表紙 「沈黙のファイル」 『瀬島龍三』とは何だったのか
 共同通信社社会部編
 カバー写真提供 共同通信社
 新潮文庫
 ISBN4-10-122421-8 \629(税別)

 かつての大本営参謀で戦後シベリアに抑留され、のち伊藤忠商事の顧問、自民党の代議士たちの顧問として戦後史の陰で暗躍したといわれる瀬島龍三、今も健在で、特に自民党代議士たちには今も彼の著書を愛読する人物や、その忠告をありがたがる向きも多いそうですが、では瀬島龍三とはいったいどういう人物であったのかを、かつての大本営参謀部時代の同僚、シベリア時代の捕虜収容所の関係者、戦後のKCIA高官らのインタビュー主体でまとめられた本。

 日本の裏社会に暗躍する、もと大本営きって(といわれる)の大物参謀、ってだけで、なにやらぷんぷんとアヤしい匂いがしてきますが、本書を読んでみてまず感じることは、意外にも瀬島という人物が、われわれが想像していたような辣腕の切れ者、って言うよりはむしろ無能な変節漢でしかなかったということでしょうか。たしかに成績優秀であったかもしれないですが、彼の半生はその能力を存分に発揮した波乱万丈なモノなどではなく、むしろ失敗続きのモノであったようです。にもかかわらず隠然たる影響力を失うことなく、あいかわらず妖怪のごとくうごめいていられるのはなぜなのか?………

 残念ながらここがちょっと見えてこないんだなあ(^^;)。機を見るに敏な変節漢であるだけでそうそう長く、陰の実力者の地位を保てたとは思えないんですけど、んじゃあその影にどういう理由があるかが分かると良かったのですが、そこら辺わからなくってちと残念。船戸与一さんが解説で"興奮を覚えながら本書を読み終えた"って書いてらっしゃるんですけど、まいったな、興奮しないぞ(^^;)。


99/8/15


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