表紙 「世界の教科書は日本をどう教えているか」
 別技篤彦 著
 カバー装填 神田昇和
 朝日文庫
 ISBN4-02-261272-X \680(税別)

 さすがにフジヤマ、ゲイシャでもないだろうけれど、それでもたぶん、日本って国は外国ではまだまだ誤解や無理解があるのだろうと思います。実際に世界各国の教科書を調べ、世界の各国が一体日本という国を、子供たちにどんな風に教えているのかを調べた労作。著者の別技さんは以前、「戦争の教え方」という本を紹介したことがありますが、このときも教科書がテーマでした。

 教科書の記述の内容もそうなのですが、それ以上に興味深いのは、世界各国の学校での教え方、特に"社会科"。何でも日本で今のような"社会科"という概念が持ち込まれたのは、敗戦後、アメリカの方針によるものなのだそうです。ただ、本来アメリカで教えられる社会科は、日本で連想されるような、地名や年号の暗記物に終始するようなものではなく、もっと積極的に生徒たちにいろいろなことを考えさせるような形式を取っているようです。

 僕は歴史は好きだったんですが、たしかに日本の学校で習う歴史や地理ってのは、あまりに断片的な単語の暗記物でしかないように感じられます。別技さんも本書でこんなことを書かれています

 日本の社会科教育、あるいは地理の授業では中・高校段階になっても、どこそこの人々は米を栽培し、どこそこの人々は麦を作る………程度の記述にとどまる。大事なことはそうした原料がいかに調理されて日常の食生活となるかの記述である。この「人間不在」「生活の無視」が教科書から興味を奪い去っているのである。

 全く同感。教科書が無味乾燥でなければいけない、なんて決まりはないのにね。

99/8/29


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