提督ボライソーの最期

海の勇士・ボライソー(24)

表紙

アレグザンダー・ケント 著/高橋泰邦 訳
カバー 野上隼夫
ハヤカワ文庫NV
ISBN4-15-040969-2 \900(税別)

 はあ、ついにこの日が来てしまった………。ボライソー、地中海に死す。哀しいのう。

 ロシアでの大敗をきっかけにその勢力を大きく削ぐことになったナポレオンはやがてトゥールーズでもウェリントン公爵の軍に敗北し、ついにエルバ島に幽閉の身となる。ついに全欧州を巻き込んだフランス革命とそれに続くナポレオン戦争もようやく終結したかにみえた1814年。地中海に跋扈する海賊たちに不穏な動きありと見た英国政府は、海軍大将ボライソーに地中海の通商路確保のため、艦隊を率いて再び海上にあった。束の間の安らぎのときを不意にした、いつもの"幸いなる少数"とともに。だが、海賊たちの跳梁の裏には、復活をもくろむナポレオンの影が………

 このシリーズを読んでる人ならご存じの通り(なんともう20年も続いてるんですねえこれ。そういや第一巻を読んだ時は、オレ、まだ学生だったもんな)、ボライソーの一生はシリーズがスタートした時点で決まっており、ついにその時が来てしまったワケですが、せめてものなぐさめは、これにてシリーズ終了、ではなく、最後のボライソーとなったリチャード・ボライソーの甥、アダム・ボライソーを主人公に、さらにシリーズが続くって事でしょうか。齢を重ね、地位が上がったがゆえに直接船を操り、戦闘の真っ只中に切込むことができにくくなっていたリチャードに換わり、若さにあふれたフリゲート艦長としてのアダムが活躍するってことで、シリーズも再び活気にあふれた物になるのかもね。楽しみではあります。

 しかしながら、リチャードの死と、それにかわるボライソーのお披露目を同時にやろうとしたせいか、本書自体は、なんといったらいいか、ここまでで最高のクライマックスを迎えなければいけないにもかかわらず、いまいちその、悲劇的な盛り上がりに不足しているきらいがなくもない。今回はアダムの出番はもう少し控えめでもよかったのではないか。ただひたすら、リチャードの最期に至る流れのみを追い続けていって欲しかったような気がしないでもない。

 とはいえなかなかに感慨深い一冊ではあります。リチャードの死と共に20世紀は終わり、21世紀には新しい海の勇者が登場するって訳ですな。

00/12/3

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