gladiolus

 夏の陽射しになってきてる
 春の空気はもうなくて
 僕にまとわりつく熱気に
 ほんの少し嫌気がさした
 花壇には
 下の方しか花開いてないグラジオラスが
 鮮やかな色で僕に何か訴えていた

 花壇の隅に球根が転がってた
 眼に飛び込む白と黄色の花びらは
 君と僕のよう
 僕がまだ花を開いてないのに
 君はすでに派手な花を身につけてた
 夏限りのグラジオラスの青春
 僕もはやく君より綺麗な花を咲かせよう...

  anemone

 天使が忘れた羽根は
 風をまとって地面に落ちていた
 天使の奇跡がほしくて
 僕は摘んで君に贈る

 こんなにも好きなのに
 君は天使に気付かなかった
 僕の想いを風に乗せて
 君に贈ったのに...

 貴方を愛しています...
 その言葉を出せなくて
 僕はアネモネを君に届けたのに
 君はただそれを花瓶に入れただけ...
 風の羽根は僕には何もくれなかった

 花束包んだ紙を握り君の家を出る
 花屋のアネモネが笑ってる気がして
 今まで堪えてた涙が溢れ出てきた


  saffraan

 もう貴方がいなくなって半年になる
 一緒に植えた薄紫色のサフランは
 もう枯れかけて僕のよう......
 秋の風はあの花を揺らし
 僕のところにまで紫の匂いは届いた
 今はオオイヌノフグリが紫だけど
 サフランの紫ははかなく切なくて
 僕の心にそっと咲いてる

 貴方は今何処に...
 貴方の根は何処の地面に...
 二人で分けたサフランを
 まだ貴方は育ててるのかな
 僕のはもちろんいつも太陽が見える場所

 あと半年......
 もう一度花が咲いたら君に言いたいよ
 薄紫の花束持って
 君に好きって言い直すよ......

  gerbera

 最近よく死を求める
 君との橋の崩壊が
 僕の胸にナイフをたてる
 生きることの意味が解からなくなって
 もう疲れがたまりすぎた

 差出人が分からない絵葉書きに
 ガーベラの挿し絵があった
 ただ赤い花をつけてるだけの花なのに
 死を考えたことを後悔するきっかけになった
 生きることに意味なんて解からなくていい
 そんなの生きていたらきっと見つかる
 今は一生懸命生きてればいい

 僕の部屋にはガーベラがある
 まだあの花は咲いてないけど
 たんぽぽみたいな葉だけでも
 生きてればいつかは花を見れる
 だから死は必要ない

  39ra

 樹にはもう緑色の花しか咲いていない
 鮮やかだった薄桃色の花は
 季節の変化に耐えきれなかった
 貴方との別れからもう1ヶ月が過ぎた
 あの頃はまだ蕾だったのに
 もうこんなに樹は変わってしまったんだね

 僕は今でも貴方の事を想ってる
 桜の花が開いたときから
 僕は毎日この場所に通っている
 あの幹と一緒に貴方を待っていた僕の姿は
 風が吹くたび現れた
 地面で潰れていた花びらが風で空を舞い
 懐かしさと共に貴方の匂いが鼻に届く

 初めてこの樹を見たとき
 それは僕らにとっても初めての日だった
 君の髪の匂いをすごく感じ
 まだそんなに太くなかった幹の前で
 僕らはそっとキスをした
  最後の別れのキスもここだった
  あのときみたいな桜の味じゃなくて
  淋しさしか滲み出てなかった

  百日草

 庭に植えてあった百日草が枯れた
 もう1年が経ってしまったんだ
 必死で図鑑から探して
 おまじないみたいに庭に植えたのに…
 夏が過ぎ 秋が過ぎ
 地面は百日草の花びらだらけだった
 これでもう一度君に逢えたら...
 そんな願いも届かないまま
 百日草は自分の役目を終え
 無責任に枯れてしまった

 君を百日待っても
 君は戻ってこなかった
 だったら千日待てばいいのかな
 百日草は枯れたけど
 もう一度百日草を植えればいい
 僕の気持ちが君に届くまで...

 今年も夏が来る
 百日草の花を君と見れるようになるまで
 いったいいくつ枯らしてしまっただろう
 でもそれももう終わりだね…
 今年で百日草は植えないよ......



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