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早崎瀬戸イルカウォッチング


種別天候日程
シーカヤック 晴れ 2001年7月9日
1.活動報告
 目的:シーカヤックでイルカウォッチング
 場所:熊本県天草下島・通詞島
 >>地図 (別ウィンドウ)
 メンバー:なむば、R
 使用艇:ルクシャW(FRP)、K-light Exp(Alファルト)
2.詳細

 どこで仕入れたネタか、なむばが言った。
「イルカが見て〜。天草に300も400もうじゃうじゃ居るらしい。」
 以前からなんばはイルカや鯨が見たいと言ってたが、そんな足の速い生物をシーカヤックで探せるはずは無いし、僕は犬よりでかいイキモンが基本的に好きや無いんで、わざわざ見に行くモンやないと思っていた。
 しかし今回はせっかく九州まで行くし、なんと言っても限られた海域に300、400となればシーカヤックでチャプチャプやってりゃイヤでも出会うだろう。
 そんなこんなで、“イルカウォッチング”ってのをする事になった。

 天草下島と島原半島に挟まれた早崎瀬戸は、東の島原湾と西の天草灘とをつなぎ、潮の流れが速く魚介類の育ちが良い。イルカ達にとって恵まれた環境なのだろう。この限られた海域にいくつかの群れがあり、かつては300頭以上も居たそうだ。しかし、ここ数年の間にイルカは激減し、情報収集に見たカヌーライフでは既に百数十頭となっていた。
 また、イルカ観光が盛んで、イルカの周りには常にドルフィンウォッチングの観光船団が付き従い、群れの移動にあわせて猛スピードで駆け回るので、シーカヤックで群れに接近するのは困難との事。
 そういった事情から、僕らは観光船の出てない早朝に、群れからはぐれて泳ぐイルカを探すことにした。探すといっても具体的にどうこうする訳ではなく、イルカを見つけるまで通詞島の東から天草下島の北側を時間の許す限り往復するだけ。そんな事で見つかるのか?イルカがどの程度沖に居るのかも分らないが、相変らず「ま、なんとかなるやろ。」って計画。この二人組みではなんとかなる事より、なんとかならん場合の方が多いのだが、、、。

早崎瀬戸を漕ぐ
 朝の5時半、通詞島の港から舟を出し、まずは早崎瀬戸を東に向かう。観光船はさすがにまだ出航していない。沖に出て、のんびり漕ぎながら周囲に目を配る。海上を蝶が飛んで行くのを眺めてぼんやりぼんやり。

 軽く漕いでいただけだったが、潮に乗ってあっという間に天草下島の影に亀島が見えてきた。ここまでイルカの気配無し。このままでは島原湾に入ってしまうので、ここで折り返し。
 潮を避けるために岸近くを西進するが、思うように進まない。同じ海域を何度も往復するとなれば、半分(半分以上?)は逆潮になるのは覚悟していたし、目的地が有るわけではないので急ぐ事は無いのだが、やっぱり気分がめいる。しかも、イルカの気配無し。
 しばらく潮に向かってぼんやり漕いでいたが、どうも進んでない。やはり目標無しに漕いでいては、ふらふらしてるしストロークにも身が入ってない。せめてなむばが前に出てくれないものかと思ったが、さっきから少し離れて並走している。むこうも同じ考えなのか時々こちらを見ているようだ。  このまま漕いでいても転流まで進まない気がして目標を決める。当面は前方岸よりに停船して作業している小船を目指した。目標の船にたどり着き、乗ってる漁師さんにイルカの居場所に心当たりは無いか聞いて見ることにした。漁師さんによると「この辺や無くて、もっと上(かみ)。」との事。お礼をいって次は通詞島を目指して漕ぎ出したが、“上”と言うのははたしてどっちなのか。何の理由もなく西を指してると受け取って聞いてたが、よく考えたら果たしてそうなのか。不安になってきたが、聞きに引き返すにはちょっと離れすぎた。潮や地形を頭の中でこねくり回し、“上”が意味するところを突き止めようとしていたその時、

 パンッ!

ネッシー風イルカ写真  後方で水面を叩く大きな音。振り向くとすぐ後ろになむばが居たが、なむばも同じく振り向いている。こいつがパドルで水面を叩いた音では無かったよだ。しばらく二人とも手を止め、耳を済まし辺りをうかがった。数十秒後、視界の端で黒い塊が水面から浮かび上がる。ブシュー。背を丸めて再び沈む。「おい、おった!」「おう、見てた。」一頭のイルカが東に向かっている様子だった。イルカの進行方向に舳先を回し、再び浮上するのを待つ。数十秒毎に息を継ぎ、また潜って行く。
イルカのしっぽ
 その姿を写真に撮ろうとしたが、右かと思うと左から、と何処から浮かんでくるか分らず、とてもじゃないが近くで撮影できない。だいぶ離れてから、かろうじてネッシーの証拠写真程度に撮影することができた。

 そうこうするうちに、かなり東に来てしまったのでイルカと別れ再び西を目指す。
 イルカを見る事ができてひとまず目標を達成すると、さらに欲が出てしっかり写真に収めたくなってきた。その為には何処から浮かんでくるかわからない一匹狼ではなく、群れのイルカを探す必要がある。もはや暴走気味の僕達は、じゃ、イルカの群れと一緒にいる観光船団を探しましょうと言う事になった。見まわすと、数キロ先の通詞島の北に船団が見える。とりあえず目標は決まった。
 しかし、双眼鏡がぶっ壊れててハッキリ見えないが、何となく漁船ぽい。近付くとやはり漁船。男の人がウェット姿で潜り、女の人が船上で待つ。どの船も夫婦で乗ってる様子。目当ての観光船ではなかったが、これはこれで興味深く見ていると、そのうちの一隻にあがってきた旦那さんが手招きをして声をかけてくれた。近寄ると「兄ちゃん、イルカ探してるんか?赤い浮標の辺りに居てるぞ。」との事。さっそく漁船団を後にして、通詞島の西に向かうが、そこにイルカの姿は無かった。その時、後方から明らかに漁船と異なる船が近寄り抜き去って行った。甲板には観光客らしい男女が。慌てて船の進行方向に目をやると、いた。イルカの群れ。しかも、水族館ばりに競う様に跳ねている。南西方向およそ2km。
 観光船はさっきの一隻だけなので、そう危険はなさそうだった。距離をちじめる為に漕ぎ出したが、すぐにまた一隻、更にもう一隻。観光船がやって来ては追いぬいて行く。三隻の船は前方でイルカを取り囲み、イルカは船の間から時々見えるだけになってしまった。更に、いくら漕いでも残り1kmほどの距離を縮められない。30分ほど漕いで
「R、無理や。諦めよう。」
 なむばがそう言い出した頃には、一時は縮まったかに見えた距離も再び開いていた。もはや内心イルカなどどうでも良く、動力船に獲物を奪われた気分で、追い付くのが目的になっていた。わずかに追い付けない速さで去って行く舟影が恨めしい。
 通詞島に引き返す途中、最後に振り向くと舟影は遥かに霞んでほとんど見えなくなっていた。


 後日の某ショップの方に聞いたところ、その方も昨年夏に天草に行ったが、その時点でイルカは十数頭まで減っていたそうだ。
 僕らの情報源は数年前のカヌーライフ。明らかに情報が古すぎた。ここ数年の間に盛んになったドルフィンウォッチングで追い回されて、イルカは他の海域に移ったらしい。
 僕らが見たイルカは、よそに移る事を拒んだ意地っ張りか、あるいは移れない訳有りのイルカだったのか。おじゃまして悪いことをしたなと、少し後ろめたさを感じる。動力船の事をえらそうに言えないな。自然との付合いは、やっぱり考えることがたくさん有る。

 住みなれた海を追い立てられて、豊穣の海を去ったイルカ達。安住の地は見つかった?




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