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比良山 口ノ深谷遡行報告書


種別天候日程
沢登り 晴れ 2002年8月11日
1.活動報告
 目的:昔のことなんで覚えてません
 場所:滋賀県朽木
 メンバー:よっかいち(Tb)、R
2.詳細(当時、友人に送ったメールを編集)
 久し振りに進退きわまっちゃった。実際、もうダメかと思ったね。なんの話か言うと、昨日の沢登りの話なんやけどね。岩壁を10m程登って、大きめの岩を気合を込めて乗り越えた時、ハッと気付いた訳や。動けん!って。

 まあ、行ったんは比良山の口ノ深谷っちゅうとこなんやけど、その沢は初めてやけど、これまでその周りの沢は何度も行ってるし、隣りの奥ノ深谷って沢より簡単って話を聞いとったんで、ちょっとなめてたかな。それに、メンバーは僕とTbの二人だけやったんで、同行者の心配は必要なさそうやし少々むちゃしても良いかな、なんて思いもあったりしたわけや。
 出発してしばらく、そこまで幾つか小滝を直登して、登れそうで登れない中っくらいの滝に20分ほどTbがチャレンジしたけど結局高巻でさけたすぐ後やったな。落差は5mをちょっとこえる位やけど左右からつるつるの壁に挟まれた狭い廊下状の淵の奥に、まあ登るのは無理やなって感じの滝があってん。あ、一応淵に飛び込んで滝に取り付くチャレンジはしましたよ。それは、お約束やしな。一応ね。
 高巻きは、その廊下に入る手前の右壁に明らかなルートがあってん。残置ハーケンもあったしね。先ず、滝の落ち口より少し低い高さまで登ってから、バンドをトラバースする感じやったかな。とりあえず僕が前になって行ったんやけど、ちょっとルートファインディングをミスって、あまり高度を稼ぐ前にトラバースしてしもうたから、落ち口まで行けそうになくて1回戻ってTbに先行してもろてん。その時、Tbがちょっと不安定やって言うて苦労してたんで、壁を滝と逆方向に大きく巻き登ってちょっと楽しようと思ったわけや。
 そのルートは、ぱっと見は谷から10m位のとこに大きめの岩までが見えて、その向こうは下からは見えへんけど、上に木も見えるし、木を伝って滝方向にトラバースすればなんとかなりそうに見えてん。さっそく、岩壁を10m程登って、大きめの岩を気合を込めて乗り越えた時、ハッと気付いた訳や。岩の上は岩壁から土壁にかわっとる。動けん!って。土壁の何がマズイって、僕が沢登りで履いてるフェルト底の靴は岩の上では滑り難いけど、土の上ではフェルトの目が詰まってつるつるに滑んねん。そこは斜度がきつくて前進できんどころかその場に踏みとどまる事も出来んかった。
 その時僕は、わずかに土から出てるさっき乗り越えた岩の上面に右足つま先を踏ん張らせ、すべる土壁に左足を押し付け、両手を土壁にめり込ませて考えた。
 下に戻ろうにも、乗り越えた岩の下は見えへんし、辛うじて壁に取り付いてる状態では見えないホールドを探すのは無理。
 右手には2m程向こうに手頃な木が生えているけど、飛びつく為には右足つま先のわずかな踏ん張りだけで踏み切る必要がある。そんな一発勝負は宮崎駿くらいしか挑戦せんやろ。
 左手はまったく手懸りのない垂壁で問題外。
 上を見ると、谷からは見えなかったが更に15m程土壁がつづく。なんとか5mほど右上方に登れば少し岩があって、それを手懸りに右手の尾根筋へ抜けて行けそうやけど、その岩までは相変わらず斜度のきつい土壁が続いてる。いや〜、進退窮まっちゃったね。
 再び下を見て考えたけど、どう落ちたって水の中やなしに岩場に落ちる。こりゃダメかもしれん。そこまで考えて、叫んだね。
「Tb〜!た〜すけてくれ〜。身動きとれ〜ん。」

 だいぶ待ったよ、Tbが来てくれるまで。下手に動いてバランス崩さんよう注意しながら、右足ばかりに負荷をかけて限界が来んように少しずつ過重をかえて。
 でも、やっとTbが現れた場所は、土壁をこえた遥か上、木々の陰やったね。ああ、こりゃいかん。と思い最後の足懸かりの岩場をすてて、上を目指す決心をしたのは、Tbがとっても遠く小さくみえたから。
 Tbはさらに近付こうとしてくれたけど、どうやってもそれ以上は近付けんようやった。

 で、素手で土壁を少しずつ掘りステップを刻んで登ったわけや。いや〜、時間かかったよ。でも、ラッキーなことに、2段目を掘ってるとき園芸用の移植ゴテにそっくりな、手ごろな木片を掘り当ててね、まだまだ、行ける!って思ったな。お宝掘り当てるなんてまだまだ運があるよ。まあ、それでも削る力をこめすぎると、反動で身体が壁から離れるから、バランスをとりながら慎重に慎重に右手上方の岩をめざしてすすんだよ。それでついに、なんとか岩までたどり着いた。やるね、オレ。
 さて、いよいよ待望の岩に手をのばすと、
グラッ
 見事に岩がすっぽ抜けたね。メットの横をかすめ、何秒か後に谷底に岩が激突する音が響いて、見えないとこでTbが僕の名前を叫ぶのが聞こえたけど、返事する気もせんかった。
 でも、さすがにこんなことを10年もやってると、少々のことではへこたれません。すぐに次の目標を少し上の木に定めて、崩れる岩場をさけて、再び土壁に足場を削り出して登ったよ。そこまでたどり着けば、立ち木伝いに登っていけるから。
 そしていよいよ、木に手が届きそうになった時に、蜂が1匹出てきたけど僕は怖気づかずに最後の一歩を登ってん。すると、蜂は5匹くらいになったかな。あれ?
 次の瞬間には大量の蜂に襲撃されとった。気付かんうちにビッグなアイテム掘り当てたか?たぶん、目指した木の根元に巣があったんやろうね。蜂の団体さんに襲われるなんて人生初めて。しかも、手を離したら命が無いシチュエーショ・・・、いや〜、トムとジェリーばりの展開や。でも、日本のアニメーションも負けてへんよ。そこまでの慎重さをかなぐり捨てて、2m程離れたちょっと下方の別の木に、なんか叫びながら跳んだね。いや、「飛んだ」かな。ほんと、宮崎駿ばりやったわ。胸を打ったけど、なんとかしがみ付けたし、蜂もそれ以上は追いかけて来んかった。
 しかしまあ、またルートを失ったね。右手の尾根には近づけんし、もうここまで来たら、少しずつステップを刻みながら、バランスとって進むしかないね。

 いや〜、ほんま疲れた。Tbが垂らしてくれたロープにたどり着いて、確保を取って安全なとこまであがる頃には1時間ほど経っとったわ。結局、胸の打撲と、3箇所刺されただけでてんこ盛りな経験させて頂きました。これまでにも、いろいろキツイ事はあったけど、こういう波状攻撃ってはじめてかな。



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