Silje
(アルバム, '91)
東芝EMI, TOCP-6912 (日本盤)
東芝EMI, TOCP-7530 (日本盤再発)


曲目Cover of Silje
1. Collage
2. What Is Bobby Doin'?
3. Won't Give Up
4. Holding Back Inside
5. Where You Are
6. We'll Be Friends Tomorrow
7. I've Loved You
8. Walking Behind You
9. Girl on Your Doorstep
10. I Need Your Love
11. I'm Your Girl
12. Kyoto Wind
13. Quiet Place

クレジット
(ソングライティング)
 2, 4, 5, 7, 8, 10〜13. Silje and Richard Niles
 3. Silje/Graham Lyle/Richard Niles
 6, 9. Silje
(プロデュース)
 Richard Niles

解説
9月にリリースされたシングル、Kyoto Windに続いて'91年11月末にリリースされた、確かな成長を感じさせる傑作セカンドアルバム。全体的には静かな印象だった前作から一転してアップテンポで元気な曲が大幅に増え、曲にメリハリがつき、バラエティも大きく広がり、彼女の魅力が満喫できる出来になっている。'60sのモータウン系サウンドやCarpentersなどから連想されるイメージと共通する雰囲気を持つ王道ポップ路線で、どの曲も4分前後とコンパクトにまとめられている。デビュー作よりもバンドとしての音作りを意識しつつもしっかり彼女の声を活かす聞かせ方をしているところにプロデューサーRichard Niles、そしてSiljeの見識を見ることができる。フェードアウトが少し雑なところが唯一残念な点か。来日公演に同行したMichael Ruffがピアノやオルガン(9ではバック・ボーカルも)で全面的に参加している。

アルバム収録曲の断片をつなぎ合わせた(コラージュした)1に続くWhat is Bobby Doin'?は文句なしに楽しい曲で、このアルバムの持つ雰囲気を予告している。ファーストの曲と較べてピアノ、パーカッション、ホーンなどが加わって音数が大幅に増えているが、きらびやかなメロディに彼女の声がマッチして心地よい。Tina Turnerの復活を飾った大ヒット曲、What's Love Got to Do With It(愛の魔力)などを書いたソングライター、Graham LyleにSiljeがテープを送って詩をつけてもらったWon't Give UpやHolding Back Insideも陽気な曲調で聞いていて楽しい。Where You AreではA-haのリードボーカル、Morten Harketとデュエットしているが、やはりテープをMortenに送りつけたところノルウェーでレコーディング中のMortenがロンドンに飛んできて共演してくれたらしい。Pat Metheny, Graham Lyleの話もそうだが、これらは彼女の音楽的才能を証明する逸話と言える。Michael Ruffとデュエットした来日公演とは大幅にアレンジが変わっていて、魅力的なポップス・ナンバーに仕上がっている。Mortenの歌声もこの頃のA-haでの曲よりも活き活きとしていてずっと魅力的に響く。

We'll Be Friends Tomorrowはフォーク・バイオリン奏法によるギターの音色が印象的なナンバーで、歌詞も曲もドリーミーでこのアルバムのベストトラックと言える出来。自身のルーツを意識したシャッフル調のI'm Your Girlは本人が楽しんで歌っている姿が想像でき、歌詞の内容も楽しい。オーケストラを迎えた荘厳なI've Loved Youやロック調のI Need Your Loveといったところも無視できない。そしてSiljeが逆にテープを送られてデュエットすることを決めたMark CornellとのQuiet Placeは重厚な本格的バラードで新境地を開いたと言えるナンバー。'90s屈指のバラードと断言出来るこの曲が入っているというだけでもこのアルバムはやはり重要な作品だと言える。しかし実際にはWhere You AreやWe'll Be Friends Tomorrow, Quiet Placeなどシングル向きの好ナンバーがあるにも関わらず、ファーストシングルとして地味なI've Loved Youがカットされてラジオ受けせず、この'90sを代表する女性ボーカル作の一つが話題を集めることなく忘れられてしまったのは非常に残念。特にWhere You Are がシングルカットされていればこのアルバムの売れ行きも大きく変わったことだろう。

日本盤には本人による曲解説がついていた。ジャケットデザイン(特に裏ジャケ)は本人によるものでやはり魅力的。

デビュー盤同様値段を下げて再発されたが現在ではやはり廃盤で、中古でもあまり見かけない。再発を切に望む。

 

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