Stevie Nicks
('01/8/12@Key Arena - Seattle, WA, USA)
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5月に発表した最新作、Trouble in Shangri-laのためにアメリカをツアーしているStevie Nicksのコンサートをシアトルで見てきました。これよりまえ、8/8にもデンバー近郊で見たのですが、シアトル公演の方が断然良かったので、こちらのほうについて書きます。
今回のツアーは久々の新作の発表を受けてのものだけに新作からの曲も結構フィーチャ−されており、いままでアメリカで2回Stevieを見たことがあるとはいえ、それらとは雰囲気やStevieの意気込みも異なった印象を受けました。また、私が見に行った2回のコンサートでは残念ながらソロコンサートの日程とぶつかっているために参加していませんでしたが、Sheryl Crowがたびたびツアーメンバーとして参加しているのが大きな特徴の一つで、ツアープログラムにはしっかりSheryl Crowの紹介ページもありました。
ステージセットはアルバムジャケットを再現したような窓枠とそこから覗く青空と海をペイントしたスクリーン(ライティングで雰囲気がいろいろ変わり、Dreamsでは稲妻が光って雨が降る:-)を中央に、両脇にはその前に金色の人魚のような像が立っている門のようなモニュメント、そしてステージを両脇と上から取り囲むように赤い花が飾られているという、結構装飾を凝らしたものとなっていました。
会場はシアトルのランドマークであるスペース・ニードルがあるシアトル・センター内(ここには他にExperience Music Projectもある)で、バスケット・ボールのプロチームのホームとなっているキー・アリーナで、去年9月のStevie Nicks & Friendsを見た時と同様にやはりスタンド席の高さが低く、コンサート会場として見やすい構造となっていました。私の席は今回中央やや左、前から8列目と結構よい席で、前の方には背の高い人たちがたくさんいましたがかなり見やすかったです。自分の席についたころにはデンバーの時とは違って前座であるBob Schneiderが演奏を初めてまもないころで45分程の演奏を聞きましたが、顔はBrian Kennedyにやや似てJackson Browne風(ただし全編エレクトリックでの演奏)の歌は結構評判は良かったようで、バンドの演奏も達者でしたが、私には曲と声に個性がそれほど感じられなくて物足りませんでした。
Bob Schneiderの演奏後、'98のEnchantedツアーでStevieの前座を務めたBoz Scaggsの曲がずっと流れていましたが、ライトが落ちてDestiny's ChildのBootylicios(StevieのEdge of Seventeenをサンプリングしている)がかかったのに続いてアルバムタイトル曲のコーラス部が流され、バンドメンバーに続いてStevieが登場、コンサートが始まりました。セットリストは以下の通りです:
1. Stop Dragging My Heart Around
2. Enchanted
3. Dreams
4. Gold Dust Woman
5. Everyday
6. Sorcerer
7. Rhiannon
8. Stand Back
9. Planets of the Universe
10. Too Far from Texas
11. Fall from Grace
12. Bombay Sapphires
13. Edge of Seventeen
(Encore)
14. I Need to Know
15. Has Anyone Ever Written Anything for You?
1曲目はTom PettyとのデュエットでヒットしたStop Dragging My Heart Aroundで、Tom Pettyの代わりはリードギターで今回のツアーのミュージカル・ディレクターであるWaddy Wachtelが、いくぶんかすれたその太い声で立派にその役割を務めていました。Waddyはこの後もたびたびコーラスに参加しており、そのギタープレイとともに大活躍していました。今回のバンドは9人編成で、ベースにこの6年間Stevieを作曲面などでサポートしてきたというAl Ortizという人が加わっていました。Stevieの衣装は光り物のついた黒のドレスで、途中Gold Dust Womanのときにはベージュのショールを、またStand Backの時には黒のショールを被っていました。
今回の観客層(特に私の周りのエリア)はファン度がデンバーの時より高い人たちが多く、コンサート中に入退場をする人も少なく、反応もStevieが姿をあらわした時から大変良くて、曲が終わる毎の歓声もとても大きかったです。やっぱりStevieのコンサートはこうでないと。これに気をよくしたのか、デンバーではややマイルドな歌唱(これはこれでリラックスしていて良かったけど)だったStevieも、この日はGold Dust Womanあたりからは観客に引っ張られるように迫力のある歌を聞かせてくれました。
どの曲も良かったですが、なかでも特に素晴らしかったのは去年のStevie Nicks & Friendsで見た時もドラム&パーカッションの共演で始まるそのパーカッシブなアレンジで耳を引き付けられたStand Back、観客の受けが最も良いGold Dust Woman、ピアノソロに引き続いて歌ったRhiannon、そして最新作ではSheryl Crowが共演していたSorcerer, Fall from Graceといったところで、これらの曲でのStevieは大きな動きこそないものの両腕を揺らしたり、顔の上に掲げたりしながらも、Fleetwood Mac再結成時のように力むこと無く、しかしこれまで見たどのコンサートよりもロック・ボーカリストとしての側面を見せてくれる力強い歌声を聞かせてくれました。一時期トレードマークであったくるくると回る動きはGold Dust Womanで少し見せただけでしたが、やはりこの時の客からの歓声も凄かったです。Sorcerer, Planets of the Universe, Too Far From Texasでは演奏前に曲紹介を行っていました。Sorcererは昔StevieがLindsey Buckinghamとハリウッドに滞在中、恐い思いをしたことを元に、またPlanets of the UniverseはもともとはRumoursの制作中にLindseyと破局した後に書いたけど、いまではまたいい関係になれたので歌詞を付け足した、といったようなことを言ってました(国内盤の解説にもありましたね)。アルバムで Sheryl CrowとデュエットしているFall from Graceは、Waddy Wachtelのギターソロもあってアルバムで聞かれるよりさらに迫力のある演奏で、SherylほどのインパクトこそないもののMindy Steinが頑張って相手を務めていました。アルバムではDixie ChicksのNatalie MainesとデュエットしているToo Far From TexasではSharon Celaniが相手を務めており、ゲストの多かったアルバムの曲をライブで演奏するにあたって、バンドメンバーが分担することでカバーしていました。
本編の最後に演奏されたEdge of Seventeenはドラム&パーカッションの競演で始まり、しばらくしてWaddy Wachtelが登場、ちらっとイントロのフレーズを弾いては別のフレーズを弾いて観客をさんざん焦らせた後にStevieが登場したこともあって、もの凄い盛り上がりようでした。その後のアンコールではStevie Nicks & Friendsでも歌われたTom Pettyのカバー曲であるI Need to KnowのあとStevieが一旦ステージ袖に引っ込み、着替えて登場。必ず最後に歌われるHas Anyone Ever Written Anything for You?が演奏されました。黒のドレスの上に金色、ベージュのショールをまとい、頭には羽飾りの着いた黒の帽子を被った貴婦人的な衣装で、この日最も穏やかな、しかし心に染み入ってくる素晴らしい歌をStevieは聞かせてくれました。このときばかりはこれまで熱狂的な反応をみせていた観客も静かにStevieの歌に聞き入り、演奏後には一段と大きな歓声でStevieをたたえていました。
時間的には1時間30分強とやや短く、アルバムタイトル曲が聞けなかったのがちょっと残念でしたが、いままで見たなかで最も充実したStevieの姿を見ることが出来たのはやはり貴重な体験でした。
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