セリア: "Port of Call"
”独特のコケティッシュな魅力の歌声で、スタンダードに挑んだ新作”

 ジャズ・シンガーに限らず、声は、何よりも歌手の”宝”だが、ノルウェーのセリアにおいては、これはもう”宝”以上のものではないかと思う。少女のような大人の声、コケティッシュなその魅力は、ブロッサム・ディアリーをほうふつとさせると言われるが、おばぁさんになっても少女雑誌を抱えているようなディアリーの”奇怪さ”はなく、むしろ、それは幼いポップ歌手がどこかで発散する”切なさ”ではないかと思ったりする。昔のメラニーに近いかもしれない。パット・メセニーのお気に入りというが、その感受性の透明感に魅かれるのではないか。この最新の第6作は、スタンダードが中心だが、これは彼女のルーツである。いくぶん音程やフレーズがふらつくが、しかし、彼女の声の魅力はそれを補って余りある。パットに劣らずぼくも大好きです。

評者:青木和富

from Adlib '01/3号