桜風
甘い匂いがした
ふんわり包まれてしまいそうな
柔らかい...優しい風だった
手に持っていたハンカチが
空に舞い上がって
やがて花びらとなった
桜咲くあの丘から
風は静かに吹いていた
桃色の風にのって
春の便りが僕に届いた
暖かい感じがした
うとうと眠くなってしまいそうな
心地好い...優しい風だった
鞄にしまっていた携帯電話が
急に鳴り出して
やがて風は消えてしまった
桜咲くあの丘へ
僕は何かを求めに進む
まだ起きないつぼみを起こし
春の便りは街に広がる
桜色の風にのって
春は街いっぱいに流れた
甘い匂いと優しい暖気に
桜咲くあの丘へ誰もが走った
音風
何気ない空気の移動に
僕の耳は何かを感じた
いつもと同じ一日で
いつもと同じ風が吹いていると思っていた
でも今日の風は
何か奏でているように聴こえた
僕の傍を通り抜けるとき
風は息を潜める
僕に気配を感じ取らせないために...
でも僕の耳には音が聴こえる
空気を撫でるような音なだけだけど
でも静かで落ち着く
音を鳴らす風は
僕の周りにいつもいる
かすかに空気が動き
僕は風に気付く
僕は風の音に気付く......
月風
暗闇の空高く
満月が僕を覗いてた
いつもよりなんだか大きくて
月が偉大に感じた
月から輝く風が流れ
星の光が飛ばされてきた
冷たい静かな風は
夜の街を流れた
薄暗い街灯の下
僕は風を待っていた
満月から流れ出た風は
街灯の下を無視して流れ
僕の目の前を通り過ぎていった
まだ星の光がぼんやり残り
そのまま風は空へと帰る
僕は涼しくなった街を見渡す
月風の残した輝きと星のかけらの瞬きが
まだソコに在るような...そんな感じがした
時風
時計台の下でずっと待っていた
そんなときの時間はやけに遅く感じて
たった数分なのに何年も待たされたような気がした
何度も空を見上げて時計台の針を見る
さっきからほんの数センチしか動いてないっていうのに
また上を見てしまう
風を感じない...
時の流れをせかす風は
時計台の下には吹いてなかった
もっとはやく時間を流してよ
僕は君の姿を探した
君が来たのは風が吹きはじめた頃だった
君との時間はとてもはやく流れ
僕は風を恨んだ
風は時間の流れを急がせ
僕らの時間は減っていった
もっと君といたかった
風はそれでも止もうとはしない
時計台の鐘がうるさく響き
君はそのまま風と共に帰っていった
君がいなくなったこの場所は
風がいなくなったこの場所は
時間が止まってしまったようだった
君を求める声も虚しくこだまするだけで
僕と時計台の針はしばらく動かなかった