わたしのいなかは山梨と九州である。九州は遠いのでめったに行かないが、山梨は隣の県ということもあって昔から長い休みのときはよく行っていた。でも高校生になった頃からあまり行かなくなっていて、今では1年に一回行くか行かないかという感じです。しかし今回はチャリでいなかに行ってみよう!という前代未聞のことを思いついた。距離も行けないことないし、新たな道を開拓するのにはちょうどいい企画だ。

今回のランはコースがいたってシンプル。甲州街道(国道20号)をひたすら進むコースである。前日にマップルでコースを確認して、だいたいこんな感じかなぁとコースや風景を想像したりした。もちろんいなかの人には連絡済みなので、いなかについたらそこで一泊して、次の日にまた同じ道を通って自宅に戻るという計画だ。

しつこいようだがこの年の夏は猛烈な猛暑が続いていて、この日も暑くなることは明らかであった。だから暑くならないうちに走り始めたかったので朝6:20に出発した。前日、前々日とあまり寝ていなかったので、ちょっと眠かった。夏休みということもあり、早朝の街は人気が少なくゆったりとしていた。やはり朝の空気は気持ちがいい。

まず国道16号を北に進んだ。この国道は何度も通ったことがあったが、いつもは交通量が多くて車がうざい。でも朝早いからか、車の数は少なく快適に走れた。そして国道16号は平ら道なので自然とスピードが出る。快調なペースでスイスイ進めた。しかし思い返せばこんなにスイスイ進めたのもこの辺だけだった。

橋本からは国道413号を進む。そして途中から国道412号に移り、相模湖からは甲州街道である。相模湖までの道はこの年の新歓ランで通ったことがあった。でもそのときは逆からで、しかも夜だったのでいまいち覚えていなかった。だから「へぇ〜、これがあのときの道かぁ。こんなふうになってたんだ」とか思いながら走っていた。

そして相模湖からはほんとに初めての道だ。ここからの道のりは基本的に平らな道はなく、ダラダラしたアップダウンばかりである。快適な走りではないが、道沿いにJR中央本線と桂川が平行していて、左右を山々に囲まれてすごく景色がよかった。いなかにはいつもJRを使って行くが、よく電車の窓から外の景色を眺めていたので所々の風景は覚えていた。今まで電車の中から見ていたこの道、この場所を今自分は自転車で自分の力で走っているんだ、と思うとなんだか新鮮な感じがした。

長いこと甲州街道を通っていたが、そこらじゅうで道路工事をしていて通りづらい所がたくさんあった。そして工事に伴い大型トラックがバンバン通って結構危なかった。チャリで走るのには向かない道である。

記憶が確かではないが、たぶん大月のあたりのコンビニで昼食をとった。もうすっかり日が昇っていて、予想どうりメチャ暑くなっていた。コンビニの駐車スペースで座って飯を食べていると一人のチャリダーが休憩のために止まった。なんか親近感がわいてきたのであいさつでもしようかななんて思ったが、むこうがシカトしてきたのでこっちもむかついて話しかけなかった。そのチャリダーは一度コンビニの中に入って出てくると、後はひたすらチャリをいじっていた。おそらくどこか調子が悪かったのだろう。そしてしばらくしてそのチャリダーの仲間らしき人がやってきて、ゴチャゴチャ話した後、2人はおれがやってきた方向に出発した。そしておれも山梨へ向かって出発した。

笹子駅の数km手前に殺風景な公園があった。そこには特に寄るつもりはなかったが、歩道を走っていたら間違ってその公園に入ってしまった。出ようとしてもフェンスがずっと続いていて、200mくらい戻って車道を走らなければなららかった。しょうがないからついでに休憩でもするかな、とベンチに横になった。そしたら寝不足の日々が続いたせいか、なんと眠ってしまった!30分くらいたって目が覚めたが、寝ぼけていて見慣れない周りの風景にしばらく状況がつかめなかった。そして我に返ると、戻るのがめんどくさいのでチャリを持ち上げてフェンスを越えてむりやり車道に出て、出発した。

中央自動車道とJR中央本線は笹子から笹子トンネルに入る。しかしこのトンネルをチャリで進むのは無謀である。以前友達がチャリで入っていったことがあったが、あまりの危険さに途中の避難口からでてきたそうである。もちろんおれもわざわざそんなところは走りたくないので、もう一つの道を選んだ。

その道は県道212号で、笹子峠を越えるルートである。始めのうちは少し民家などがあったが、すぐ何もなくなった。すでに80kmを走っていたので、峠はかなり辛かった。でも峠のふもとからスタートしたらそんなにきつい峠ではなかった。車も少なく、景色もよく、木の陰で涼しかったので快適に上れた。

車は少ないが、トラックがたまに通っていくのでもしや上で工事をしているのでは?と思いながら上っていた。一台のバイクと一台の車がおれを抜かしていった。しかししばらくしてバイクがきた道を戻ってきた。やっぱり工事中で通行止めなのか?と不安が頭を横切った。そして車も引き返してきた。

そのときちょうどおれは休憩していた。すると車がとまって、ドライバーが「この先車で10分くらいのところで工事しててさぁ、通行止めなんだよ。でももしかしたらチャリンコは通してもらえるかもなぁ。」と教えてくれた。ドライバーにお礼を言ってまた走り始めたが、不安が絶えなかった。もし通れなかったら今まできた道をまた戻って、笹子駅から輪行?そんなのごめんだぞ、なんてことを考えながら上った。そしてしばらくして工事をしている所にやってきた。工事現場のおじさんはおれに気づくと工事を一時止めてくれて、おれはチャリを持ち上げてそこを通してもらった。

工事現場を通過してすぐのところで休憩した。しばらくすると一人のチャリダーが上ってきた。どうやらおれの何百メートルか後ろを走っていたようだ。そのチャリダーはおれにあいさつをして通り過ぎていった。おれもいつまでも休んでいるわけにはいかんと思い、すぐ出発した。するとすぐあのチャリダーが前の方に見えた。どうやらおれとほとんど同じペースのようだ。工事してたところがかなり峠に近かったので、すぐ峠のトンネルについた。

トンネルの手前でチャリダーが止まっていた。どうやらライトを持っていないようだ。そのトンネルは照明がなく、中は真っ暗だった。それで少し戸惑っていたようである。おれはそのチャリダーを抜かしてライトをつけてトンネルへ入っていった。するとチャリダーはおれの後をついてきた。なんとおれがライト代わりにされてしまった。トンネル内はライトをつけても走るのがちょっと恐いくらい暗く、上から水が垂れてきたりして不気味だった。おれはチャリダーに追いつかれまいと飛ばしてトンネルを抜け出した。

トンネルを抜けるとなんだか別世界に来たみたいな感じがした。山々に囲まれているところは同じだが、なんか雰囲気が違っていた。峠を上ったあとに待っているお楽しみは下りである。下りは爽快だった。たまにカーブでさっきのチャリダーが追いかけてきてないか確認したりしながら下っていった。どうやらチャリダーはちぎったようである。下りの終わりの辺りには民家がいくつかあって、小学生が何人かで遊んでいた。そしておれが勢いよく颯爽と下っていると、「かっこいい〜」と言っていた。なんか気分がよかった。

下りきると勝沼ブドウ郷のそばを通り、あたりはいよいよいなかっぽくなってきた。山梨市に入ると少し町っぽくなってきた(といってもここらからみれば十分いなかだが)。地元の中学生や高校生らが物珍しげにおれを見てくる。道を間違えそうになったがなんとか山梨市駅ついた。そこからはいつもならタクシーでいく道を進む。いつもタクシーで行く道をチャリで走っているのもなんか新鮮だった。そして午後3時半ごろ、山梨県江曽原のいなかについた。夕飯をごちそうになった後、塩山の親戚の家に行って夜はそこで一晩を明かした。

次の日、だるくてもう昨日来た道を戻る気力がなかったので、八王子まで輪行することにした。やはり1泊2日で往復走ろうというのは無理だったようだ。昼頃電車の時間に合わせて親戚の家を出て、塩山駅に向かった。そして駅で輪行をしたが、うまくいかない。いまでこそ少しましになったが、この頃はひどく輪行がへただった。なかなか袋に入れられずにいると、通りすがりの小学生がタイヤがはずれているおれのチャリを見て「なんだこれ、かっこわり〜」と言って去っていった。かなりむかついた。たしかにかっこよくは見えないけどね。

輪行にてこずっているうちに乗る予定だった電車が来てしまった。あせるがもちろん間に合うはずがない。電車は行ってしまった。そしてようやく輪行が完了して駅に入った。次の電車は1時間以上待たなければならなかった。

ひたすら電車を待って、ようやく電車に乗れた。もちろん輪行したチャリは注目の的だった。周りの視線はひたすらシカトして、週間少年ジャンプを読んで時間をつぶした。チャリで来るのはすごく時間がかかったが、電車で帰るのはあっという間だった。

八王子駅を降りると近くの交番の前でチャリを組み立てることにしたが、かってに組み立て始めたのでお巡りさんにおこられた。組み立ていると一人の警官がけいらから戻ってきた。そのお巡りさんはおれを見るなり話しかけてきた。話によると、そのお巡りさんは学生の頃おれと同じようにチャリで色々な所を走っていたそう。合宿で北海道を走ったことを話すと、おれも北海道走ったよ、とまた話に花が咲く。

そのお巡りさんが言っていたことで印象にに残ったことは、「今のうちに旅行とかやっといたほうがいいよ。社会人になるとそんなのできなくなるからね。学生は金がないけど暇がある、社会人は金があっても暇がないから使いたくても使えないんだよ。」という言葉である。なるほどねと思った。

八王子を出発して御殿峠を上った辺りで日が沈み、後はナイトランになった。疲れが残っていたが16号ではひたすら飛ばして一気に家に帰った。いい経験になったが、もう二度とチャリでいなかには行かないだろうと思った。でもいろんな事があって、すごく内容が濃かった。
コース:
(1日目)大和→国道467→相模原→国道16→国道413→城山→津久井→国道412→相模湖→国道20→藤野→上野原→大月→県道212(笹子峠)→大和村→国道20→勝沼→県道303→山梨市
(2日目)八王子→国道16(御殿峠)→相模原→大和
8/30日分
走行距離 113.62 km
走行時間 5h 51m 59s
平均速度 19.3 km/h
最高速度 54.0 km/h

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