デファレンシャル

 

ロードスターに限らず車以外でも複数のタイヤなどをもって旋回するには左右のタイヤの回転差が発生する。キャタピラ駆動なんてのはあえて左右の駆動率を変化させて旋回するのだから曲がる為には左右の回転差を吸収する何かが必要となる。車で言う所の「デファレンシャルシステム」がそれに当たる。

我らがロードスターはFR駆動方式だからフロントはフリーホイールで関係無いが、駆動を伝えるリアにはデファレンシャル(以下デフ)が装備されているNA6ならビスカスカップリング方式、NA8ならトルクセンシティブ方式などのリミテッドスリップデフ(以下L、S、D)、AT車や限定車などはオープンタイプと呼ばれるごくシンプルな物が装着されている。これは状況によって左右の回転差を吸収するようになっている。本来駐車場などで旋回したいときなどで思いっきり差左右の回転差が生じる、駆動力も10と例えるなら内輪に4外輪に6の力を伝えて走るのである。

通称オープンデフと呼ばれる物は左右回転差に対してフリーであり、低速時などタイヤスリップ率の低い時は非常にスムーズでタイヤにも負担が掛からない。デメリットとしては雪道などの低ミューの路面やハイスピード時や急なアクセルワークなどスリップ率の高い場合は滑ったタイヤ側に駆動力が逃げてしまう点である。10の駆動力が右タイヤが滑ってしまった場合そこに10が掛かってしまい駆動力は逃げてしまうのだ、左は0となるので車は進めない。低燃費車やパワーの無い車、コストの面でも有効なのだが、スポーツカーなどには向かない。

じゃ、左タイヤを動かすには?デフ本体の回転差に抵抗を付ければ良いのである。NA6のデフがそれで内部に硬いオイルが封入されていてその粘度で左右の回転差に抵抗を付けて駆動力の逃げを抑えている、オープンデフなら右が10滑ってしまう所を8に抑えて左に2の駆動力を配分して2の力で前に押し出すのだ。構造的にはもっと固くも出来るがメーカー標準装備を目的としてセッティングされており違和感の無いスムーズな旋回が出来るように柔めに出来ている、オイルの粘度を抵抗としているので硬めのオイルを入れてしまうと温度差により効きが変り、朝一の凍結路面で強く効きそうで怖いかも・・・一般道を普通に走行するには僅かな旋回抵抗は有れどスムーズなので十分である。本格スポーツ走行時はまだまだ内輪がインリフトしてしまうのでもう少し内部のオイルが硬ければ良いとも思うが、熱くなると弱くなるという特性などもあるかもしれない。

NA8の通称トルセンデフ(ヘリカルなども)はデフ内部に複雑なウォームギアにより抵抗を作り、状況によってトルク配分を変えてしまうというシロモノ。内側がスリップした場合でも外側に駆動を伝えて無駄なく走る事が出来る。内部ギア比を変えれば効き方も調整できるだろうけどメーカーでもない限りは無理。メンテナンスは基本的に不用でスポーツ走行もこなせる。デメリットとしてはインリフト等で完全に駆動力がどちらかのタイヤに逃げた場合はオープンデフと同じで前には進めない、確実に内輪も駆動力を路面に伝えている事が優先される。これはアクセルオフ時にも言える事でブレーキング時の安定感に欠けてしまうのである。他車種では電子クラッチが装備されて任意で調整できるタイプもあり、今後ロードスターにも採用されれば夢のスポーツLSDになる可能性もアリだがコストが掛かる。

ロードスター純正装着では無いが各パーツメーカー製の機械式LSDも今もっともスポーツ志向の強い物として発売されている。昔からその構造には大差なく基本はオープンタイプで左右にプレッシャープレート(コイルスプリングもある)にて数枚のクラッチ板を押し込み抵抗を付けると言う物、構造も簡単で個々の調整も可能、柔らかくすればオープンに近くなるし極薄いシム等でクラッチのプレッシャーを強くすればデフロックに近くなる。ただし、調整はある程度「なりゆき」感が強く、組み付け時のイニシャルトルクと実際に走行し馴染んで来た時の効き方に変化があり、一定の効きを持続する事は難しい緩くなってきたらメンテナンスするしかないのである。アクセルに対してレスポンス良くシビアに反応してくれるのでテールスライド時の微妙なコントロールには不可欠だったりもする。遅い速度でテールスライドするならセッティングも何もロックしてれば良いのでイニシャルトルクを上げてやれば良かったりもするが・・・速くは走れない。

で、LSDは強く効けば良いのか?

なんて言ってもLSDはセッティングパーツであり、車の使い方に合わせた調整が必要になる。元々左右の回転差を吸収するパーツなだけに固めれば良いってモンじゃ無い。機械式の硬め過ぎは低速時に回転差を吸収し切れずに曲がり難くなるし曲がる為にはスライドさせるか、無理矢理インリフトさせるようなセッティングにするしかなくなる。しかし高速走行時などはリアのトラクションが車の安定を保ち硬いダンパーとの組み合わせでシビアなインリフトでも車は前に出るように硬めに調整となるがソレがオールマイティでは無いと言う事。使い方によってはタイムの安定やタイムアップに繋がるが、セッティングされて無いLSDなら幅広い効きのトルセンの方がタイムが出る場合が多い、その代わりピンポイントで調整された機械式LSDはトルセンでは敵わないアクセルオン時のレスポンスと駆動力を生み出しタイムに繋がる。ま、いずれもスポーツ走行時の話であって一般の使用ならトルセンのような確実なロック感は無いがオールマイティと言う事になる、LSD自体が補助的に制御するパーツでありインリフトするようなら足回りでなんとかするのが本来だったりもするので完全なレーシングカーでも無い限りストリートではトルセンが一番扱い易いと言える。

自分に合うデフ選びをしよう!