表紙 「リメイク」
コニー・ウィリス 著/大森望 訳
カバー:東恩納裕一
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011275-4 \580(税別)

 21世紀のハリウッド。この時代の映画産業の主流は、高度のデジタル技術を用いてかつての名画のさまざまなバリエーションをつくることにあった。最新のデジタル合成システムを使えば、"ベン・ハー"の主役をチャールトン・ヘストンからシルヴェスター・スタローンにすげ替えることなど朝飯前なのだ。

 この街でデジタル合成技術者として働くトム、生来の映画好きゆえに自分の仕事にわだかまりを持ちつつデジタル・リメイクの作業をつづける彼が、一人のダンスを愛する少女、アリスと出会ったところから始まる不思議なラブ・ストーリィ………。

 いやー、甘い、甘いぞドモン………じゃなかった(^^;)。こっちが気恥ずかしくなるような大甘ラブ・ロマンスSF。コニー・ウィリスってこういうの書く人だったっけ?って思うぐらい、甘くストレートな恋愛小説なんですが、その背景がやたらSFしてますね。なんつーてもここで語られる、昔の映画を最新の技術で新しい映画に仕立てちゃう、ってコンセプト、それほど荒唐無稽じゃないですもんね。実際、不完全ながらも"スター・ウォーズ"はそれに近いことやってるわけだし、過去のタイトルによりかかって新しいモノをつくることに躊躇する、って流れは今の世の中のあちこちで散見できるわけですし………。

 ぶっちゃけた話たとえば僕だって、今のゴジラ映画に若い頃の平田昭彦さんが出演しているところ、ってのはそれなりに見てみたいですし、でもそれってやっちゃいけないことのような気もするし、なかなか複雑な心境になるんでしょうね、ここで描かれる世界が現実になってしまうと。

 それはそれとして、一つの映画ファンの妄想が現実になった世界を楽しみつつ、大甘のラブ・ロマンスを、「てへ」とかいいながら読んで行くのが正しい味わい方と申せましょう。ちょっと短いけど、長々つづけるような話でも無さそうですね(^^;)。

99/7/11

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