飛鳥杏華の気まぐれモノローグ

<2001年>

7月10日(火)

 新刊制作もいよいよ大詰め…。ここへきて表紙CGの作画に大きなミスが見つかった。修正する時間はもうない。このまま恥ずかしい思いをするのを覚悟で作成を続けるべきか…? ついに、最後の決断を迫られるときが来た。

 4日、原作「犬夜叉」だが、琥珀もりんも殺されずに済んで何よりだ。まあ、そこまでは想像がついたが、殺生丸の琥珀への対応に非常に微妙なものを感じた。以前の殺生丸なら、琥珀が無抵抗だろうが何だろうが、ためらいなくあっさり殺しただろう。りんと関わってから、確実に変化してきているのだと思う。

 その片鱗は、犬夜叉が変化して自分を見失ったときの対応からすでに表れていた。奈落の思惑に乗りたくなかったというのは、表向きの言い訳だ。犬夜叉たちのためになることをしてやるかたちになったことを認めたくないのだろう。

 そういう言い訳をしながら、殺生丸はどんどん変わっていくことになるのだろうと思う。考えてみれば、もう鉄砕牙に代わる切れ味の鋭い刀(闘鬼神)を手に入れているのだし、犬夜叉をどうしても殺さねばならない理由はなくなっているのだ。

 兄弟の情に目覚めて、何か特別なことをしてやるような気持ちにはならないだろうが、わざわざ犬夜叉たちが困るようなことをする理由ももうないはずである。あるとすれば過去の遺恨だが、殺生丸は過去のことでネチネチ相手を痛めつけるタイプには見えない。むしろ、自分の利益のために行動するタイプだろう。

 今回、ちょっとポイントと思えるのが、奈落が琥珀をここで切り捨てるつもりでいたということだ。いままでは犬夜叉たちにとって厄介な状態を作り出すために活用してきたのだが、もう不要だと判断したことになる。かなり大きい有利な条件だったと思うのだが、切り捨てられるだけのものが奈落にあるということだろうか?

 そして、りんの存在が犬夜叉たちに認識されたこともこの先の展開に影響してくるだろう。いずれ、りんと犬夜叉たちの接触が再びあるだろうと思う。逆にりん絡みで再び殺生丸が犬夜叉を殺す理由を作ることも可能だが、そういう嫌なことは考えないでおこう。(笑)

 さて、この日はようやくかごめのスカートを塗り終え、制服の白い部分の影つけに入った。まずは胸元の部分だ。この白い部分だが、当初の計画では完全な白にはせず、少し肌が透けたような感じにして縫い目の部分などをリアルに表現しようかと思っていた。

 ブラが透けて見えるようにしようかと考えてみないでもなかったが、実際のセーラー服を考えたとき、後側なら透けて見えることはあるが、前の方が透けて見えるのはちょっとないのではないかと思い直した。そういうおいしいセーラー服を採用している学校は、少なくとも私の記憶にはないし…。(あったら、教えて欲しい。笑)

 余裕があれば、そういうところまでこだわってみたかったのだが、今回はさすがにそこまで狙える状況にはない。単純な白にして影つけをするという、ごくごくまともな彩色に落ち着いたわけだ。(でも、いつかやってみたかったりして…。笑)

 5日、日曜日の代休だ。ここで一気にかごめのペイントを進めようと意気込んだのだが、さすがに髪の天使の輪に時間がかかって、かごめの絵を完成させるまでには至らなかった。あと1日休日があれば、かごめは仕上げられるだろうが、なかなか余裕が生まれないのがつらい。

 以前のように徹夜がきかないのも影響しているだろう。まあ、やればできないこともないのだろうが、睡魔で細かい作業に支障が出る危険性もあるし、翌朝以降の作業能率が大きく低下しそうだ。実際、この体力の衰えは、年をとってみないとわかってもらえないだろうな。(汗)

 6日、表紙CGは、何とかかごめの髪まで終えた。あとは、瞳を入れればかごめの絵は完成だ。そこまでやってしまえばよかったのだが、無理だった。実際、やってみたのだが、集中力がもう持たなくて、何度も失敗した末にあきらめたのである。

 たかが瞳と思うかもしれないが、それが死んだら絵が死んでしまう。ここは、納得がいくまでやり直さないとダメだ。こだわりたい…。もっとも、印刷されてしまうと、あまり実際のCGほど効果が見えないことが多いのだが…。(汗)

 7日、朝からの作業でもちょっと瞳の処理にてこずったが、何とか午前中にかごめの絵は完成した。そのまま作業を続けたかったのだが、翌週からいよいよ新しい上司が赴任してくるので、ボサボサに伸びた髪を散髪してこなければならない。

 あまり外見にはこだわりたくない方なのだが、第1印象は結構大事だ。悪い印象を持たれると、後々損をする。大人になると、そういうことを気にして生きなければならないのがつらい。扶養家族がいるわけじゃないから、別に出世したいとは思わないが、目をつけられて日頃うるさく言われたくないし…。

 そんなわけで、表紙CGの作業を再開したのは、15時過ぎからだったが、犬夜叉の顔、首の肌の部分を仕上げた。散髪に行かなければ、もっと進められただろうけど…。(苦笑)

 8日、朝から作業を続ける。犬夜叉の腕、そして耳と肌色の残りの部分からスタート。続いて細かい言霊の念珠の仕上げにかかる。これが結構面倒だ。並行して、ノートパソコンの方で背景のベースの作成も行う。いかにも追い込みという雰囲気だ。

 いちばん大変なのは、やはり犬夜叉の髪の天使の輪だろう。そのほかにも鉄砕牙の柄の部分など、細かいところがある。着物は1色に影つけだけだから比較的楽だと思うが、まだまだ時間のかかりそうな部分が残っている。目の痛みも、睡眠だけでは回復しなくなってきた。

 少しでも早めに仕上げて本文の残りにかかりたいと思っていたのだが、このペースでは14日ギリギリだろう。裏のデザインまで考えると、かなり厳しくなってきている。精神的にもちょっと追いつめられてきた。(汗)

 9日、犬夜叉の着物にかかる。が、ベースとなる色の選択にちょっと迷った。犬夜叉の着物は、ごく初期はピンク系だったのだが、最近はほとんど赤だ。しかし、桔梗の袴やかごめの制服のリボンの色と変えないと芸がない。

 結局、ややピンクの雰囲気も残した色にしたが、この選択のために影つけの作業開始が遅くなってしまい、この日のうちに着物の部分を塗り終えることができなかった。もっとも、作業が進まなかったのには別の理由もある。むしろ、そちらの方が大きいかもしれない。それは、作画における重大なミスの発覚だった…。

 それは、アニメの放送を見ていて気がついた。鉄砕牙の柄の部分のデザインの違いである。原画を描く際、急いでいたこともあって、ちゃんと原作やアニメの設定資料を確認せず、曖昧な記憶に頼って描いてしまった。が、あまりにも違いすぎるのに気づいて、大きなショックを受けてしまったのである。

 描き直している時間は多分ない。しかし、こんなに違う絵を出して指摘されたら恥ずかしい。気づかなかったのなら、それもしかたがないと思う。ミスを認めて、素直に恥じ入るしかないだろう。しかし、ミスに気づいていながら、そのまま出すのには抵抗がある。

 そんな思いが頭の中でグルグル巡っている状態では、作業も進みようがなかった。木曜日には新しい上司の歓迎会があってまた1日つぶれる。間に合わせるなら、このままだ。しかし、間に合わせることが最大の目的なのだろうか? 表紙が間に合っても、本文の完成に大いに不安が残る状況だ。表紙も不十分、中味も不十分になりかねない…。そんな本を間に合わせることが最大の目的なのか?

 この日はそのまま作業を続けたが、いよいよ苦渋の選択をせねばならないときが来たようだ。この夏に何とかして出したかった本ではあるが、満足なかたちで出せないのなら、あきらめるしかない。

 最終決断まではしなかったが、オフセット新刊は入稿断念ということで、ほぼ心が決まった。そんな精神状態だったので、アニメ「犬夜叉」の方は観たことは観たのだが、ほとんど頭に入らなかった。(汗) 刀々斎のとぼけた味をベテランの八奈見乗児がよく出していたのと、刀々斎が殺生丸に追われて吹き飛ばされたとき、乗っていた牛と同じ格好でコケたギャグだけは、やけに印象に残っていたが…。(笑)

 10日、前夜、最終決断までは下していなかったので、一応、鉄砕牙の柄の部分の修正を手がけてみる。せっかく塗った犬夜叉の着物も、鉄砕牙の周囲は白に戻さなければならない。やはり非常に時間がかかる。この日にできたのは、ほんのわずかだった。これで完全にもう無理だと最終決断を下すことができた。

 そうとなったら、気持ちはすぐに代替のコピー本の作成に切り替えだ。悔しいことは悔しかったが、あまり重い気分ではなかった。むしろ、肩の荷が降りたような安堵感すらあった。かなり、プレッシャーになっていたのだろうと思う。(苦笑)

 こうして、夏コミに出す予定であった「REAL LOVE SPECIAL −映像犬聞録−」Vol.1の発行は延期となった。結局は自分の計画の甘さが原因だ。いろいろ突発的なこともあったし、ギリギリまでがんばったのだから、認めてくれというわけにもいくまい。理由はどうあれ、落としたのは事実だ。その分、代替のコピー本を少しでも充実させられるようにがんばるとしよう。

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