飛鳥杏華の気まぐれモノローグ

<1999年>

12月28日(火)

 いよいよコミケだ。しかし、変則的なスケジュールと本当の意味での新刊が出せなかったこともあって、いまいち気持ち的に盛り上がらない。ほんとにコミケなんだろうか? 日程がクリスマスになったのも影響してるかも…。でも、始まってしまえばやっぱりコミケだった。とりあえず、手応え…。(笑)

 22日、「犬夜叉」だが、かごめの魂は神無の鏡におさまり切らず、かろうじてかごめは体を動かして弓をかまえることができた。そこへ七宝と雲母がやってきて難を逃れる。大きな力で神無の技を打ち破るところまではいかなかったが、かごめの魂がカギというのは少し当たっていた。

 一方、村人たちを盾にして鉄砕牙で風の傷を斬り割くのを防いだ神楽…、以前から犬夜叉が人間的な気持ちを持つようになり、守るべき者ができたとき、それが足かせとなって思うように闘えなくなるのではないかと考えていたのだが、まさにそのとおりの展開となった。奈落や殺生丸あたりに言わせるならば、非情になり切れない犬夜叉の甘さということになろう。

 人間の血を受け継いでいるからこその弱さと葛藤…。そこでキレてしまえば簡単なのかもしれない。しかし、それを乗り越えて勝つところに意義がある。そうしてこそ少年漫画ヒーローの王道だ。少し大人向けのストーリーならあえてその逆を行かせて、かごめとの関係が気まずくなったり、弥勒や珊瑚たちから見離されて再びひとりぼっちになってしまうなんて展開もありだと思うが…。

 それはそうと、今回の中でちょっと「おや?」と思った点がある。七宝と雲母が来たとき、神無があっさり逃げたことだ。なぜ逃げたのだろう? 鏡に魂を吸い取れるのなら、いくら雲母が強くても勝算はあるはず…。ということは、七宝や雲母が相手では技が使えないのではないかという推測ができてくる。人間の魂は吸い取れるけれど、妖怪の魂はもしかして…。その辺がこの先のカギになるかもしれない。

 それにしても、珊瑚は存在自体忘れられてしまっているぞ。なんか、とってもかわいそうだ…。(涙) 「闘いが終わったら、思いっきりすねてやれ!」と言ってやりたい。自分だったら、やっぱりすごく傷つくと思うし…。この先、高橋先生がどのようにその辺をフォローしていくのかも見物だ。

 さて、この日は20日から来た新しい外注さんの歓迎会でちょっと帰宅が遅くなった。といっても、21時過ぎには帰宅できたのだが、日本酒を結構飲んだこともあって気力が持たず、22時にはもう寝てしまった。プレゼント抽選会出品候補グッズのアンケートページを少しは進めておきたかったのだが…。(汗)

 23日、祝日で私は休み番だ。ということで、プレゼント抽選会出品候補グッズ人気投票のページを手がけた。昼過ぎにはそれも完成し、テストも完了した。あとは、リンクをつなぐだけだ。続いて、コミケの準備として「Yesterday and Today」の修正と公式ガイドブックの製本作業をした。もう、翌日の朝には荷物を持って出勤しなければならないから、結構ギリギリだった。(汗)

 夜には持っていく本を箱に詰め、着替えなどをバッグに詰め込んで出発準備完了だ。が、今回のコミケ参加はかなり変則的なスケジュールになるので大変だ。まず、24日の朝に荷物を全部持って出勤し、仕事が終わったらそのまま宿にチェックイン。翌25日はコミケ参加して宿に戻り、26日は宿から出勤して宿へ帰る。そして、27日朝にチェックアウトして帰宅となるわけだ。

 中でもコミケ参加翌日の出勤がきつい。そのためにYシャツとネクタイを宿に持っていかねばならない。職場では一応制服(といっても、普通のブレザーだが)だから、背広までは持っていかなくて済むが…。と、そこでよからぬことを思いついた。どうせYシャツとネクタイを持参するのなら、コミケもそのまま仕事着で参加してしまえばいいではないかと…。名札もつけて博物館員のコスプレだ。(そういうのもコスプレって言うのか? 笑)

 そうすれば持っていく着替えを減らすこともできるし、なかなかいいアイデアではないか…。というわけで、すっかりマジでその計画を進めることにしてしまった。(ほんとにいいのかな? 笑)

 24日、カートを引いての出勤だ。営団地下鉄南北線はエレベーターがあるのでかなり助かる。しかし、一部はカートごと抱えて階段を昇り降りしなければならない。今回は、それほど重くなかったから比較的楽だったはずなのだが、どうやら知らず知らずのうちに腰に負担がかかっていたらしい。この日はまだ大丈夫だったが…。

 仕事も比較的早く終わり、19時前には一刻会の宿泊会場に着けた。21時からは恒例のプレゼント交換会だが、今回は宿泊者が少なくて実に淋しかった。コミケが年末でなくクリスマスになった影響もあるだろう。高速バスが遅れて間に合わなかった奴もいたし…。

 そのあとは携帯電話の番号交換会と翌日の購入計画の作戦会議だ。私はどうせるーみっくしか回らないからほとんど関係ないのだが、このとき安永航一郎の本だけ頼んでおけばよかった。うーむ、そういうのってそのときには思いつかないものなんだよな…。(汗)

 25日、いよいよコミケ本番の日。5時45分に一刻会会長の車で東京ビッグサイトに向けて出発した。到着してからサークル入場の開始まではベンチに腰を下ろして待っていたのだが、このときから左の腰に痛みを感じはじめた。結構痛い…。うーむ、すっかり歳だなー。これは間違いなく歳のせいだ。あまり認めたくはないが…。(汗)

 7時半にサークル入場が始まって販売準備にかかる。今回は「るみけっと」のサークル参加申込書を各サークルの机に配るという仕事もある。会長が許可をとったのだが、配布は9時までと決まっていた。前日の作戦会議では逸見五美さんのとこの売り子としてLISSAさんが来るので、彼女に頼もうということになっていた。やはり、女性が配った方がいいだろうと…。

 ところがLISSAさんの到着が思ったよりも遅く、時間が迫ってきてしまったので私が配ることになった。もともと約束してあったわけではない。前夜、こっちが勝手に決めたのだから彼女にはまったく罪はないのだ。でも、きっと彼女の方がインパクトあっただろうな…。ちょっと惜しかった。

 それはともかく、9時前ではまだ来ていないサークルも多い。他のチラシと一緒に机の上に置いたのでは、まとめて捨てられてしまう恐れがある。絵も入ってなくて目立たないし…。(汗) 前夜にも、開場後に本を買って回るついでにダメ押しに確認しながら改めて配って回る方がいいと口に出していたのだが、これは絶対にそうしないとダメだと確信した。

 さて、いよいよ開場だが、いつものごとく開場早々はお客がほとんど来ない。それはいいのだが、今回は壁サークルの向かい側で、シャッターの近くだった。開場とともにそのシャッターが開けられたものだから、思いっきり寒かった。(汗) さすがに私も着てきたジャンパーを膝にかけずにはいられなかった。売り子の相棒などは、下半身に寝袋装着だ。徹夜組でもないのに何で寝袋を持ってきていたかは謎だが…。(笑)

 昼近くになるにつれてお客も増えてくる。コミケでは新刊の「FREE AS A BIRD」だが、10月に出した分減るのは計算済みだったからまずまずの結果だったと言えるだろう。意外なのは再録本の「Yesterday and Today」の売れ行きがいいことだ。今年は新年から名古屋を中心に即売会に出しまくったこともあるが、いつもなら200部完売にまる2年かかるのが、まる1年ですでに180部近くに達している。

 やっぱり、ちゃんとした漫画が多いからだろうか? その前に出した「REAL LOVE」Vol.3をすでに抜いている。「REAL LOVE」Vol.3は下ネタが多いから売れないのかな…?(汗) それでも、Vo1.2までとそれほど変わらないペースだが…。

 11時半頃から「るみけっと」のサークル参加申込書の再配布に回った。やはり回って正解だった。遅れてきたサークルでは、まだもらってないと言う人がかなり多かった。丁寧に確認しながらダメ押しして回ったこともあってか、好感触を得られた。「参加しますから。」と言ってくれたサークルも結構あった。これでとりあえずサークル関係者への最低限の広報はできたが、一般向けは…。(汗)

 端から端まで挨拶しながら配ると結構時間がかかる。ブースに戻ってやや遅い昼食をとるともう13時半近かった。と、そこへ4人の中学生か小学校高学年くらいの女の子たちがやってきた。私の本の中味を見るなり、「すごい、これ似てるーっ!」と言って騒ぎ合う。高橋先生に絵が似てるという意味なのだろう。

 と、そのうちの1人が「この絵描いた人って、今いますか?」と聞いてきた。それは私だと答えると、4人とも思いっきり「えーっ!?」(ザザザザッ)と一瞬引いた…。まあ、このところ一層白髪も増えたし、この日はブレザーにネクタイというスタイルだ。無理もなかろう…。一応、Yシャツは太目の青いストライプ、ネクタイは西暦2000年ということで2000という数字をデザインしたコミカルなものを選んではいたが…。

 しかし、笑顔で「こんなおじさんでごめんね。」とこちらが言うと、かえって雰囲気がなごんだ。要するにスケブ(スケッチブックにイラスト)を描いて欲しいということだったのだ。時間がかかってもよければということで引き受けたが、そのときはスケブを持っていなかったので、14時頃に改めてやってきた。「おじさん、スケブ描いて!」と…。

 いきなり「おじさん…」と来たのには正直ちょっと「ぴきっ」と来るものもあったが、それはすでにその娘自身の中で「おじさん」との間に良好なコミュニケーションが成立していると感じている証拠であろう。決して悪い感触ではないのだ。

 早速キャラの希望を聞いたが、最初はなかなか言わず、こっちの好きでいいと言っていた。でも、聞いてみないと描けるか描けないか言えないからと言うと、ラムちゃんを描いて欲しいとようやく希望を口にした。

 中学生か小学校高学年ぐらいだし、最初に見ていたところが「らんま」のパロのところだったので、当然「らんま」キャラだと思っていたからちょっと意外だった。私の本には「らんま」や「犬夜叉」のパロが多いから、向こうもラムちゃんと言い出しにくかったのかもしれない。ラムなら描き慣れているのでOKした。

 1時間ほどもらって、最初の30分で下描きとペン入れをした。残りの30分でベタを塗るつもりだったのだが、筆ペンの墨が出なくなって時間がかかってしまった。15時になって彼女らが戻ってきたが、まだ終わらなかった。そこで描きながら、しばらく話をすることになる。歳のことも聞かれた。別に隠したいわけでもなかったが、「君たちのお父さんやお母さんと同じぐらいだよ。」という答え方をした。

 4人はちょっと顔を見合わせたが、「でも、高橋先生って20年以上も漫画描いてるでしょ? その頃(デビューの頃)高校生だと、このくらいになるんだよ。」と言うと、なるほどとうなずいた。ベタのあと、右上の空いたスペースに小さく犬夜叉を描いてくれと追加注文も来た。もうここまでくると、かなり打ち解けている。10月頃悩んでいた「おやじアレルギー」って、いってい何だったんだろうという気になってしまう。

 結局、その娘たちは本は買ってくれなかった。が、「私、今日2000円も使ったよ。」とか「私なんか3000円使った…。」なんて話しているのを聞くと、「なるほど、それじゃ買えないね。」とむしろ微笑ましく思った。最近はガキでも結構大金持ってる奴がいるから、それに比べたら実にかわいいではないか…。買えないからスケブを頼んだのかどうかはわからないけれど…。(笑)

 さて、今回は結構ハードではあったが、「るみけっと」のサークル参加申込書配布の際の手応えや若い女の子たちとの良好なコミュニケーションの成立という収穫を得て、いいコミケとなった。終了後は一刻会の面々で東京駅近くの居酒屋で打ち上げをし、カラオケにも行って、宿に帰ったのは23時近くだった。いろいろと会長に報告すべきこともあったのだが、翌日の出勤に備えて早めに寝ることにした。

 26日、一緒に宿泊している連中がみんなコミケに行く中、1人淋しく出勤だ…。まあ、前日が休みに当たってくれただけでもありがたい。休日出勤だからあまり仕事はないし、楽といえば楽なのだ。しかし、前日の疲れがあるからあまり楽だと眠くなってきてしまう。休日は上司の目もないから余計だ…。仕事をするならするで適当にやることがあった方がいいらしい。

 仕事を終えると久々にPC-VANのオフ会に顔を出した。遅れて着いたから大して飲み食いもできなかったし、席が満杯だったから久しぶりの人たちに挨拶して回ることもできなかった。しかたないが、ちょっとそれが心残りだった。そのあとカラオケもあったのだが、前日もやっているし、のどがやられ気味だったので宿に帰った。

 しかし、さすがに翌日は普通の月曜日だ。この日も宿泊する人の数はわずかで、非常に淋しかった。それでも淋しいなりに1つの部屋に集まって歓談した。その場で、前日にできなかった「るみけっと」のサークル参加申込書配布状況についての報告を準備会代表にした。そしてもう1つ、私には重大な任務があった。「るみけっと」でのコスプレ用更衣室を用意させることである。

 その件について代表に尋ねると、まだ更衣室は用意しないという路線に変わりはなかった。費用と管理スタッフの問題である。しかし、私のところには個人的にコスプレをしたいと言ってきている人もいるし、人がいなければ管理スタッフをしてもいいと言う人もいる。絶対数は多くないかもしれないが、更衣室を用意しないのでは実質的にコスプレ禁止と同じだ。私自身、それは避けたかった。

 こうなったら最後の手段しかない。費用の問題なら、私が金を出すから部屋をとってくれと強く要求したのだ。それで話は決まった。しかも、効率を考えて男女各1室(計2室)をとることになったのである。もっとも、まだ損保会館に問い合わせたわけではないから部屋がとれるかどうかはわからない。別の階でもとれれば御の字だろう。まるで経営者と労働組合委員長の交渉のような一幕だった。(笑)

 27日、のんびりと起き出して10時に宿をチェックアウト。例年ならそのまま麻雀となるところなのだが、今年は残念ながら面子が揃わなかった。14時過ぎには帰宅してホームページの更新作業にかかった。まずは「るみけっと」関係のページの刷新だ。続いて一刻会の通販ページに新刊を追加した。その辺の作業でこの日はいっぱいだった。

 28日、朝からここの原文書きだ。コミケがあったから書く内容が多くて時間がかかった。16時過ぎからは、CGI関係の動作確認テストを行う。まずまず良好だ。いろいろ直したからどこを更新したのかわからなくなって更新履歴を書くのが大変だった。(笑)

 さて、これが今年最後の更新だ。いいこと、悪いこと、いろいろあった年だった。この気まぐれモノローグもほんとによく続いてきたと思う。これと同じくらい毎週漫画を描いていれば締め切り間際に苦しむことはないのだろうけど、そうはいかないところがまたおもしろい。2000年はどんなことが起こるだろう? いきなり混乱しなければよいのだが…。(笑)

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