表紙 「リモート・コントロール」
 アンディ・マクナブ 著/伏見威蕃 訳
 カバーデザイン つちやかおり(next)
         (c)KIM STEELE/amana images
 角川文庫
 ISBN4-04-279001-1 \1048(税別)

 英国が誇る特殊作戦部隊SAS(スペシャル・エア・サービス)に所属し、今は英国秘密情報部の工作員として活動するニックは、任務でアメリカに飛ぶが、任務遂行直前に不可解な作戦中止命令を受け取る。不審に思いつつも余った時間を利用してSAS時代の同僚で、現在は米国の麻薬取締局に勤務するケヴを訪問しようとする。だが、ひさしぶりに訪れたケヴの家は凄惨な殺戮の現場となっていた。ただ一人生き残った7才の娘、ケリーを連れ、現場を離れたニックだったが、こんどはその殺人の容疑者として、自分が追われていることに気付く。しかも生き残った娘、ケリーのほうはいまだに殺人者たちに狙われているらしい。必死の逃亡を開始するニックとケリー。なぜ追われるのか、そして誰がケヴとその家族を殺したのか………。

 いやこれはなかなか面白い冒険小説。フレデリック・フォーサイスが「この男はホンモノだ」と評したそうですが、実際に著者のアンディさん、SASに所属して湾岸戦争では実戦を経験しており、SASに関する著作もあるってことで、"ホンモノ"なのはマチガイありません。が、それだけではなく、この小説の魅力は、7才の女の子を守りつつ追っ手から逃れ、陰謀の正体を探ろうとするタフガイ、って、魅力的でシンプルなシチュエーションを考え出したところにあるんだと思います。

 ようやくモノがわかりはじめたけれども、まだまだ遊びたい、背伸びしたい、しかも両親、妹と離れ離れになってしまった少女を守りつつ、孤立無援で、頼りになるのは自分の特殊部隊員としての知識と経験だけ、ってのが、お話にいい緊張感を与えているように思います。今風な、パソコンを使ったくすぐりなんかもあったりして(まあGIFを開けないWindows95なんてあるかよおいー、なんてところもあるんですが(^^;)サービス満点です。ここに、前述の"ホンモノ"感をブレンドすることで、シンプルでタイトな、いい冒険小説に仕上がってますね(^o^)。

 "ホンモノ"ってことでは訳者の伏見さん、こんなことを"訳者あとがき"でおっしゃっています。

 過激なことをいえば、この小説を読むと、ある冒険小説作家が好んで登場させるIRA活動家など、絶滅した恐竜に思える(もとよりそういう描かれ方ではある)。別のベストセラー作家の最新作に登場するCIAの殺し屋など、あまりにprimitiveなのに驚くほかはない。それほど大家たちは現代社会の真相と乖離している。

 過激です(笑)。それはともかく、前者はジャック・ヒギンズのショーン・ディロン、後者はトム・クランシーのミスター・クラークを指しているんでしょうね。ま、たしかに本作のリアリティ、特に秘密工作のディティールの描き込みはなかなかのモノがあります。いいスパイスになってますね。一点文句をつけるとしたらカバーイラストかな。なんか本書の内容とあんまり関係ないような気がするぞこのカバー。ちゃんと内容読んでカバーデザインしたかー、つちやさんとやら(^^;)。

 映画化しても面白いものになりそうです。主人公はブルース・ウイリスかな。トム・ベレンジャーとかも、いいかも(^o^)。


99/6/9

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