2.詳細
1.ナベイケへ行こう
かつてナベイケを知る人に、2万5千分の1地形図を手に洞口をたずねたが、「多分、見つからないよ。」と言われたことが有る。
実際、ナベイケの洞口は非常に分りずらい。“多賀の石灰洞”や他団体の報告書を元に幾度も現地を訪れたがなかなか到達できず、結局みかねた地元の方に杣道でおおよその位置を教えて頂き初めて洞口にたどり着けた。
それから1年後、再びナベイケへ出かける事になった。はたして洞口を見つけられるのか?ハッキリ言って、自信は有った。探検部や研究室での経験から、限られた林内で以前に行ったポイントを再び探すことはそう難しくない事を知っていたし、目を閉じれば、洞口までの地形、目印の岩や木の位置関係を思い浮かべる事が出来た。で、大阪を出発前に僕は偉そうに吹いた「まかしとけ。」
2.行動開始
多賀町に着く頃すっかり日は落ちていた。集合に遅れたヤツがいたせいか、途中でラーメンを食いに寄ったのがまずかったのか。しかし、車内の野郎どもはいたってご機嫌。「着いたらすぐ入洞しましょう。朝まで待つの面倒っス。」「もちろんテントないっス。」「先月行ったパーティーは洞口分らんかったし、これで夜間に洞口見つけたら大勝っスね。」ニヤリと僕も答える「ま〜かして!」
現地到着は20時過ぎ、さっそく着替えて出発。まずは枯れ沢に出て進むことになる。左岸には比較的ハッキリした杣道が有るはずだが、暗がりの中かすかな踏み跡を探すより、このまま進む方が速いと判断し谷筋を直登。出発から30分ほどで炭焼き小屋の跡を確認する、けっこう良いペースだ。しかし、
「ブレアウィッチプロジェクトそっくりっスね〜…」
後ろから情けない声が聞こえてくる。
「夜の森で、順番に人がいなくなるんスよね〜…いやっスね〜…」
振り向くと、Sgは声だけでなく顔まで情けなくなっている。映画を見てない僕としてはなんの話かよう解らんが、道も無い夜の森での行動中に、怪談話とは気合いの入った挑戦と受け取った。でも、僕のネタ帳には残念ながら怪談話は用意されてなかった。こんな時に森下がおったら、パーティーを壊滅に追い込むような恐ろしい幽霊ネタをぶちかましてくれただろう。やはり活動にはいろんな芸のあるメンバーがいた方が面白いな。
「だるいっスね〜、まだっスか〜、……」
ん?Sg、さっきのはただのボヤキやったんか?
3.洞口は...
なんだかんだ言いながら、森に入って2時間で洞口付近に到着した。が、あくまで“付近”。ここらの左岸の斜面に洞口があるはずだが、こう暗くちゃね。出発前に偉そうな事を言った気もするが…まっ、皆で探そう。
各自めいめいに探索する事30分。そこかしこで怒りの声が聞こえる中、やっと見覚えの有る地形に行き当たり、期待しつつ先に進むとやはり目印の木が。ついに洞口発見!
「おら〜、あったぞ〜。まかしとかんか〜い。」
こういう場面で手柄の主張を忘れちゃいけない。
4.入洞記
ついに洞口にたどり着いたが、すでに23時を回っていた。ザイル、ラダー等を設置。いよいよ入洞となり、皆テンションが高まる中、相変らずSgは情けない表情だ。しかし、いざ入洞となるとSgもHoもしっかり決める。
全員が入洞完了する頃には既に日付がかわっていた。ここまで、たびたびばてて醜態をさらしてきたSgは体力の回復をはかりつつ、Hoが洞口直下のホールと下層への落ち込みが有る小ホールをつなぐ狭洞を突破するのを待つ。
その甲斐あってSg下層への落ち込みをクリア、続いてHo、さらに僕も。
最後のクラックを下ればついに最奥に到着。ここでもSgはばてばてだ。
しかし、帰りとなるとSgは元気だ。これまでの表情が嘘の様にはつらつとして先頭を切って洞口をめざす。そして、真夜中3時ついに出洞した。
5.おおさかへ〜
帰りはあっという間に下山すると、今更ねむる気にもなれない。「このまま帰りましょう。」「温泉行きたいっス。」「甲賀忍者村に温泉が!」めいめい異様にテンションがあがる中、適当な提案が飛び交う。
結局、大阪への帰途に着いたが、30分もしない内に後部座席は爆睡。助手席の僕も強烈な睡魔に襲われ、ドライバーのなむばに会話を振りなが、うわ言をほざく始末。なむばはん、お疲れ様でした。
(追記)
Sgは当記録がフィクションであり、自分は写真うつりが悪かっただけだと主張しております。
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