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「缶ケリ」は、日本全国、ポピュラーな遊びでしょう。 きっと色々な「ワザ」があることと思います。 「いかにして缶を蹴るか!」。「いかにして見つけるか!」。これにつきますね。 |
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用意するもの | ・空き缶 今じゃなんなく見つかる「空き缶」も、私の子どもだった頃は結構貴重だった。 当時売っていた「缶ジュース」にはプルトップなどなく、缶の上ブタに缶に穴をあける小さな“缶開け”がくっついていて、それで両側に穴をあけ飲んだものだ。 で、当然高価であり、長屋暮らしの小僧どもには年に何回も手にすることができない代物だった(少々オーバーか・・・)。 自販機はもっぱらお金を入れると液体ジュースが出てきて、それを紙コップに入れて飲むものだった。 これも慣れていないと大変なことになる。 お金を入れると間髪入れずに、当時は「チクロ」が一杯入っていただろうしつこく甘いジュースが定秒間無感情に流れ出てくる。 が、今でもあるこのタイプの自販機は、当然先にコップが出てくる訳だが、そんなサービスなど当時はない。 彼は30円を握り締め、一枚二枚・・・と、八百屋の店先にある自販機に十円玉を入れていく。 彼は大好きな「グレープジュース」を選択している。「久しぶりだよな〜」。思わず生ツバを飲み込み三枚目を入れる。 自販機は「ブーン」と音を上げ、間髪入れずにシャ〜とグレープジュースを放出する。人工的な紫の液体だが、彼にはこの上なく光り輝いて見える。しかし、その瞬間、彼は己の未熟さを思い知らされ、絶望する。 「コップ置くの忘れた〜!!!」(T_T)。 後の祭りである。彼が絶句している数秒間で、グレープジュースの放出は無表 情に終了した。彼がその乾いた喉を潤すはずだったグレープジュースは、哀れ 受け皿の奥へと流れ消えていった。彼にかける言葉が見つからない…。 そんな訳で、缶ジュースの缶のほかにも、缶詰やミルク缶などもよく使った。それも蹴飛ばされてひしゃげた部分を直し直し使っていた。 形としては、次項の「遊び方」でも説明するが、鬼が逃げ手を見つけて缶を踏む時に倒してしまうと全員「のがれ」になる。なので、ジュース缶など、なるべく縦長の缶を使用する。シャケ缶やイワシ缶だと平べった過ぎて、「缶倒し」の緊張感がなく、面白くない。 「缶ケリ」の始めは、よりよい空き缶を探すところから始まる。 ・遊ぶ場所 缶ケリは基本的には「市街戦」である。よって、どこでもできる。 神社の境内、長屋の広場、工事現場、資材置き場、誰かの家の庭、校庭、校舎の裏…。遮蔽物のない原っぱなどはあまり適当でないが、校庭のど真ん中に缶を置いてやったこともあった。 「鬼に有利になるか」、「逃げる子らに有利になるか」、が缶を置く場所で大きく変わるが、それなりに工夫していた。 まずは公平を基本に、適当な鬼の陣地を決める。 |
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遊び方 | ・鬼決め ジャンケンなどで、一人「鬼」を決める。 ・はじめに、任意の誰かが「缶ケリ」の始球(缶)式よろしく、缶を蹴飛ばし、鬼がそれを拾ってきて、100とか、200とか、あらかじめ決めていた数を数える。 (一応)目をつぶって数を(始めは)大きな声で数える。 その間に逃げる子らはそれぞれの作戦を胸に(一応)決めておいた逃げてもいい範囲内に散らばっていく。 ・数を数え終えた鬼は、逃げる子らを見つけ出し、名前をコールし、缶を踏む。 鬼は逃げ手を見つけると、その子に「見つけたぞ」と分かるようにその子の名前をコールし、缶を踏む。缶を踏まないと捕まえたことにならない。缶を踏む時にも見つけた子の名をコールする。誰もそばにいない時でても律儀にやっていた。 何人か見つけておいて、まとめて缶を踏んでもよい。 鬼は、缶を置いてある周りに描いてある直径2m位の円の外にいなくてはいけない。待ち伏せ禁止のルールである。オフサイドのようなもの。 見つけた時だけこの円の中に入り、缶の上を踏む。 缶は立てて置いてあり、鬼が逃げる子を見つけ、缶を踏んだ時に倒すと、「缶倒し」となり、無効になり、それまでに捕まっていた子も全員「のがれ」となる。 ・全滅 七色の作戦にて全員捕まえると、一番先に見つかった子が鬼となる。 |
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思いっきり遠くに缶を蹴っ飛ばせ! | ||||||
逃げ手の作戦 | ||||||
「カーン!」。缶が蹴られた。「缶ケリ」の始まりだ。蹴られた缶を取りに鬼の子がダッシュする。逃げ手の子らも四方八方へと散らばる。 「さて、どうやって蹴ってやろうか!」。逃げ手の子らは目をギラギラさせて作戦を考える。 缶を蹴った子はヒーローだ。「今日は何回蹴ったか」、でワンパク集団での認知度が決まっていく。「缶ケリ」はいつも気が抜けない気合が入る真剣勝負だ。 猿飛佐助やワタリ、風のフジ丸、伊賀の影丸がお手本だ。ジェームスボンドやナポレオンソロ、スパイ大作戦も思い出せ〜! |
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序の口 | ・ひたすら隠れとおす 鬼に見つからぬよう声を潜め、隠れとおす。 缶を蹴り、「捕まっている子を助けるようなリスクは似合わない!」、と決めている子には最適。 ・脚力 うかつにも遠くから鬼に目視されたら、そこで勝負は決まってしまう。 どんなイダテンでも鬼が缶を踏む前には追いつけない。しょんぼりと鬼の陣地へ出頭していくしかない。 でも、五分と五分ならば最後は脚力勝負に持っていける。 彼は物陰に隠れながら徐々に鬼の陣地、つまり缶に近づいていく。 鬼も逃げ手の子を見つけんと、機敏なるフットワークで右に左に、前に後ろにポジションを移し、鷹の目のように逃げ手の子を探している。 最後の遮蔽物まで見つからずにたどり着いた。陣地を覗くと鬼がこちらへと近づいて来るではないか!今引き返せば後姿を見つかってしまう。息を殺して隠れているしかない。一歩一歩距離が詰まる。この緊張感がたまらな〜い! はたして鬼は、自分の潜んでいるすぐ横にさしかかろうとする。見つかるのは数秒の問題だろう。 まさに、「あ!Aちゃんみっけ!!!」と言ったその瞬間、加速装置にスイッチが入った。「カチッ!」。鬼との競争である。土煙を上げて二人は走る。 まるでエイトマン東八郎VS009島村ジョーだ!桑田次郎VS石森章太郎だぁ〜!「彼らの運命やいかに!?」・・・。 |
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二つ目 | ・一揆 一斉に缶目掛けて突撃する戦法である。 鬼はひとりひとりの名前をコールし、ひとり分ずつ缶を踏まなければならない。 一斉に襲撃することで、全員がコールされる前に残りの子が蹴飛ばす訳だ。 一箇所から一斉に飛び出すこともあれば、左右や前後の二手に分かれて仕掛けることもある。 その際、飛び出すタイミングを合わせるのが重要なポイントとなる。もしずれたりすると一網打尽になる可能性もある。 ・陽動作戦 鬼を一方に引きつけておいてそのスキを突く作戦だ。 この戦法には2種類ある。ひとつは、右翼の方で、大きな声や物音をわざと立てて、鬼の注意を引きつけ、左翼から突くのだ。逃げ手同士の連携が大切。 もうひとつは、スパイを送りこみ、その情報によるかく乱である。 逃げ手が残り少なくなってきた時に使う作戦だ。 残り数人となり、大きな作戦は立てられない。ひとり犠牲になるリスクはあるが、手強い鬼を負かすにはこの作戦しかない。 作戦会議終了。ひとりがわざと(らしくないように)鬼に見つかり、捕まる。 捕まった子は、逃げ手の居場所について、既に捕まっている子に話しているようにして情報を与える(当然がさネタ)。 演技力のいる場面だ。直接鬼に言ったのでは逆に怪しまれることを知っての上での作戦である。 当然、既に捕まっている子も欺く(見方をダマしてこそ成功するのだ)。 高学年の子らは、「ハハーン!」と、彼が何をしようとしているのかが経験上分かる。「バカ、もっと小さい声で言えよ」、などとフォローがあったりする。 鬼はそんなやり取りを聞いてないフリして聞いている。がさネタ通りの方向へと向かってくれれば大成功なのだが・・・。 ・至近距離待ち伏せ 開始早々、奇襲を仕掛ける作戦だ。 遠くに逃げたと見せかけ、実は至近距離の遮蔽物に身を隠し、鬼が少しでも缶置き場から離れた瞬間に蹴飛ばすのだ。 体の半分程度しか隠れない、すぐに見つかりそうな所に隠れていても案外成功する。鬼の意識が遠くにいっているからか? ただ通用するのも一回位だった。鬼もそうそう同じ手は食わない。 |
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真 打 | ・着せ替え作戦 これが一番面白い作戦だった。 A君とB君の洋服を着せ替えるのだ。 鬼は仲間内の子だから、「今日A君は、青いセーターに、茶色の半ズボン」、という程度のことは認識している(ハズ)。そこを利用する。 「やるか?」「やろうぜ!」と、数人で相談がまとまった。 それぞれ、上着を交換し合う。ズボンは・・・やめとこ。 着替え終わるとそろそろと、身を隠しながら近づく。 その時だ、ひとりが見つかった。「○○君みっけ!」。 しめしめ、今見つかったのは△君だ。△君は鬼に顔を見られないように下を向きながら出頭していく。鬼は既に缶の頭も踏み終わり、次の獲物の方へと意識がいっている。 更に近づく。鬼は離れている。この瞬間を待っていたんだ!。 「カ〜ン!」と、△君は蹴飛ばした。捕虜は大拍手で彼を賞賛し、すばやく逃げて行く。△君も。 鬼は「人間違い」をしたのだ。 じたんだ踏んで悔しがる鬼であった。 仕掛ける時は、単独の時もあれば、複数で行うこともある。 この着せ替えをして、「一揆」を仕掛ければほとんどの場合鬼はお手上げ状態になり、鬼の子は永久に逃げ手になれない絶望感を味わう。 そのことは皆よく知っていて、何回も仕掛けることはなかった。 上記の作戦が一般的だが、その他にもこんなパターンもあった。 ・通行人なりすまし作戦 関係のない道行く人や、他の遊びに興じている子になりすまし、近づき缶を蹴飛ばすわけだ。 ・インスタント親子なりすまし作戦 たまたま近所の知ってるオジサンが通りがかった。おじさんとまるで親子のように振る舞い。手には荷物なんかも持ったりしての迫真の演技だ。 当然鬼とは目を合わしてはいけない。鬼もちらりとは見るが他の攻撃の警戒で注意力は分散される。「関係ない親子か」、と思ってくれればこっちのものだ。あとは一気にダッシュするタイミングを計ればいい。 |
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缶を倒させてなるものか!全滅させるぞ〜! | ||||||
鬼の作戦 | ||||||
序の口 | ・待つ 松 マツ・・・ひたすら待つ 缶の周りでひたすら待つ。 多少左右に動き、逃げ手の姿を見つけんとするが、自分の自信のない所までは缶のそばから離れない。 じれて、うろちょろし出した逃げ手を順次捕まえればいい。 多少のブーイングは覚悟しておこう。 |
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二つ目 | ・隠れる 鬼は自らも身を潜め、シビレを切らしてウロチョロし始める逃げ手を見つけ出す作戦だ。 規定の数を数え終えると鬼は陣地を見通せ、かつ缶を踏める距離の物陰に身を隠す。 逃げ手は、物陰から顔を半分くらい出し、鬼が今どの辺りにいるかを常にチェックしている。 鬼もこのことにも気を付けながらタイミングをみて身を隠す。両方が姿をくらまし、持久戦&神経戦に突入する訳だ。 その時だ、逃げ手のひとりが缶目掛けて猛ダッシュで飛び出してきた。身を隠していた鬼も、ダッシュする。間一発。鬼のほうが早く缶を踏む。作戦成功! この作戦も捕虜が多くなってくると難しくなる。捕虜達も自由になるために黙って囚われの身に甘んじている訳ではない。隠れている逃げ手に鬼の現在地や動向を逐次伝達するからだ。 鬼はこうした十字砲火にさらされながらも捕まえていく。全滅させるのは至難の ワザだ。だからこそ全滅させた鬼は賞賛された。 同じ子が鬼になるのは、大体3回までだった。3回続くと4回目には最初に見つかった子が鬼になった。この辺のキマリも誰が考えたか知らないが実にうまくできてる。 |
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真 打 | ・スペシャリスト 彼はまるで伊賀の影丸か、サスケのとうちゃんだ。忍者だ。 数を数え終わると、まずは「待ち伏せ」に注意を払う。 一番危ないのは背後の物陰だ。案の定二人隠れていた。 次は近場の物陰からフットワークよく、物陰から一定の距離を保ちながら確認していく。ローラー作戦だ。 強い鬼の時は逃げ手も緊張し、作戦会議も鬼から遠く離れたところで開催される。よく人んちの物置などで相談したものだ。 しかし、この鬼はそこを嗅ぎ付けてやって来る。 「エ!こんなところまで!!!」と、思った時はもう遅い。 「○、△、■、◎、☆君みっけ!」と、言ったと思うと猛ダッシュして陣地へ引き返す鬼。 見つかった逃げ手の子らは呆然と見送るしかない。 鬼も当然逃げ手の経験があるので、「隠れ家」のありかは把握している。いくつかそうしたポインとがあり、様々な遊びで使われる。 そうした隠れ家に目星を付けて襲い掛かる訳だ。 ただ、遠征している間にがら空きになった陣地の缶が蹴られるリスクはある。 逃げ手の人数を減らしてからの作戦となるのは当然だ。 こんな忍者みたいなかっこいい兄ちゃん達が一杯いたな〜。 |
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まとめ | 全く単純な遊びなんだけれど、目をギラギラさせ、飽きもせずよくやっていた。 一番先に見つからなければ鬼になることはないのだから、誰かが見つかってしまえば遊びの興味は薄れ、残りの子は「さっさと投降してしまうのでは?」、と思われるのだが、遊びの興味の主幹は、「いかにして缶を蹴るか?」、「いかにして全滅させるか?」なのだ。 鬼は鬼なりの、逃げ手は逃げ手なりの楽しみ、スリル、快感がそこに存在している。 単独で、時にチームプレーにて作戦を巡らすことがこの上なく楽しかった。 次の「悪漢探偵」は、より単純かつ面白い。近日UP予定。 |
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