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「過ぎ去りし日々」 ロバート・B・パーカー 著/菊池光 訳 カバー:辰巳四郎 ハヤカワ・ミステリ文庫 ISBN4-15-075672-4 \880(税別) |
"スペンサー・シリーズ"のパーカーによる、アイルランド系アメリカ人、シェリダン家の三代の男を主人公にした大河小説、というかなんというか。まあヴォリューム的には物足りないけれども、これもまた"大河小説"と呼んでいいお話なのではないかな。
IRAの冷酷なテロリスト、コン・シェリダン。自分の命も省みない、激しいテロ活動を続ける彼は、あるとき美しい人妻、ハドリと出会って激しい恋に落ちる。だが、激しい恋の成り行きに恐れをなしたハドリはコンを警察に売り渡してしまう。IRAの助けを借りて脱獄に成功したコンだったが、愛した女に裏切られた心の傷は深く、もはやIRAの活動にもなんの意義も見い出せなくなっていた。
虚無的な心理に捕われたままアメリカに移り、ボストンで警察官となって残りの日々を生きるコン。死すらも大した事でないかのように振る舞い、ボストン屈指の警官となったコンに、ハドリとの皮肉な再会が待っていた。やがて時は流れ、コンの息子ガス、そしてガスの息子クリスと続いて行くシェリダン家の男たちの系譜には、この、コンとハドリの再会が大きな影を投げかけることになるのだった………。
"スペンサー・シリーズ"中の「初秋」が、父親を演じるスペンサーと、「息子」になる自閉症の少年ポールの間の厳しくも細やかな心の触れ合いを描いて名作となったわけですが、この作品のテーマもまた父と子、ってことになりますか。必ずしも「良い夫」にはなれなかったけれども、その分のマイナスを、ぎこちなくもひたむきな息子との触れ合いで埋め合わせようとするコン、そしてガス。彼らの姿を見て育ったがゆえに、愛するということに必要以上の完璧さを求めてしまうクリスの描写が秀逸で、なかなか読み応えのある一冊ではないかと思います。訳は菊池光さんだし(笑)。
ということで炸裂する(^^;)菊池光節をお楽しみください
「大仕事だ」クリスが言った。
「そうだな」
「終わったら楽しみだな」
「やるのが楽しみなんだ」ガスが言った。「たとえおれがやり終えなくても」
「その点を考えていたんだ」クリスが言った。
むうううん、キてますねえ(^^;)。あるいは、こんな感じ。
「私と結婚したい、と言った時、条件はなんだったの?」
「一夫一婦婚だ」
「ほかにはないの?」
「全くない」
「筋の通った条件のようね」
どぉわっはっはっはっは(^o^)。菊池さん、サイコー\(^o^)/