「全国アホ・バカ分布考」−はるかなる言葉の旅路−
松本修 著
新潮文庫 ISBN4-10-144121-9 \720

 知的冒険………。実にわくわくしてくるこの言葉を久しぶりに味わった本。とりあえず大お勧めです。

 著者の松本さんは朝日放送の現役プロデューサー。この抜群に面白い本ができる発端は、彼がプロデュースする人気番組、「探偵!ナイトスクープ」に寄せられた一枚のはがきから。大阪生まれのご亭主と東京生まれの奥様の間にふと涌いた、「大阪はアホ、東京はバカ。ではアホとバカの境界はどこかにあるのだろうか?」という疑問。直ちに探偵(北野誠さんだったそうです)は新幹線に飛び乗って、「アホ」「バカ」の境界を探しに出かけるのですが………。

 一般的に「知的冒険」の書というのは、強力な知力を持った著者による、読んでる側がひたすら感心してしまう知的な推理の筋道の鮮やかさを楽しむものなのですが、この作品はそういう「知的冒険」とは全くちがう、新たな切り口を持った知的冒険の書。何が違うかといって、この冒険の主役は、テレビを見て参加してきた一般視聴者である、というところ。史上初の一般参加イベント型の知的冒険潭なんですね、これ。

 とはいえそれだけにとどまらない、著者の松本さんの魅力もこの本を面白くしている大きな要素でしょう。最初のインスピレーションは、確かに一葉のはがきであったかもしれませんが、調査を進めていくにつれ、他ならぬ松本さん自身がこのテーマにずぶずぶとのめり込み、素人言語学者が、いつしか御自身も確固たる「学説」をもった研究者となっていく様子も読みどころの一つ。沖縄につたわる「バカ」を意味する「フリムン」の語源を追求していく松本さんの推理、調査の過程など、ほとんど感動的ですらあります(^o^)。

 中身をあんまりばらしちゃ面白くないんでこの辺にしときますが(^^;)、とにかくこれは乞ご一読。抜群に面白いですよ\(^o^)/


乱土 労馬