貴方にこの言葉を贈ります。
楽譜は無いけれど
でも歌ってみて下さい。




  *001

 あの日僕は夢を見た
 君が帰ってきた夢
 そして僕が君を抱きしめていた
 でもそれは...夢
 繋がっているのは声だけで
 二人を繋いでいた唯一の手も
 もう離れてしまっていた

 貴方の夢を見るたび
 胸がしめつけられるように痛くなって
 僕は何度目が覚めたことだろう
 目を瞑ればさっきの夢の続きしか流れず
 僕は眠るのが怖くなった
 君に逢いたい......早く...今すぐ逢いたい
 枕に吸い込まれる僕の声は
 決して君の所には届かなかった

 あの日の夢は今もなお夜になるたび続いている
 途切れることのない夢
 それでも僕は君を求めては泣いていた
 永遠に繰り返される夢の続きを
 現実で見たかったのに......


  *002

  もし私が何処かへ行ったらどうする?

 僕の嫌いな仮定形の質問は
 貴方の電話でいつも現れる
 僕はそのたび不機嫌になっているのを
 貴方は気付いているのだろうか

  もちろん君を追いかけるよ...

 この言葉を聴いて安心するんだろうか
 でも僕は未来のことを気にしてほしくない
 『今』を大切にしてほしい
 先のこと気にしてるより
 『今』二人で笑ってる方がいいのに...

  もし僕が受験生だからって君と別れても
  それは待っててほしいっていう意味だから
  受験が終わったら必ず迎えに行くから...

 僕の嫌いな仮定形を使ったら
 貴方は安心してくれるんだろうか
 僕は貴方と別れたくない
 僕は貴方を愛してるから...
 "もし別れたら…"が一番嫌い
 別れる心配を何故今からしなくちゃいけないのか
 仮定するんだったら
 君を思いっきり抱きしめたほうが
 僕の気持ちが伝わったのに......


  *003

 唇が触れているのに
 君の心が解からなかった
 手が繋がっているのに
 心は繋がっていなかった
 深い闇の中を
 二人で歩いているようで
 相手の顔すら見れない状態で…

 君の心を知りたいから
 僕は君に想いを伝える
 何度繰り返しただろう...
 スキでスキでたまらないこの気持ち
 それでもやっぱり
 君の心を見失っていた
 僕の心は届いてるはずなのに......


  *004

 待っているのが物凄く辛い
 人生の中で最も苦しい刻
 それでも貴方は待ち続けていた
 僕の言葉と温もりを...

 淋しさの存在を確認している
 でも貴方はじっと待ってくれていた
 待つのも必要だなんて言って
 貴方はずっと待ってくれていた
 忍耐なんて僕の中にはなく
 貴方がいないといつも涙した
 貴方からの電話が鳴り響くと
 ついつい不機嫌そうにしてしまう
 本当は嬉しいんだよ......

 1週間前の貴方の言葉を
 何度も繰り返しては
 貴方を求めて涙を零す
 それじゃいけない事は知っている
 自分から電話をかければいいだけのこと
 でも僕にその能力は無かった
 君はずっと待ち続けているっていうのに......

  *005

 最近貴方を避けていた
 近くにいるだけで
 何も出来ない自分に苛立つから
 貴方の笑い声で僕の胸は潰されるから...
 貴方は僕に笑顔で
 僕は貴方には何も見せていない
 相手にしてくれなければ
 僕もこんな気持ちにはならなくて済むのに
 すれ違うたび言葉が届く

 貴方の傍は嫌だった
 何も出来ない自分が見えるから
 貴方の笑い声に自分の笑い声なんて重ねられず
 ただ響く貴方の声
 貴方は僕を見ているのに
 僕は貴方の顔すら見れない
 顔が焼かれるのが自分でも解かって
 少し苦笑いをした

 ずっと見てくれているの知ってたのに...
 けれど貴方の近くには行けなかった
 僕の涙を貴方の足元に落とすのが嫌だった
 でも...貴方の気持ちは伝わっている
 ずっと前から君の気持ち知ってるのに......

  *006

 このギブスが...
 僕の心までもを締めつけている
 君の家は歩いては行けない所で
 自転車を飛ばして逢いに行ってた
 でも...それなのに
 このギブスが外れない限り
 ...君には逢えない

 硬い硬い腕じゃ君を抱きしめる事は出来ない
 何時までも直角な腕は
 君の涙を拭く事すら出来ない
 慣れない右手での電話は
 いつになくぎこちなくて
 利き腕がギブスの中でもどかしそうに動く
 それでも...
 ギブスは外れない

 この骨が
 僕等を比喩しているんだろうか
 このギブスが
 心を比喩しているんだろうか

 硬い硬い腕は
 君の元へ伸ばす事が出来ない
 本当は君の家まで行きたいのに
 曲がった腕はハンドルすらも拒否している
 君の事この硬い腕でも良いから
 思いっきり抱きしめてあげたいのに......


  *007

 今日は曇り空
 貴方の声も
 乾いた日差しも
 僕の元には届かない
 空は汚い白色で
 太陽の光すら感じなかった
 乾いた空気と
 貴方への想いが
 湿気と共に辺りに浮かんだ

 今日は曇り空
 きっと僕の心も
 晴れてはいないはずだ
 貴方の最後の電話から
 ため息しか聞こえなくなってしまった
 僕の口からも
 ため息しか出なくなってしまった
 今日は曇り空...
 太陽も出ず...雨も降らず......

 この天気が晴れだったら
 貴方を好きだと想えるのに...
 この天気が雨だったら
 貴方のことを諦められるのに...
 天気予報では
 曇りなんて一言も言っていなかったのに......

  *008

 僕の携帯の画面に
 緑の光で着信ありを知らせてた
 君の自宅の電話番号が
 何も言わずに佇んでいた
 震えてはいたけど...
 気付いてはいたんだ...
 でも今は喋りたくないよ
 君の声で涙が出そうだよ

 毎週同じ曜日の同じ時間には
 同じ人からの同じ長さの着信音が鳴る
 僕はそれを知っているのに
 その電話に触れる事さえ出来なかった
 昨日までは待ち遠しかったのに
 君の家の電話番号が...怖くなった
 淋しさがどうしてもつきまとって
 手を伸ばそうとしても...伸びないんだ

 今日もかかってくる日...
 本当は声が聴きたい
 本当は君に話したい事がたくさんある
 でも電話の電源は切のまま
 枕の下に押し込んだ
 きっと今ごろ電話番号押してるだろうな
 君の姿が目に浮かぶ
 いつまでも喋っていたいのに...
 本当は君の声が大好きなのに......

  *009

 夜空に星が浮かんでいました
 月は静かに笑っていました
 でも僕は笑っていませんでした
 貴方を想って泣いていました
 夜空に星が滲んでいました
 月は優しく包んでくれました
 でも貴方は哀しみを隠せてはいません
 離れた心はいつ出逢えるのでしょう

 夜空の星はいつまでも輝いています
 月はいつまでも微笑んでいます
 僕は...いつまでも泣いていました
 自ら貴方を避けていたのに...
 夜空の星はその光を消しません
 月はその美しさを保っています
 貴方は...その涙を拭いきれていません
 遠い僕のことを想っているのです

 もう逢えないのです
 もう見れないのです
 貴方の微笑みが哀しすぎるから
 貴方の優しさが辛すぎるから
 ずっとずっと離れていた心は
 重ならない星のように
 いつまでもいつまでも光っていました
 輝かしい光ではなく
 掠れた光を放っていました
 そして夜は終わらないのです
 本当は貴方を愛していたのに......

  *010

 やっと貴方に報告できるようになった
 好きな人ができましたと...
 貴方はちょっと怒って顔を紅くして
 必死に誰かを知りたがる
 でもきっと知ってるよね
 だって僕の顔には大きな文字で
 貴方への愛のコトバが書いてあるんだよ
 気付いてくれたよね

 やっと僕にも好きな人ができました
 今まで付き合っていた貴方に向かって
 僕は静かに告げた
 貴方の顔は一瞬曇り
 瞳の奥に光るモノが見えた
 でもそれは貴方なんだよ
 やっと自分の気持ちに気付いたんだよ
 いつも逢えない貴方を想うこの気持ちが
 好きだっていう事に気付いたんだよ
 それなのに...貴方は哀しい顔をする
 僕の愛する人は何度も言うようだけど
 貴方なのに......
  *011

 君は黙って転がっていた
 泪を染める紅い夕日
 そして風は流れた

 でも優しい空気は
 紙風船の中をただ廻るだけ

 足元に寝転ぶ紙風船は
 影も夢も従えず
 僕はそれを拾って空に浮かべた
 紙風船は昇った あの空へ...
 美しい想い出のように...

 あれは静かにうつむいていた
 空に浮かぶ紙の風船
 そして空気は消えた

 でも流れる記憶は
 僕の心の中をただ廻るだけ

 目の前に広がる大きな空は
 雲も泪も従えず
 僕はそれを見つめて君を想った
 紙風船は昇った あの空へ...
 美しい想い出のように...

 あれは仄かに輝いていた
 紙風船から零れた泪
 そして想い出は終わった...
  *012

 貴方を想う
 貴方を求める
 貴方を感じる
 貴方を想う

 貴方を想う
 貴方を捜す
 貴方を包む
 貴方を想う

 貴方を想う
 貴方を愛する
 貴方を聴く
 貴方を想う

  *013

 家の掃除をしたら
 貴方からの手紙が出てきました
 半年以上前の貴方の文字は
 とても子供っぽく見えました
 貴方からの手紙には
 何が書いてあったのでしょう
 貴方からの手紙には
 何が込められていたのでしょう

 家の掃除をしたら
 貴方の温もりを見つけました
 半年以上前の貴方の声は
 今でもなお心に響いています
 貴方の瞳には
 何が映っていたのでしょう
 貴方の心には
 何が聴こえていたのでしょう

 貴方の手紙の中に
 貴方の温もりの中に
 貴方の瞳の奥に
 貴方の心の隅に
 僕はいたのでしょうか
 僕は見つけました
 貴方の響きに
 僕を想う気持ちが入っていたのを......

  *014

 白い光が貴方を包み
 空の彼方へ浮かべてしまった
 僕の周りの蒼い星が
 その後を追って飛んだ
 貴方は最期まで涙を見せなかった
 貴方は最期まで笑顔にならなかった
 動かない貴方の心が
 遂に空に盗られてしまった

 貴方は輝きながら
 黙って空を漂っていた
 星になろうとしているのですか
 僕の問いかけが虚しく消える
 蒼い星が体を揺すり
 貴方の手の上に破片を落とした

 手を伸ばしても
 心を覗いても
 貴方の所までは届かなかった
 夢を探しても
 心を望んでも
 貴方の心は静かだった

 星の破片が雨に濡れ
 僕の足元で光るのを止めた
 遠く空で光る貴方の姿が
 もう見えなくなってしまった......

  *015

 廊下の向こうに貴方はいた
 恥ずかしそうに俯いて
 友達だけがはしゃいでた
 窓に映る樹が紅く
 秋の訪れを感じる
 僕の顔までもが紅く
 貴方の訪れが...

 制服に包まれた貴方の姿は
 いつもと違う印象で
 その中で微笑む貴方の顔は
 いつもと違う印象で
 僕の顔は紅く赤く紅く赤く...

 廊下の向こうに貴方はいた
 恥ずかしそうに俯いて
 それでも嬉しそうにしていた
 窓の外の風は冷たく
 貴方の心は暖かく
 窓の外の空気はひんやりしてて
 貴方の手はふんわりしてて
 そして樹は紅く赤く紅く赤く
 そして僕は赤く紅く赤く紅く

 寒さで震えている貴方の肩に
 そっと僕の上着を乗せて
 逢いに来たよ...って呟いた
  *016

 闇を震わす蒼い光
 デジタルの数字が暗闇に浮かぶ
 この電話番号...
 貴方からの電話が真夜中を起こした
 戸惑う手を伸ばして
 貴方の声を探す
 アンテナ近くの小さな穴から
 貴方の薫りが漂った

 僕を求める貴方の声は
 ずっと忘れていた記憶を映し
 白い壁の静寂が
 貴方の温もりを際立たせた
 銀色に光る携帯電話は
 僕の手のひらに包まれ
 やがておとなしく眠りについた
 貴方の響きが何時までも
 電話機を揺らしていた

 空は暗く星も見えず
 窓の外は風の寝床となっていた
 貴方の住んでいる家は遥か彼方で
 そっと目の前の空気を吹いてみた
 この風...貴方の髪を撫でますように
 黙って潜んでいる黒の時間を
 見つからないように掴んで階段を降り
 そっとドアを開けて貴方を求めて駆け出した

 蒼い光が道路に散らばり
 そして僕の心も夜空に散らばった......


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