開催阻止を狙った犯行で、以前から脅迫状や火災報知器のいたずらなどがあったのだが、いよいよ来るところまで来てしまった。

 コミケに対して不満を持ったり批判をしたりすることは、個人の主義主張の問題だから別にかまわないと思うが、こうしたテロ行為に訴えるのは単にコミケだけの問題でなく、社会的、全世界的に許されないことだ。東京ビッグサイトがもし火災で消失していたらどうなっただろう? コミケのあとにもいろいろな企業や団体のイベントが目白押しなのだ。それらが全部中止となったら、大きなマイナスの経済効果が発生することになる。

 ただでさえ不況の日本だ。いや、今や日本の不況が世界中の経済に影響を与えているのだから、これは全世界的な経済損失となりかねない。だから小渕内閣よ、経済再建のためには、何よりもまずコミケを守ることが重要だぞ! 次回からは警察官と自衛隊員を警備に投入してくれ。(こらこら…。汗)

 15日、できれば午前中の早いうちに原稿を作り終え、昼前からでかけたかったのだが、結局、出発は14時過ぎになってしまった。宿泊のための着替えやら身の回りの荷物と売る本は、ちょっと1度に運ぶのはつらい。いや、つらくなってきたと言うべきか…。そこで、買い物ついでに宿に寄り、まず身の回りの荷物を部屋に置いて一旦帰宅し、改めて本だけ宿に持っていくことにした。

 買い物というのは、要するにお宝探しだ。というのも、一刻会のコミケ宿泊会では恒例のプレゼント交換会というのがある。そのためにるーみっく関係の小物をあさりに行ったのだ。しかし、結局買ったのは自分のコレクションにするものばかり…。何のために行ったんだか…?(汗)

 そのバチが当たったのだろうか? 本を運ぶときに雨になってしまった。ビニールのテーブルクロスで箱を包んだので水濡れの問題はなかったが、このテーブルクロス自体、結構重いので体力的には大きな負担となった。(汗)

 宿に着くと、まずは付録のコピーを近くのコンビニで行った。ついでに夕食も買って帰ったのだが、付録作りでなかなか食べる暇がない。とうとう、何も食べないままプレゼント交換会の時間になってしまった。(最後には食べられたけど…。汗)

 その後、みんなでわいわいがやがや…。1日目、2日目に参加してきた連中は、戦果を見せ合ったりしている。そこで見せられたのが、非常にすばらしい出来の犬夜叉本だった。るーみっくイベント・情報館でも「その他」の方に名前を載せた「厘印」というサークルの本で、とにかく絵がうまい。内容もなかなかだ。悔しいけど、「REAL LOVE」Vol.3は負けてると思った。

 2日目に出ていたのは、このサークル自体がるーみっく専門でなく、少年サンデー系の作品関係という位置づけだったからだろう。そういう中に「犬夜叉」を扱うサークルが増えてきたようだ。それはそれでうれしいが、るーみっく専門でないところにこれだけの本を作られてしまったというのが、余計に悔しい…。

 悔しいが、出来のよさはしっかり評価したい。見せてもらったところによると、あまりイベントにも出ていないようだし、委託先もなさそうなことが書いてある。翌日、委託で出ていれば是非とも手に入れたいのだが…。

 16日、いざ出陣だ。一刻会会長の車で他の売り子要員たちとともに東京ビッグサイトに向かう。当初の予定では、会長が準備会スタッフをしている関係で車が地下駐車場に入るため、事情を話して最初から館内のガレリアと呼ばれる通路で待たせてもらうことになっていた。それで了解済みで、他のスタッフに何か聞かれたら会長の名前を出せばいいという話だったのだ。

 ところが、東京ビッグサイトに着いてみると、それは許可されなかった。例の放火事件の影響で厳戒体制に入っており、スタッフ以外は何人たりとも時間前に入れるわけにはいかないということだった。事情はわかるから、我々も納得し、ちょっと遠回りになってしまったが、例年使用している外のサークル入場口へと向かった。

 さて、サークル入場の時間になって自分のブースへ向かう。一刻会や飛鳥鳳凰堂のある東1〜3ホールに行くには、まず東4〜6ホールを通過して行く。こっちは冷房が効いていてよかったのだが、肝心の東1〜3ホールは全然冷房が入っていなかった。入るなり、む〜っとくる暑さ…。その後、最後までほとんど涼しいという感覚を味わうことはなかった。(いやー、東京ビッグサイトに移ってから初めてだよ、こんなに暑かったのは…。汗)

 そしていよいよコミックマーケット54最終日がスタートする。立ち上がりはいつものとおり閑古鳥だ。もう、るーみっくが1番という人は少ない。まずは、行列のできる人気サークルにみんな走る。るーみっく系が忙しくなるのは昼近くからだ。そこで、早めに買いに出させてもらって、るーみっく系を一通り回った。

 やはり、「犬夜叉」を扱ったものが増えている。何だかんだ言いつつ、「犬夜叉」も人気が出てきているのだ。個人的な好みもあるだろうが、やはり今連載している作品が人気なかったら悲しい。そういう意味では、喜ばしい傾向と言えるのだろう。

 さて、売れ行きだが、前半の立ち上がりはよくなかった。いつもより悪かったかもしれない。何とか、今回でVol.1(持ち込み数=17冊)を完売させてしまいたいと思っていたのだが、とても厳しいペースだった。

 確かに「REAL LOVE」Vol.3は、余裕がなかった分、出来として落ちる面があるのは、自分でも否定できない…。原作の1部を変えて笑いをとるコテコテのパロディばかりになってしまったし、そろそろ読み手がこのパターンに慣れてきて、先が読めるようになってしまったという指摘も仲間内からあった。なるほど、そのとおりかもしれない…。

 ところが、昼過ぎになると途端にペースが上がった。新刊のVol.3がいちばん売れるのは当然だが、以外にもVol.1の売れ行きが時間がたつにつれて伸びてきた。そしてついに、Vol.1は発行からまる2年、5回目のコミケで全200冊を完売した。(うれしいんだけど、なくなってしまったというのが淋しくもある。妙に複雑な心境だった…。)

 結局、最終的にはVol.3が80冊、Vol.2が23冊、Vol.1が17冊(完売)、委託販売の「三日月の恋」が14冊(完売)…。161冊持ち込みで、実売数134冊という過去最高の成績となった。新刊の初売りとしてもVol.1の73冊を上回り、まずはホッと胸をなで下ろした。

 今回は、スケッチブックを頼まれることはなかったが、激励の言葉をもらったりした。これが何よりもの差し入れだ。女性客から「作品が好きです。」と言われて、「いいんだろうか?」とかえって戸惑ってしまったりもしたが…。(最近、下ネタも多いのになぁ…。笑)

 今回、るーみっく系は全体的に売り上げが少し上がったのではないだろうか? るーみっくイベント・情報館でも紹介している鏡あかりさんの「魚のスープ」は、ほとんど客の絶える間がなく、持ち込んだものがほとんど完売状態となった。一刻会も持ち帰る本は「そると」12号が6冊だけという成績だった。

 これはやはり、るーみっくオンリーとは別に、少年サンデーファン系で「犬夜叉」にハマり出した女の子の増加が影響しているようだ。今回、そういう客が昼以降、カタログのサークルカットにつられてるーみっく系の列に流れてきたものと推測される。というのも、鏡あかりさんの「魚のスープ」に委託で出していた逸見五美さんのラミバッヂのうち、子供である七宝を除いて、男性キャラの方が素早く完売したという事実があるからだ。これが女性客パワーの成せるわざでなくして何であろうか?

 そういう意味では、今後、るーみっくオンリー系と少年サンデーファン系の両方で盛り上がって行ける可能性が出てきた。変に争って敵対するようなことなく、うまく協調していけると、お互いにとってよいと思うのだが…。

 17日、宿をチェックアウトした後、有志を募って新宿タカシマヤで開かれている「小学館 コミックジャングル展」に行った。飛鳥は2度目だが、前回、買いのがしたものもあるし、全然無意味というわけではない。その辺はしっかりとぬかりなくやらせてもらった。(笑)

 昼食後、4人になった面々は当然のごとく雀荘へ…。(笑) 成績は聞かないでくれ…。(…というような成績なんだ。笑) ちなみに、帰宅は20時頃となった。

 18日、例年ならこの日も疲れ休みということで夏休みをあてるのだが、今年は執筆が苦しかったので、すでに夏休みを使い切ってしまった。やむなく、出勤だ…。それでも、コミケ前のそわそわした集中力のない状態からすれば、まだまともだった。(笑)

 帰宅後は、ただちにコミックマーケット55の申し込み準備を整える。冬の申し込みはいつも締め切りが早い。今回も19日の消印まで有効というハードスケジュールだから、この日に書かないわけにはいかない。

 そんなわけで、ここの更新作業がちょっと遅れてしまった。一旦は、疲れているから1日遅らせようかとも思ったが、アクセス数が結構増えていたので、これは何とか今夜中に更新しなければという気持ちになってがんばった。

 次回からは、また平穏な日々に戻ることになる。書くネタが急になくなりそうで怖いが、その分、別のコーナーなどを手がけて行こうかと思う。とにかく、それまでに疲れをとらないとな…。だんだん、とれにくくなってきてるけど…。(汗)

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