セリア: "やさしい光につつまれて"


 この秋は北欧だそうで。某輸入盤屋さんでそう騒いでいた。思わずザ・スプートニクスとかザ・サウンズとかの哀愁エレキ・インストがまたハヤるのかと喜んだのだけど。そんなわきゃないよね。なんでも北欧方面の透明感溢れるポップ・ミュージックが新たなトレンドなのだとか。そのトレンドをになうひとりがこの人、ノルウェーの大形新人、23歳のセリア嬢らしい。

 パット・メセニーとリチャード・ナイルズの後押しを受けてのデビューだけに、音のほうはちょっとブラジル的なニュアンスが混じったフュージョン色が基調。抜けのいいエコーを駆使しつつ、すっきり隙間を活かした音像をバックに、リッキー・リー・ジョーンズのようだったり、スザンヌ・ヴェガのようだったり、ミニー・リパートンのようだったりするセリアの澄み切ったヴォーカルが舞う。かなりのヴォーカル・テクニックの持ち主のようだが、それをひけらかさないアプローチに好感が持てる。引くところは引くバッキング・ワークも大人してる。全曲、本人がらみのオリジナル。なかなかいいメロディも持ってるようだし。一服の清涼剤としての役割を見事に果たしてくれる一枚だ。バケる可能性もあるな、これは。

 

評者:萩原健太

from Music Magazine '90/10号