飛鳥杏華の気まぐれモノローグ

<1998年>

8月4日(火)

 何とか「REAL LOVE」Vol.3は入稿完了! それにしても苦しい日々だった…。最後にきて少し好調になったかと思ったら、一転してドツボ…。好不調の波の激しい1週間だった。

 7月29日、「犬夜叉」だが、やはり来た…。最初からいやな予感はしていたのだが、パロディ同人を暗に批判するような展開がついに…。これで、お盆進行の合併号だから次週がコミケ前最後の回となる。時期も、しっかり合わせてきているところが何とも…。(汗)

 結果として、桃果人は本当の仙人ではなかった。もともとは普通の人間で、仙人のもとで修業をしていた男だ。ある程度仙術を会得したところで、手っ取り早く仙人になるには仙術を会得した仙人の肉を喰うのがいちばんと知り、師匠を喰ったのだ。

 この展開が、私にはずずずーんと響いてきた。手っ取り早く人気(同人)作家になるには、原作者が長年かけて会得してきた技をまるまるまねて自分のものにしてしまうのがいちばん…。そんな意味が潜んでいるように思えて、グサッときたのだ。となれば、原作の1部を変えることで笑いをとるコテコテのパロディを展開している私は、名指しされたも同然だからだ。(汗)

 コツコツと自分で技を会得せずに、師匠をまるごと喰らってしまうという暴挙…。他人の技を安直に自分のものにしてしまうというやり方…。そういうものに対する批判がそこにはあるように思う。

 もともと、高橋先生はパロディ同人について「あまり建設的なことではない。」という考えをお持ちのようだ。同人活動そのものを否定しているとは思わないが、評価に値するのは、あくまでオリジナル創作にかぎってということなのだろう。

 私もオリジナル作品をめざしていないわけではない。構想はいくつかあるのだ。しかし、それを実現する技術がまだないし、何と言っても魅力的なキャラや設定をつくるのが難しい。これは恐らく、漫画を描く上で最も難しく、重要なことだろうと思う。同人の中には絵だけならプロよりうまい人も結構いるが、この能力を持ち合わせているかどうかがプロとの決定的な差なのだと私は思う。

 そういう意味では、苦労して考え、作品の進行とともに磨き上げてきたそうしたものを勝手に使われた上に、自分の作品だなどとでかい顔をされたら、確かにたまったものではないだろうと思う。

 パロディ同人の作品は、あくまでまがいものだ。作品中に出てきた仙人の不老長寿の薬というのは、その辺をなぞらえたものなのだろう。桃果人には、そこそこ効き目はあるものの、まがいものしか作れないのだ。それを飲まないと強く主張する犬夜叉の言葉は、パロディ同人の作品など読まないという意味をなすことになる。あくまで、本当にこの展開がパロディ同人のことを暗に示しているとするならばという仮定の話だが…。(汗)

 さて、その名指しで批判されたかもしれないパロディ同人はというと、トーン貼りの作業を進めていた。ノルマは18ページ目の終わりまでと設定していたが、この日は20ページ目の途中まで進んだ。思った以上の好調さだ。ここで貯金ができたのはありがたい。翌日の進行によっては、金曜日にトーン貼りが完了できるかもしれない。そうなればかなり楽になる。大いに期待は膨らんだ。

 30日、トーン貼りの作業は23ページ目の途中まで進んだ。いよいよ、金曜日中の完了が現実味を帯びてきた。もちろん、そのあとに中表紙とかすみおねーさんのイラストがあるし、ネーム貼りもしなくてはならないから終わりではないのだが…。(笑)

 31日、思いもよらぬ作業ペースの停滞…。残ったページのトーンから考えて、午前5時までなら残り3ページ半も可能だと思っていたのだが、結果として25ページ目の途中までしか行かなかった。24ページ目のトーンの種類と貼り方が気に入らず、何度も貼り直したのと、絵が気に入らずにコマ単位で描き直したのが大きなロスとなった。

 最後の方に描いた作品は、あせりや疲れのせいか絵がよくない。そのときは気づかなかったが、トーン貼りの際に改めて見ると、とても人前に出せないくらい下手な絵もあるのだ。それが自分には許せない…。あるコマは2度描き直した。ほんとなら、まるまる1ページ描き直したいところだが、さすがにそこまではできなかった。その辺にまだ甘さが残っているが…。(汗)

 8月1日、午後にはトーン貼りの作業が完了した。続いて中表紙とかすみおねーさんのイラストの執筆にかかる。そこへ、最後に残っていた依頼者からの原稿が届いた。なかなかうれしい出来だ。待った甲斐があった。

 それはよかったのだが、ここで新たな問題が発生した。ページ数が半端になってしまったのだ。数えると全部で本文51ページ。だが、印刷の面付け単位の関係で本文は4の倍数にしなければならない。要は、3ページ削るか、1ページ増やすかという選択だ。

 心情的には自分の原稿にしろ、他人の原稿にしろ、せっかく描いたものを削りたくはない。しかし、余裕があればともかく、この段階にきての1ページ増は、失敗すればすべてをダメにしてしまうかもしれない危険な賭けとなる。

 悩んだ末、その危険な賭けのために気力を奮い起こすことにした。さらにイラスト1ページ追加だ。しかし、これが結果的に裏目に出てしまった…。(汗)

 中表紙を含む3ページのイラストにとりかかった飛鳥だが、まず最初の中表紙でつまずいてしまう。以前、デザインそのものは決めてラフも描いたのだが、丁寧に描こうとするとどうも絵がうまくきまらない。急遽、絵柄を変えていくつかの構図を試してみるが、全然ダメだった。(汗)

 かすみおねーさんのイラストは比較的スイスイと進んだが、追加イラストのキャラや構図も決まらない。なぜか突然、大口小夏嬢を描いてみたりもしたが、構図として単調で、いかにも穴埋めに見えてしまう。これでは気に入らない。自分が満足できないようなもので、他人を満足させられるわけがない…。

 結局、午前5時までかかって、かすみおねーさんのイラストがペン入れ終了まで進んだだけ…。(汗) 実にもったいない時間をつぶしてしまった。これで、あとに残った漫画のネーム(台詞)貼り作業の時間がかなり厳しくなってしまったのだ。やはり、この賭けは危険すぎた…。ここに至って、飛鳥はついに3ページ減の決断を下した。

 2日、まずはページ割りを本文48ページで組んでみる。結果として、まだ完成していないかすみおねーさんのイラスト、自分の1ページ漫画の中で、いちばん内容的に落ちると思うもの1作、そして没覚悟で投稿してくれた投稿者のイラストの中から、いちばん出来が落ちると思うもの1枚を落とすことにした。

 残念だが、もうこれ以上の猶予はない。中表紙もイラストをあきらめ、表紙用CGのキャラ部分のみをモノクロ化し、網掛け処理したものを採用することにした。ちょっと安直に思うかもしれないが、もとから考えていた候補の1つではあったのだ。

 ただし、CGのサイズは若干縮小し、タイトルとの間の空いたスペースに桔梗の境遇をうたった短歌を入れた。これは、晴海が桔梗に対して言ったことそのもののような内容だが、短歌としては一応、私の作品だ…。(笑)

 わざわざ文語で旧仮名遣いにしている。もしかすると間違ってるかもしれないし、自分としてはかなり照れくさいのだが、これで見た目は結構きまった中表紙になったと思う。本文の内容とは、思いっきりくい違ってしまってるが…。(笑)

 続いて文章系の原稿のレイアウトと出力、そして貼り込みなどの編集作業一気にこなした。それでも午前0時までかかってしまう。漫画のネーム(台詞)の入力を午前1時まで少しやって床についた。

 3日、前日のうちにネームの入力が終わらなかったのは痛かった。この日の夜からの徹夜が最後の山場だが、どう考えてもネームが印刷できるまでに午前0時になってしまう。たった1晩で25ページのネーム貼りはかなりきつい。飛鳥の漫画はやたらとネームが多いから、なおさらだ。(汗)

 だいたい1ページ平均30分くらいかかるから、25ページなら12時間半かかる計算だ。徹夜では疲労で能率も落ちるから、午前0時からスタートしても午後になってしまうことになる。そのあとでさらにノンブル(ページ番号)貼りがある。かなり厳しいスケジュールだ。しかし、やるしかない…。

 ところが、いきなりネームの出力までに手間取って、40分遅れの午前0時40分からのスタートになってしまった。果たしてこの修羅場を無事闘い抜くことができるのだろうか…? いよいよ最後の攻防がスタートした。

 4日、前半は最初の遅れが取り戻せないまま、さらに遅れが累積するというよくない展開だった。しかし、午前4時を過ぎたあたりで遅れが吸収され、逆転…。1ページ平均が30分を切るペースに上がってきた。

 午前6時から9時くらいまでは一心不乱状態。時間がたつのがわからなかった。気がついたら9時になっていて、残りも3ページになっていた。ここで朝食を30分とり、残りに着手した。が、ここからがつらかった…。

 一旦ブレークが入ったのと、食事をしたこともあって、睡魔が一気に押し寄せてきたのだ。カッターでネームを切り抜きながら、上体がグラッと右前に傾く…。フッと意識が遠のいて、頭がこっくりとなる…。貼ろうとして左手に持ったネームを何を思ったかゴミ箱に捨てかけて、ハッと気がつく…。

 徹夜は何度か経験しているが、好きなことをしていてこういう状態にまでなったのは初めてだった。それだけ疲れている。それだけ、体が年をとってきてるのだろう。認めたくないが、認めざるをえないのかもしれない。(汗)

 しかし、ネーム貼りは午前11時半になんとか完了した。続いて一気にノンブル貼りに入る。こちらは単純作業だから速い。12時30分には、一応の作業が完了した。昼食後に入稿に向かうことを決め、最終確認に入る。と、ここで最後の試練が飛鳥を襲った…。

 机上のページ割りのときには気づかなかったミスが見つかったのだ。漫画の最終ページとイラストを見開きの組み合わせにしたページで漫画の中の絵とイラストの絵が非常に似通っているペアが1箇所できてしまっていたのだ。これはあまりにもまずい…。

 急遽、他のイラストと位置を差し替える。となると、目次を作り直さなければならない…。(汗) だが、もうここまできていれば余裕だ。あせりはなかった。ちょっと面倒だという気持ちはあったが…。(笑)

 そして少し遅い昼食後、入稿に出かけ、14時10分入稿を完了した。出来上がりは13日…。印刷状態の不安はあるが、本そのものはできるだろう。これで何とか責任を果たすことができた。昨年の冬、あんな言い訳のコピー誌を買ってくれた人たちに、飛鳥鳳凰堂の本に期待してくれてる人たちに対して、私の本に原稿を描いてくれた人たちに対して、そしてまた自分自身に対して…。

 帰宅後、ここの更新作業を進めようとしたが、一気に疲れが出て夕食までは何もできなかった。そのため、夕食後にこの「気まぐれモノローグ」を一気に書いたので、かなり大変だった。こういうときくらいは更新が遅れてもいいのかもしれないが、やはり入稿完了を1日も早く伝えたかったのだ。

 さて、気がつけばコミケも目前だ。コミケ後は、作りかけのコーナーの続きもやらなくては…。こちらも、期待してくれてる人がいる。飛鳥杏華に安息の日は…、やっぱり訪れそうにないな…。(笑)

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