飛鳥杏華の気まぐれモノローグ

<2002年>

6月11日(火)

 サッカーW杯の予選リーグは続く。ベルギーに引き分けた日本代表は、続くロシア戦でW杯初勝利! 初の決勝トーナメント進出が見えてきた。4年前とは雲泥の差だ。これで、新刊落ちは確定的だな。W杯本なら作れそうな勢いだが…。(笑)

 5日、初戦から一夜明け、新聞には「歴史的勝ち点1」の見出しが踊る。引き分けで歴史的と言ってしまうのは何とも情けないように思うのだが…。実際、この引き分けで、日本は次のロシア戦に負けると敗退が決まってしまう危険性が出てきた。歴史的なんて浮かれてる場合ではないのだ。だが、相性的にはロシアの方が勝ちやすい相手ではないかと思う。もちろん攻撃力も強く、守備も固いと言われているが、ベルギーほどの柔軟性はないように思う。逆にここで勝てば決勝トーナメント進出がほぼ決まるだけに、大切な試合になる。

 さて、この日の試合ではやはりロシアとチュニジアの対戦が気になった。日本にとって最良の結果は引き分けだが、そうはうまくいかない。結果的には下馬評どおりロシアが勝った。実際には結構苦しんだ末にチュニジアのミスから得点したわけだが、きっちり勝ってくるところはさすがといえるだろう。まったく勝てない相手ではなさそうだが…。

 それはそうと、驚いたのがポルトガルの敗戦だ。まあ、アメリカも結構手ごわいし、ありえないことではなかったのだが、立ち上がりからいきなりボコボコ点をとられるとは…。対戦相手をなめていたのだろうか? あまりチームとしてできあがっていない感じがした。対戦相手の顔ぶれを見て、予選リーグは調整練習というような感覚でいたのだろうか? だとしたら、随分甘い…。期待していたチームの1つだったのに、がっがりした。

 一方、期待以上のものを見せてくれたのがアイルランドだ。ドイツ戦終了間際の同点ゴールは見ていて熱くなった。さすがのカーンもロビー・キーンの気迫に最後は負けたような感じだった。こういう最後まであきらめないねばり強い戦いを日本もめざして欲しい。もっとも、こんどはできれば先制して欲しいが…。(苦笑)

 6日、初戦に負けた前回王者フランスは、この日が正念場だった。が、ウルグアイも甘くはない。レコバの技術はかなり高いし、ダーティーなプレーも多い。それに触発されたというふうにも見えなかったが、エースFWのアンリが一発レッドで退場…。結局は両チームとも決め手を欠いて得点なしの引き分けだ。この日もジダンは出場できず、フランスの予選敗退という予想もしなかった事態が現実味を帯びてきた。このままではジダンの出番がないまま敗退してしまう。カップヌードルのCMではないが、まさにジダンが地団駄である…。

 7日、この日の注目は何といってもイングランドとアルゼンチンの一戦だ。過去の因縁とか、いろいろ持ち出してメディアが煽り立てているが、そうでなくとも楽しみな一戦に違いなかった。ちょっとマスコミや日本の女性ファンたちのベッカムフィーバーには嫌気もさすが、プレーヤーとしてのベッカムは好きだ。どちらも魅力のあるチームだし、一方だけを応援できないつらさがある。かといって、引き分けではつまらないという思いもあるし、かなり複雑な気持ちだった。

 結果はイングランドがベッカムが決めたPKの1点をアルゼンチンの猛攻をしのいで守り切った。荒れるかもしれないという懸念もあったが、内容的にはほぼクリーンな試合となってくれた。特に後半のアルゼンチンの猛攻とそれをしのぐイングランドの守備との対決は非常に見応えがあった。守ってばかりではつまらないという考え方もあるが、守備もあそこまでくると魅せられる。フーリガンによる暴動も起きなかったし、まずはよかったというところだろうか…。

 8日、イタリアがクロアチアの粘りに負けた…。まあ、不利な判定が相次いで、審判に負けたという言い方もできなくはないのかもしれない。ここまでもちょっと納得がいかない判定がいくつかあったが、この日のイタリアはちょっとかわいそうだった。最初のビエリのオフサイドは、後に判定を下した副審自身が誤審を認めることになる。思えば、今大会でのイタリアの悲劇はこの試合から始まっていたと言えるだろう。

 この日はまた、初出場の中国がブラジルに対してどこまで健闘するかも注目していた。結局は得点できず、順当な結果(汗)になってしまった。しかし、負けた中国にもところどころに光る部分が見られた。ボールを持った際の反転と動き出しが非常に速いのだ。そこから結構チャンスも作っていた。その点はむしろ世界のトップクラスと言ってもいいくらいだ。ブラジルも結構面食らっていた感じだった。やはり将来怖い存在になりそうだな、中国は…。(汗)

 9日、日本にとって正念場のロシア戦を迎えた。前半は一進一退だったが、かなり危ないシーンもあった。生で見たときにはわからなかったが、スローで見ると戸田が思いっきりペナルティーエリア内でロシアの選手を引きずり倒している。審判に見られていたら完全にPKだったろう。それが見つからないというのは、ある意味戸田のテクニックと言えるのだろうか?(笑) 

 この日の守備はベルギー戦に比べるとかなり改善されていた。特に故障した森岡の代役となった黒マスクの宮本が事実上ストッパーとなってピンチを防いでいた。トルシエ戦術の要であるフラット3によるラインコントロールにこだわりすぎず、場面に応じて1対1で対応したりしていた。そして後半、稲本の決勝ゴールが生れる。乗っているときというのはこういうものだ。というか、その兆しはすでにレアル・マドリード戦で見えていた。

 あの雨の中のレアル・マドリード戦、1−0というスコア以上に何もさせてもらえなかったという印象の強い試合だったが、その中で唯一、稲本のプレーが光っていた。ぬかるんでボールが転がらず、パスが通らない中、稲本はボールをキープして前へ運ぶことができていた。このときから、状態さえよければ稲本は結構使えるぞと私は密かに期待していたのだ。が、密かに期待したのは失敗だった。あのときから声高に言っておけば、そら見ろと胸を張れたのにな…。いまさら書いても活躍を見たあとだから、信じてもらえないし…。(苦笑)

 結局、その1点を守りきって、日本は今度こそ歴史的な初勝利をあげた。ロシアは結局、主将でチームの要と言われていたモストボイが出場できなかった。が、誰がいないからという話になれば、日本だって高原を欠いているし、西澤は病み上がり、小野は半病人だ。どこの国もみんな誰かしら主力を欠いたりしている。きっちり結果を出せるチームを本番に合わせて作ることも実力のうちだと思うし、そのことを理由にして実力じゃ勝てなかったのにラッキーだったと言うのは正しくないと思う。

 稲本のゴールは確かにオフサイドくさく見えたけど、某掲示板に出ていた柳沢の足にボールが当たった瞬間の画像を見ると、オフサイドでないのがきっちりわかった。しかし、紙一重だったから、オフサイドと判定されてもおかしくはなかったし、その部分をラッキーと言うことはできるかもしれない。これで決勝トーナメント進出が大きく近づいた。次の試合までが待ち遠しいな…。

 10日、日本中が昨夜の勝利に酔ってるような報道があふれる。相変わらず大阪では道頓堀に飛び込む連中があとをたたない。一種の恒例行事と化してしまった。もう止められない…。水質等の危険が指摘されているが、どうせ飛び込むことはわかってたんだから、制止するより水質その他の安全対策を講じた方が現実的なような気がする。(川底のゴミはさらってあるらしいが…。) まあ、飛び込むことを公に認めてしまうことは、できない話なんだろうけど…。

 さて、この日は韓国がアメリカと対戦したが、引き分けに終わった。やはりアメリカは油断ならない相手だった。シドニー五輪で日本も痛い目に遭ったし、ポルトガルも苦汁をなめさせられた。韓国としては連勝してポルトガル戦前に決勝トーナメント進出を決定づけておきたいところだったろうが、この引き分けでかなり苦しくなってしまった。戦績的には日本と同じなのだが、残る相手を考えると…。(汗)

 この試合についてもう1つ語るならば、やはり韓国が同点に追いついたあとのスケートのパフォーマンスだろう。いろいろな見方があるだろうが、私は好きではない。政治や別のスポーツでの遺恨を持ち込むようなこと、それを連想させるようなことはどうにも気分が悪い。国民性の違いもあるので、絶対的に良い悪いを語ることはできないが、日本の選手が例えばフランスと戦って(シドニー五輪の柔道での篠原に対する判定問題を持ち込んで)柔道のパフォーマンスをしたとしたら、同じ日本人として非常に恥ずかしく思ったろう。

 ソルトレーク五輪では、日本も寺尾が無実の失格になっているが、悔しかったら同じ競技の別の大会で勝利して実力を示すべきと考えるのが、日本人的な考え方だ。日本には「江戸の敵を長崎で討つ」という言葉があるが、まさにそんな感じの例と言える。だから、日本人である私には、残念ながらどうしても好意的には受け取れないのだ。

 しかし、それは長い歴史によって培われてきた国民性というもので、韓国が受けてきた侵略や不利益の歴史を考えるとわからなくもない。ただこれから先、韓国が様々な分野で世界のトップをめざすなら、もっと余裕があった方がいい。受けた不利益に対して抗議をするのは悪いことではないが、違う場所で挑発的なことしても(自国の中では憂さ晴らしができたとしても)国際的に支持されることはないと思うし…。

 そして注目のベルギーとチュニジアの試合だが、予想外の引き分けに終わった。力的にはベルギーが勝るだろうと思っていたのだが、チュニジアも意地を見せた。これでベルギーは最後のロシア戦に勝たないと決勝トーナメントに進めない。逆に日本はチュニジアに負けても1点差なら決勝トーナメントに進めることになった。状況としては極めて有利になった。が、できることならH組1位で通過して欲しい。2位だと、いきなりブラジルだからなー。(多分)

 11日、フランスが1つも勝てず、1点も取れずに敗退した。ジダンを投入し、背水の陣で臨んだフランスだが、アンリの出場停止もあるし、ジダンも回復していないようだった。一方のデンマークは、本番に見事にチームを合わせてきた。この差がそのまま得点に表れたといってもいいのだろう。フランスは敗れるべくして敗れたと言える。それにしても、前回王者がここまでみじめに敗退するのは、何とも腹立たしい。いろいろな意味で残念だ。

 一方、粘りのアイルランドが決勝トーナメント進出を決めたのはうれしかった。大会前まではあまり注目してなかったし、主将のロイ・キーンが監督と練習環境の問題で対立して強制送還を食らうというゴタゴタもあって、あまりいい印象がなかったのだが、その分チームが一丸となって粘りを見せた。こういうチームには、妙に感情移入してしまう…。少年漫画的ストーリーだしね。(笑)

 退場者を出して苦しい状況の中で勝ったドイツも大したものだった。カメルーンは遅刻によるお騒がせで話題になり、憎めないところもあったのだが、まあしかたのないところかなと思う。勝ち残るところがあれば、必ず敗退するところがある…。今回は日本が勝ち残れそうだから、そうやって冷静でいられるのかもしれないが…。(笑)

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