飛鳥杏華の気まぐれモノローグ

<1999年>

4月20日(火)

 謎の原稿はついに校了。ようやくすべての仕事がおわった。その原稿が掲載される本の発売日もほぼ決まり、いよいよ謎の執筆の正体が明らかにされる!

 14日、「犬夜叉」の展開は予想したのとは異なる方向に動き出した感がある。そうそう予想が当たったもおもしろくないし、はずれた方がより興味を引きつけられる。しかし、これまでは犬夜叉と桔梗、犬夜叉と奈落と別々に描かれてきた役者が一堂に会したシリーズであり、ここで何か作品全体のポイントとなることが起こることは間違いないように思われる。

 犬夜叉と弥勒が調べに入った怪しい洞穴の中では、何百という妖怪が戦い、倒した相手の体を自らに取り込みながら勝ち残った2体が最後の決着をつけようとしているところだった。そして勝ち残った1体が犬夜叉を見つける。その妖怪に鉄砕牙で斬りかかる犬夜叉…。

 しかし、ここで犬夜叉が勝てば、犬夜叉はその勝ち残り妖怪の体を取り込むことになってしまう。逆に負ければ取り込まれるわけだが、負けるということは死ぬということだから、それはないだろう。それを察知した弥勒が制止するが、果たしてどうなるのか…?

 ここまできて、なるほどと思った。前の地念児のシリーズのラストの部分が、ここへの伏線として活きているのだ。かつては、半妖であるがゆえに疎外され、力ずくで居場所を確保してきた結果、ひとりぼっちになってしまったけれど、いまは半妖のままでも1人じゃない…。半妖のままでも仲間と生きていけるという道が見えてきた矢先のできごとだ…。

 ここで勝つことによって犬夜叉は妖怪の体を得ることになってしまう。そうなったとき、かごめら仲間たちと生きていけるのか? というより、自分自身を見失わずにいられるのかというのが問題だ。ここでキーとなるのが桔梗なのだろう。かごめでは、もし犬夜叉が妖怪化して自分自身を見失ってしまった場合でも、その犬夜叉を矢で射ることはできまい。だが、桔梗ならできる…。

 もっとも、妖怪化する前に桔梗が現れることで、事が未然に防がれる可能性もあろう。どっちにしろ、桔梗がポイントとなるのではないかと思うのだ…。

 一方、邪気が最高潮に高まるこの「満願」時を待っていた奈落…。穴の中に何百もの妖怪を押し込めて、勝ち残った者が穴から出られるとでも吹き込んだのだろう。その勝ち残った1体を使って犬夜叉たちを襲わせようとしたのか、それともその1体を自分が倒し、かごめの矢によって失われた体と邪気を回復しようとしたのか…、いまのところハッキリとはわからない。

 それを犬夜叉たちに発見されたのは予想外のできごとだったのではないだろうか? さらに、捕らえたはずの桔梗がそこへ向かったことも奈落にとっては誤算のように思える。失われた体と邪気を回復するつもりだった場合、犬夜叉と桔梗によってそのもくろみがつぶされる可能性が高い。体と邪気の回復ができなかったとき、いよいよ自ら動けない奈落が桔梗を利用するという路線が出てくる。

 果たしてどう展開していくのか? 今回はあまり予想ができないだけに、より楽しみだ。まだ、一気に決着につながることはないと思うが…。

 さて、この日は謎の原稿の校正を慎重に何度も繰り返し行った。これを翌日、FAXで送信してOKがもらえれば、多分、自分の役目は終わることになるだろう。だからこそ、余計に慎重になってしまった。まあ、慎重になるに越したことはないだろう。これまでの同人誌とはわけが違うのだから…。

 15日、昼休みに職場からFAXで校正を入れたゲラを送信した。何かあれば夕方までにFAXで再度連絡があるだろうと思った。が、結局何もこなかった。帰宅すると、御礼のメールが届いていた。これで多分終わりだ。前日、それとなく尋ねておいた本の発売日については、5月10日を予定しているが、取り次ぎの関係で2、3日ずれるかもしれないとの回答があった。

 これで、いよいよ謎の原稿の正体も明らかにできる。いずれ、一連の謎の原稿執筆についての気まぐれモノローグ(号外)を作成しようと計画し、少し書いたところで床についた。今度の更新に間に合わせるのは、ちと難しいと思うが…。(汗)

 16日朝、メールをチェックすると、前夜のうちに謎の原稿の依頼主からのメールが届いていた。私の書いた原稿に対して高橋留美子先生から2点ほど削除して欲しいという要求があったというのだ! やはり来たか…。(汗) この原稿を直接高橋先生がご覧になると知らされたときから、ある程度覚悟はしていた。しかし、求められた削除点はあまり大したものではなかった…。(笑)

 高橋先生ご自身や周囲の方のプライバシーに関わる部分に配慮を求められたものという程度で、半ば覚悟していた項目単位の全文削除要求などは来なかった。それ以外の指摘がなかったということは、あとはすべて記述が正しいと認定してもらえたのだろう。ちなみに、何を削除したのかは、やはり伏せるように求められたのだから、ここでも書かないことにする。知っている人から見れば、本当に大したことじゃないように思われる部分なのだが…。

 帰宅後、高橋先生の意志を尊重してキネマ旬報社の編集部が変更した記述内容にOKのメールを出した。これで本当に最後だろう。約1ヶ月に渡る仕事がようやく終わった…。(フーっ)

 ここまで書けば、謎の原稿が何だったのかわかってきた人もいるのではないかと思う。すでに前回、「ゲラ」という言葉が出てきた段階で、これはもしかすると商業誌だなとピンときた人もいるのではないだろうか。そう、私が原稿を書いていたのは、キネマ旬報社発行のキネ旬ムック「マンガ夜話」VOL.4という本だ。

 NHK衛星第2放送で放送された「BSマンガ夜話」という番組の採録を中心としたA5サイズのムック本で、VOL.4には「めぞん一刻」の回が採録されることになっていた。この情報については、すでに知っている人もかなりいるだろう。この本には番組採録のほかに、いしかわじゅん氏のコラム、単行本リスト、作品年表、作家を読み解くキーワードといったコーナーがあるのだが、その中の作家を読み解くキーワードの作成を依頼されたのである。

 内容は、作家本人やその作品、作風などに関してキーワードとなる項目を挙げ、それに対する解説を書くというもので、キーワード集を一通り読むことで作家の人となりがわかるようなものという位置づけのコーナーだ。高橋先生ご本人に関わることを語ることになるのだから、責任は重大だ。間違ったことは書けない…。高橋先生に対しても、この本を買うファンに対してもしっかりと責任を果たさねばならない。だからこそ、何を置いても最優先に進めなければならなかったのだ。

 大半の項目を提出したあとに、高橋先生に直接見ていただくということを知らされて大いにびびったが、削除しろと言われたら削除すればいいやと開き直って続きを書いた。結果として、大した削除・修正要求もなく、書いた内容は一応正しいと認定されたに等しいわけだ。詳しいことは、号外の方にいずれ書くつもりだが、その原稿の校了がこの日までかかったことにより、4月中の発売はもはや不可能で、5月10日になりそうだということになったわけである。

 この本が売れようが売れまいが、私の利益には影響はないのだが、やはり自分が原稿を書いた本だから売れて欲しいと思う。特に最近は、高橋先生の特集を組んでくれる本もなく、昔ほど高橋先生に関する情報が得られなくなっている。かといって、今から過去のインタビューや対談の載った本を手に入れるのは大変だ。時間もかかるし、お金もかかる…。

 手前味噌になってしまうが、そういう意味でこの本は便利な1冊となると思う。特に近年ファンになって、まだあまり高橋先生のことを知らないという人にはいい資料となるだろう。そういう面で役に立てばと思って書かせてもらったのだ。古株の濃いファンにしてみれば、ほとんど旧知の事実かもしれないが…。(汗)

 17日、一刻会の全国集会「一刻CON」の参加要項をまとめたプログレスレポートの編集のため、日野へ出向く…。編集人員が少なかったこともあって、結構時間がかかってしまった。それでも19時過ぎに何とか終わり、久々に4人揃ったので、結局そのまま麻雀になってしまった。(汗)

 最初は、食事をしながら打とうという話だったのだが、みんな麻雀がはじまると飯どころではない。サーピスのドリンクだけはしっかり頼み、気がつくと何も食わないまま23時過ぎまでやってしまった。それでも連荘が異様に多かったので、半荘2回にしかならなかった。(汗)

 おかげで、帰宅は午前1時過ぎ…。帰りにコンビニで買い物をして飢えをしのぎ、翌日の即売会の準備をして午前2時過ぎにようやく床についた。

 18日、コミックライブin東京14に参加するため、東京ビッグサイトに向かう。雨の予報だったが、何とか朝方は天気が持ってくれた。会場の西4ホールには10時過ぎに到着…。この日は2スペース、西島きょうこさんの本も並べることになっていた。鏡あかりさんも来るかもしれないということだったが、結局は来なかった…。(汗)

 さて、開場して30分は何事も起こらなかった。まあ、売れないのはいつもと同じだ…。そこへ、中学生くらいの女の子3人組がやってきた。並んでいる本を見るなり、「犬夜叉だーっ!」と声を上げる…。「えーっ、どうしよう?」と盛んに迷ってる様子…。これは脈があるなと期待していると、うち1人の女の子が思い切ったように話しかけてきた。「あのー、スケブ(スケッチブック)描いてもらえますか?」と…。

 あ、あれっ? 迷ってたのは本を買うか買わないかでなくて、スケッチブックのことだったのかな?(汗) まあ、それはいいとして、シャンプーとムースを描いてくれという…。スケブを頼まれるのは、一昨年の冬コミ以来のことだ。そのとき、あまりうまく描けなかった苦い経験があるし、頼まれたのがあまり普段描いていないキャラだったので断ろうかとも思ったのだが、とても初々しく、期待を込めたまなざしでこっちを見つめるものだから、断れなくなってしまった…。(汗)

 かくしてスケブに取りかかったわけだが、スケブを描きはじめてから運が変わったように本が売れはじめた。その場で描いているシャンプーとムースの出来が結構よかったことも影響したのだろうか? それを見て、さらにもう1人(今度は男性)がスケブを頼んできた。こちらは、ラムというリクエストだった。おかげで、この日はほとんど1日中、スケブにかかりきりとなってしまった。(汗)

 この2枚のスケッチは、結構出来がよかった。ラムを頼んだ男性もかなりニコニコして喜んでたみたいだし、最初の女の子たちに至っては、「うわーっ!」と小さく感嘆の声まで上げてくれた。こんなリアクションをしてもらえたら、絵描きとしては最高に幸せだ。どうしても時間的制約があるから、1つの即売会では2、3枚が限界だが、これだけ喜んでもらえるなら頼まれるのも悪くない。もっとも、次もうまく描けるという保証はないのだが…。(汗)

 さて、即売会終了後、東京ビッグサイト内のレストランで軽く食事をした。この日、売り子を手伝ってくれたのは、一刻会で名古屋の方の即売会を担当してくれてる会員だったのだが、まんだらけ中野店にまだ行ったことがないというので、食事後に案内することにした。

 先週散財したばかりだ。しかしまあ、この日は案内するのが目的だし、先週いいものを買ったから、今週はないだろうとたかをくくっていた。ところが、行ってみるとなぜかある…。(汗) テレカにタペストリー、書店用のぼり…。何でこうなってしまうのだろう? 我慢するには、いいものが揃いすぎている。結局、先週とほぼ同じくらいの散財をしてしまった。(汗)

 19日、帰宅後、前日の即売会の結果を一刻会に伝えるメールと、「マンガ夜話」VOL.4の共同執筆者であるめぞん一刻Homepage主宰者のひろゆきさんにそろそろ執筆の事実について公表する旨を伝えるメールを書いて送信した。前者の方はかなり長くなってしまったので、この日はそれだけで終わってしまった。

 20日、帰宅後はここの更新作業だ。気まぐれモノローグの原文に結構時間がかかったので、号外の方はやはり進まなかった。まあ、本の発売までにはまだ間があるし、あせることもないだろう。それに、正体がわかって改めて過去の気まぐれモノローグを読み返してみれば、進行状況は見えてくるはずだ。それもまた面白かろう…。(と言って、間に合わなかったのをごまかす。笑)

 少しずつ撮りためてきたタペストリー類の画像もそこそこ揃ったし、また機会みて裏・高橋留美子*ぷち資料館に追加しようと思う。この裏資料館も、できればきっちりとした資料集の形態にして表で公開したいものだと思う。私がお宝探しをしているのはそのためでもあるのだし、何とかうまくまとめたいのだが…。(汗) ああ、時間が欲しい…。

メニューに戻る