表紙 「東京開化えれきのからくり」
 草上仁 著
 カバー:唐沢なをき
 ハヤカワJA文庫
 ISBN4-15-030620-6 \820(税別)

 大政奉還ののち、東京市と名前を変えた江戸の街。文明開化のハイカラな風俗と、昔ながらの江戸気質の入り交じる明治初めのこの街を騒がす怪事件。かつて岡っ引として活躍していた善七は、現在の警視庁にあたる、市中取締組の少警部、宮本の願いを請け、彼とともに事件を捜査する探偵として、とある殺人事件の捜査にあたる。一方東京市は頻発する謎の火災にざわついていた………

 短編SFの名手、草上仁さんのこれはなんといったらいいのか、開花時代の仮想捕物帖とでもいうか。もちろんそこは草上さん、一筋縄でないかない面白さ。

 西洋文明の突然の奔流のようななだれ込みと、その中で新しい文明を積極的にとり込もうとする者、新しい文明を憎む者、昔ながらの伝統に従おうとする者、さまざまな立場の人々がそれぞれの思惑を胸に自分なりの行動をとるわけですが、ここらあたりの書き込みが大変に楽しくて、ついついページをめくってしまいますね。ちょうど横田順彌さんの一連の押川春浪モノのノリ、って感じって言えば判る人には判っていただけるか(^^;)

 虚実の人物が織り成す奇想冒険捕物帖、悪役の動機づけにもう一工夫欲しかった気もしますが、唐澤なをきさんの達者なイラストも楽しめてまずはお買い得。楽しいですよ(^o^)


99/7/24


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